第8話 バトルスタイルの問題だよね
「ではお互いに、手札を引いてください」
ついに、ムキムキ男対俺のバトル……もとい、カードバトルが始まった。
(始まった……)
昔から憧れていたとは言え、カードバトルは初体験。昨日までカードバトルのルールすら知らなかったような人間だ。
しかもこの試験は、ただただ俺の憧れの冒険者になるための試験と言うわけではない。
もしこの試験に落ちてしまえば、俺は無職。無一文になってしまう。
せっかく村から出てまで都会に来たのだ。資格もなければ技術もない。今の俺にはここを合格して、冒険者稼業でお金を稼ぐしか道は無いのだ。
(もちろんバイトって手もなくはないけど……それじゃぁティーンに来た意味がない)
つまり、俺にとってはここは運命の分かれ道。合格して冒険者になるか、落ちてフリーターになるか。
(合格するぞ……絶対にここで合格する……)
俺は心の中でそう言い聞かせ、己を奮い立たせる。
「レンタ・イトウ様」
「ん……? あ、何ですか?」
「ルールはデッキ制作中に理解しましたか?」
「ええ、ある程度は……」
「そうですか。ではバトルコアの説明を」
「はい」
「カードを引きたい場合、そのバトルコアに触れてください。そうすれば、欲しい枚数だけカードを引くことができます。バトルコアは持たずとも、バトルが始まれば空中で自立して動くので、わざわざ手に持たずとも大丈夫です。最初の5枚の手札を引く時も同様に、手をかざしていただければ、5枚カードを引くことができます」
「……はい。ありがとうございます」
受付嬢さんからバトルコアの説明を受け、早速バトルコアに手のひらを置くと、手のひらを置いたところに淡い光が漏れる。その後、バトルコアから手のひらを離すと、いつの間にか手札に5枚のカードが握られていた。
「おお……!」
しかも、カードを引いた後のバトルコアは、俺の手の中を離れ、ふわふわと空中浮遊し始める。なるほど、空中で自立するとはどういうことかと思っていたが、謎が解けた。
チラリとムキムキ男を確認すると、ムキムキ男も俺と同じように、バトルコアからカードを5枚引いていた。
「お二人とも、準備ができたようですね……では……ごほん」
受付嬢さんは少し咳き込み、声を整えた後……
「バトルスタート!!!!」
お決まりの言葉を、大きな声で発した。
「さて! 早速僕から行くぞ!!」
ムキムキ男はそう言うと、後ろに大きく飛び、5枚ある程度の中から1枚を引き抜き、俺に見せつけながら叫ぶ。
「魔法カード、落石!!」
そうやってムキムキ男はカードの使用を宣言した……が、その時、俺はこのカードバトルの1つの欠陥を発見した。
(いやカードテキスト読めんて……)
ただでさえカードと言うものは小さいのに、後ろに下がられては困る。バトルに支障をきたすだけだ。
冒険者はこの距離からでもカードテキストを読むことができるのか? マサイ人並みの眼力を持っているとでも言うのか?
俺は【落石】のカードのテキストを確認するため、本能的に前へ近づくと――
(ん? 何か影が――)
俺のいた場所に、大きめの石が降ってきた。
ブックマーク、感想、評価よろしくお願いします!!