第5話 試験なんですかこれは?
おりゃー!
覚悟を胸に、震える手でドアノブを開けると、そこにあったのは大量のカード。
無数のストレージボックスに乱雑にいれられたそれは、子供の夢であり、大人たちが子供の頃、誰もが1度は夢見た光景であった。
俺の村はそこまでモンスターが出現しない地域だったこともあり、カードなんて1度か2度しか触ったことがなかった。そんなカードが今、所狭しと俺の前に並んでいる。
それを見て、期待しない方がおかしかった。
「あの……これ……」
「レンタ・イトウ様はまず、ここでデッキを作って下さい。制限時間はありませんので、どうぞゆっくり……」
「……!!」
受付嬢さんはそう言った後、部屋の外へ出て行ってしまった。
残ったのは俺と大量のカード。
(これを全部……好きなように……)
その時、俺の頭の中から緊張感が消え、おもむろに大量のカードへ手を伸ばした。
――――
「えーっと……うーん……」
あれから、大量のカードに立ち向かっていた俺であったが、やはり、カードゲームのデッキ作りと言うのは悩むものであった。
俺の村がど田舎で、古いテレビで試合観戦をするぐらいしか冒険者に関わることがなかったため、そもそもルールがわかっていない。ルールのわからないスポーツを観戦するようなものだ。なんとなく周りの反応で、今の行動はすごいだとか、今のは駄目だったとかを認識していた。
なので、まずそこから理解する必要があり、まずそれを覚えるのに時間がかかった。
「……これでいいのかな」
ルールは以下の通りだ。
『最初の手札は5枚。デッキ枚数は40枚』
『自分のライフが失われたら負け』
『プレイヤーは魔力を消費し、カードを使用する』
『5分ごとにデッキから1枚ドローする』
……のみだ。
これは本当にルールと言えるのだろうか……
特に4つ目。『プレイヤーは魔力を消費し、カードを使用する』の部分。
魔力は量の差はあるものの、全ての人に等しく存在する潜在能力のようなものなので、そこは問題ない。
だが、モンスターを召喚するときに使用する魔力量に一切の説明がない。他にもカードの能力の裁定やカードの種類等、足りないことが多すぎる。
「しかも肝心のカードは……」
そう言いながら、手元にあった【ゴブリン】のカードを見る。
もちろんだが、ゴブリンのカードにはゴブリンの絵、そして能力が記載されているわけだが……その能力が問題だった。
【ゴブリン】
【能力】
手足を使って攻撃する。
「意味がわからん。マジで」
これで本当にカードゲームが成立するのか? 他のカードを見てみても、事細かな説明がしてあるものがほとんどない。爪で攻撃するとか、腕力がすごいなどのふわっとしたものばかり。
俺は今まで本物のカードを見たことがないので、もちろん俺が無知なだけで、これが普通と言う可能性ももちろんある。
とにかく、今あるものでデッキを組んでいくしかない。
(とりあえず……この能力? を頼りに選んでいくしかないな……)