2話
「知らなかった、学費の免除ってそんなに珍しいものだったんですね…」
怖いくらいに周りの目を集めてしまったあの場を案内してくれていた先輩は爆発物による殺人示唆で場を制されました。
先輩はその場にいる者の注目が自身に集まると、
「この子の話は本当だよぅ。けれどそれはあくまで入学費と今年度の学費のみ、あとは他と何も変わらないよぅ」
案内の続きをするからついてこいよぅと先輩はそのまま先へと進み始めました。
その背中についてくるか確認する素振りもなく、ついていかなければ否応なく置いてけぼりになってしまうので私たちは黙ってついていくほかありませんでした。
一通り学び舎の施設の説明を終わると、あとは各自自由にとの一言で解散となったのです。
すわ質問攻めになるかと私は身を縮こませましたがそれは杞憂でした。
「……余計なお世話かもしんねぇけどよぅ。この学び舎での貴重な時間、無駄にするも玉とするもおめぇら次第だかんなぁ」
先輩が最後に残したその言葉に、みなさん背筋を冷やしたご様子でした。私?私はもちろん背筋を冷やされるどころか失神すること思うほど怖かったです。
皆様は慌ただしくどこかへと消えていきます。学び舎内の知己の方を頼るだとか、自身の研究をするための申請だとか明確な目的を携えているご様子。
まずは何をすればと途方に暮れかけたところ、アユ様のご厚意で相談に乗っていただけることになりました。
右も左も分からない私にとって、またもやアユ様が神様のみ使いか何かに思えてしまうのでした。
「そりゃそうでやんすよ、前代未聞でやすからね。すでに完成した自身の研究に箔を付ける、そのためだけにわざわざ学び舎に来た人もいたそうでやんすが、その人がいくらその自身の研究成果の有用性を説明したところで扱いは変わらなかったそうでやす」
とりあえず昼食でもと食堂へ向かって学内の中庭を移動しているところです。
思わずため息交じりにでた言葉をアユ様が丁寧に説明してくれます。
私がお父さんに教えられた人を癒す技術は誇れるもので、何より人の生命を助けられる素晴らしいものです。それに疑いがあるわけではありません、ありませんがアユ様の話を聞いているとさすがに恐縮してしまうのです。
「私の元に届いた手紙には学長による特例とありました。私がそんな待遇を受けてしまっていいのでしょうか」
「う~ん、良いんでないでやすか。あっしはローラ殿がどれほどのものを学び舎に持ち込んだのか知らないでやんすが、何か学費を免除してでも迎い入れる価値があったのでやしょう。後ろ盾もなくただ免除というのなら薄気味悪いでやんすが学長殿のお墨付きというのであれば確かでしょう」
アユ様は肯定してくださりますが、とはいえ人の少ない田舎出の私がこんな大都会の大きな学舎様に好待遇で迎えられるような者ではないと思うのです。
だからこそ私はこの特例を受けられた方が他にいると勘違いしていたのですから。
「この学び舎に間違いはないわ」