第7話 ユニコーンを倒そう
私は家須桐子。勇予村の勇者です。
私は今、人生で初めて松山に来ました。
『まもなく松山です。予讃線、伊予鉄道はお乗り換えです』
私たち勇者一行は新幹線を降りた後、駅の売店で駅弁を購入しました。
円香さん曰く、四国カルストは飲食店がなさそうだから持ち込んだほうが安心だそうです。
駅を出た後はレンタカーを借りて、武蔵さんの運転で四国カルストへ向かいました。
四国カルストは木が全然生えていない原っぱに、ところどころ岩がゴツゴツと出ているような場所で、とても綺麗でした。
ところどころにユニコーンさんが見えて、幻想的です。
駐車場に着くと、私1人だけ車を降りました。
まず、近くにいたユニコーンさんに話しかけました。
「はじめまして、私、勇予村の勇者の家須桐子っていいます」
「デュフフ……チミ……可愛いねぇ……ボキは来島勉太郎って言うんだ……」
ユニコーンさんは意外にもボソボソと喋ります。
「魔物なのに普通の日本人みたいな名前があるんですね」
「名前には個体の識別をする役割があるから……日本に生まれたユニコーンは日本の名前を名乗るんだ……
ペットとかになると飼い主のエゴで適当な名前をつけられるけどね……本当にペットは可哀想だよ……大和魂のかけらもないキラキラネームをつけられて」
「私、喋れる野生の魔物は初めて会ったので知らなかったです」
「初めて……そうかぁ……ボキがチミの初めてかぁ……
デュフフ……嬉しい……
ボキたちユニコーンはねぇ……哺乳類を見ると頭の上に数字が表示されるんだぁ……
チミはその数字が0。美しいねぇ……」
「0っていい事なんですか?」
「ボキたちの世界では0こそが美しいんだぁ……清らかな乙女の証なんだぁ……それでね……」
来島さんが喋っている間に、私は少しづつ来島さんから遠ざかります。
そこで小声で、呪文を唱えます。
「大いなるマナよ、氷の刃となりて、仇なす者を切り刻め……アイスカッター!」
呪文を唱えると、来島さんのツノの上にカッターの芯のような形の氷の刃が出現しました。これは私の得意魔法、アイスカッターです。
これで来島さんのツノを切り落とそうと思いました。
力を抜いて、氷の刃を下に落とします。
ツノめがけて落としたは言いものの、コツンと言って弾かれてしまいました。どうしよう!
「チミ……今ボキを魔法で攻撃した……?」
来島さんの声が急に低くなりました。
私は怯まず、ここへ来た目的をしっかりと言うことにしました。
「そ……そうです!私がここへ来たのはあなたのツノが目当てです!」
「でもチミの魔法じゃボキの硬いツノは斬れなかったねぇ……
今度はボキがチミを攻撃する番だよ……
聖なる力よ、我が角に集え……シャイニングホーン!」
来島さんのツノが光をまとい、大きくなりました。
そして、私に向かって思いっきり突進してきました。
私は間一髪かわします。
来島さんが戦闘モードになってしまったので、私は仲間を呼ぶことにしました。
駐車場に停めてある車の方に、私は大きく手を振りました。
事前に打ち合わせしておいた、加勢の合図です。
すると、車からみんなが出てきました。
「桐子!今助けるぜ!」
宗くんがお父さんに貰った大手丸で、ユニコーンに斬りかかりました。
しかし、来島さんはするっとかわします。
「こいつ、素早いな!」
「なら私達の速さを上げましょう。
時の流れよ、我らの時と、仇なす者の時、この2つを引き離したまえ……タイムスピードチェンジ!」
円香さんが呪文を唱えると、来島さんの動きが遅くなりました。
これで来島さんの動きに余裕でついていけるようになりました!
「うりゃーーー!」
武蔵さんが大剣で来島さんの胴体を斬りました!
「ハッ!」
動けなくなった来島さんのツノを、宗くんが大手丸で一刀両断しました!
そして私はそのツノを拾い上げました。
「ユニコーンのツノ、入手完了!」
「やったな桐子!」
それから私達は車に戻って、醤油めしという駅弁を食べました。
戦った後のご飯はとても美味しかったです。




