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第5話 全裸青年男性

月曜日。朝5時25分。俺は村役場前に着いた。

役場前には円香だけがいた。

「あら、あなたも来るの?」

「ああ。桐子を守るためについていく」

「ついていくのは勝手だけど、足は引っ張らないようにしてほしいわね」


しばらく経つと、家須家の車がやってきた。

桐子が来たようだ。


「おはよう」


桐子が後部座席から降りてきて、朝の挨拶をした。

今日の桐子は動きやすい旅の服装という感じで、パーカーにミニスカートというスタイルで、綺麗な脚が映える。

ベージュの長い髪はいつの間にかお尻を通り越して太ももに届くほど長くなっていた。

こんな綺麗な彼女がドラゴンのオスになって非童貞と化すなんて、考えたくなかった。


「主役が来たわね。さて、これでメンバーは揃ったかしら?」

「旅のメンバーはもう1人いるよ。出てきて」


桐子が呼びかけると、車から筋肉ムキムキのデカい男が出てきた。

しかも、その男は全裸だった。

その姿に俺は見覚えがあった。


「武蔵!」

「旅の護衛はオレに任せな!」


彼は柴田武蔵。村で一番の剣豪で、子供の頃はよく一緒に遊んでた。

武蔵が高校卒業後は名古屋の魔物討伐会社に就職したからあんまり会えなかったけど、この旅についてきてくれるならとても頼もしい。

でも、この全裸で公共交通機関に乗れるのか?


「武蔵、あなたまだ全裸やってたの?もう社会人ですしいい加減服を着なさい!」

円香が武蔵に注意をする。

「いいだろー?別に。オレチンコでかいしさ!旅で出会う人みんなメロメロになってくれるはずだぜ」

「なりません。我々の品性が下がるだけよ。全裸と言えど、鞄の中に服はあるんでしょう?今すぐそれを着てほしいわ」

「仕方ねーなー」


武蔵は背負っていたリュックサックから、青と黄色のストライプのTシャツと、赤色のブリーフと、茶色の短パンを取り出して、着た。

しかしその服は武蔵の体格にしては小さく、武蔵が着るとパツパツになってしまい、結局肩の周りと胸と股間しか隠せなかった。

「ううーやっぱ服は着てて心地が悪いぜ」

「それはあなたの着ている服が子供服だからでしょう。社会人になったのに大人用の服も買えないのかしら?」

「服なんてオレには必要ねーから買ってないぜ。金のムダだろ」

「はあ……」


そんな会話をした後、みんなで家須家の車に乗り込んだ。

体のでかい武蔵は助手席に乗って、俺、桐子、円香は後部座席に座った。

後部座席に3人座ると結構窮屈で、桐子の体が俺に触れてドキドキする。


「冒険の旅ってまずはどこに行くんだ?」

俺の疑問に、円香が答える。

「今回の旅の最初の目的地は四国カルスト。そこでユニコーンを倒してユニコーンの角を手に入れるわ。

そのためにまずは新幹線で松山に向かうわ。さっそく車で岐阜羽島駅に向かいましょう」



見慣れた景色の村を通り過ぎ、山を越え、街に出て、しばらく走ると、岐阜羽島駅に到着した。

一行はまず自動券売機に行く。


「まずは券売機で松山までの切符を買うわよ。

ちなみにこの旅の資金源はどこから出てるの?」

円香の質問に、桐子が答える。

「村議会の神林戦兵衛(かんばやしせんべえ)議員がお金出してくれました」

桐子が鞄から分厚い銀行封筒を取り出した。庶民には手が届かないであろう分厚さがある。

「流石村一番の金持ち一家。冒険の旅という文化にお金を出してくれるのは有難いわね」


円香が自動券売機をポチポチポチポチしたら、4人分の切符が発券された。

皆はそれを受け取ると、テンションが上がった。

「修学旅行以外で新幹線乗るの初めてだ!」

「私も!」

「オレも!」

「まあ旅行って金のある人の趣味だもの。経験がないのは仕方ないわ。フリーターなのに旅行を繰り返している私が特殊なだけね」

武蔵が円香に質問をする。

「ところでさー、松山ってどこにあるんだ?」

「武蔵、あなたとっくに義務教育を終えてるわよね?」

「学校の勉強なんて卒業したら忘れるのが普通だぜ」

「はぁ……松山は愛媛県の県庁所在地よ。愛媛県は四国の左上ね。

目的地の四国カルストは日本三大カルストの一つで、場所は愛媛県と高知県の県境にあるわ。

四国カルストには沢山のユニコーンが生息していて、ユニコーンの角を手に入れるためにはここが一番いいと思ったの」

「へえ〜」


「さて、そろそろ新幹線の来る時間ね」


円香のその言葉を聞いて、桐子は母の顔を見つめた。

「じゃあお母さん、行ってきます」

「無理しないでね。困ったら仲間のみんなを頼るのよ」

「うん!」


俺達は自動改札機に切符を通し、ホームへ向かった。

ホームに出ると、爆速で白い東海道新幹線が通過していった。

「流石新幹線!速いぜ」

「今からあれに乗ると思うとワクワクするね!」

『まもなく、ひかり530号 博多行きが参ります』


アナウンスがなった後、しばらくしたら新幹線が到着した。

ホームドアが開き、降りる客を待ってから乗車し、前後セットで空いてる自由席を探して、椅子を回転させて座った。

俺は通路側の席。隣の窓側の席は桐子。

桐子は楽しそうに窓の外を眺めている。


こうして、俺達の旅が始まった。

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