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ケンカ週間

作者: 朝衣海美

 ―なんでいつもメールくれないの?

 ―お前はいつもメールしかしてこないよな

 ―メールしちゃいけないの?

 ―そうじゃないけどさ・・・

 ―私のこと好きじゃないの?

 ―お前は俺の気持ちをメールではかるのかよ?


 3日前、ケンカした。メールで。

 トモコに相談したら、くだらないって言われた。すぐ仲直りするでしょっていわれた。いつもなら、その日のうちに仲直りする。だけど、今回は違う。私もサトルもメールも電話も、会おうとさえしないでいる。

 めちゃくちゃ寂しい。

 本音はそうだけど、でも、だって、いつも私がメールして、それで始まる。たまには、待ってみたい。そんな意地があって、ついついメールも電話もできないでいる。

 「はやく連絡してよぉ・・・」

 授業中でもバイト中でも、お風呂に入っていても携帯電話が気になる。

 メールはいつも私から。電話は付き合ってからはめったにしない。デートに遅れるときとか、いきなり会えるようになったときとか、そういうときしか電話しない。私がメールしなければ、1日2日連絡がないのは当たり前。会おうって言うのも私。

 そういうの、なんか違う気がして・・・。サトルは私に会いたくないのかなって思うようになってからは、会っていても、切ない。

 ケンカして、そのままの今の状態、サトルは辛くないのかな・・・。寂しくないのかな・・・。私はこんなに寂しいのに、どうしてサトルは平気なのかな・・・。

 男って、そんなもんだよ。トモコは頼りになる友達。サトルと何かあると必ず相談する友達。私から見るとトモコは、彼氏とは割りとあっさりしていて、でも、お互いに信頼しあっていて、うらやましくも思う。大人な関係。

 私はといえば、子供じみた独占欲、嫉妬心、それから、わがまま、欲張り、気まぐれ・・・。サトルはこんな私のどこが好きなんだろう・・・自分でさえそう思う。

 このままバイバイなのかな・・・って考えるといてもたってもいられないけど、今回だけは意地っ張りな私。どうしても、連絡したくない。私からは、したくない。

 「バカ・・・」

 4日目、携帯をにらみつけて、思い切って家に置いたまま、学校に行った。だって、もっていたら、すぐにでもメールしてしまいそう・・・。

 くだらない意地。

 もうだめなのかな・・・。こんなことで終わっちゃうのかな・・・。その程度の付き合いなのかな・・・。サトルはもう私なんか好きじゃなくなっちゃったのかな・・・。

 授業なんか聞いてられない。バイトはサボった。だって、携帯電話が気になってなんにも手につかない。

 家に帰ってすぐに携帯を見る。

 ―Eメール 5件

 全部見て、がっかりする。サトルからのメールはなかった。

 6日目、明日で一週間。連絡を取らないまま、土日に突入。こんなに寂しい気分の週末は、初めてだ。

 昨日の夜、今までのサトルからのラブメールを見て、泣いた。

 起きたら、お昼だった。

 携帯電話は、鳴らない。

 また泣いた。

 ピンポーン

 チャイムがなって、ママが玄関に出る。下でママが、聞き覚えのある声と話している。

 「アイコー!サトルくんがきたわよー!」

 ママの声にびくっとして跳ね起きる。泣きっぱなしの顔。くしゃくしゃの髪。こんなかっこ見られたくないけど、それよりもなによりも、会いたかった。

 サトルが上に上がってくる。

 パジャマ姿、泣き顔、くしゃくしゃの髪、携帯電話を握り締めて、ベッドの上で呆然とドアを見つめる私を見て、サトルは笑った。

 「バァカ」

 いつもの憎まれ口。何回聞いたっけ・・・?

 ケンカするたびにそうやって全部許して、頭を撫でて、抱きしめてくれる。

 今日も同じ。近づいてきて、こんな姿の私を抱きしめる。

 「ごめんな、俺が悪かった」

 言いながら、抱きしめてくれる。温かい。思わず、また涙が溢れる。

 「な、泣くなよー」

 困ったようにサトルは言いながら、頭を撫でる。

 声にならない声で、何回もゴメンネって言う私。

 いつも、ありがとう。

 こんな私だけど、これからもずっと、一緒に居てね。

 キライにならないでね。

 こうやって、長いケンカ週間は終わった。

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