第4話 ギルド……?
次の日。
「あ〜……ん〜……」
俺はあの後、格安の宿に泊まり、そこまで柔らかくもないベッドで目を覚ました。
まだ冒険者になれるかどうかもわからないのに、高いお金を払って宿に泊まるのは抵抗感があったが、うまく格安の宿を見つけれてよかった。
(安いのはいいけど、部屋は狭いしベッドは固いし……安いだけじゃ駄目なんだな……)
硬いベッドのおかげで体がバキバキだ。特に腰が痛い。腰痛になったらこんな感じなのか。歳は取りたくないものだ。
今日はいよいよテストの日だ。この日のテストの合格の有無によって、俺の人生は大きく変わる。
不思議と緊張感はない。そこにあるのは期待だけ。
別に合格できると言う保証があるわけではない。カードに触ったことがあるわけでもない。
ただ楽しみなのだ。憧れた冒険者になれるかもしれないと言うことが。
(我慢できない……!! 早くギルドに行こう!!)
はやる気持ちを我慢できず、俺は宿を出て、ギルドに向かって走っていった。
――――
「よし……着いた!!」
宿を出てから5分ほど。無我夢中で走っていたら、いつの間にかギルドに到着していた。
中は朝とは思えない賑わいだ。みんなカードを持ち寄り、カードパックを購入している。冒険者がいかに人気な職業かと言うことがありありとわかる光景だった。
(みんなこんな時間に……冒険者の朝は早いのか?)
冒険者のミスは命に関わる。みんなミスをしないよう、デッキの調整などを朝まで必死にやっていると言うことか。
(俺も頑張らなきゃ……)
周りに感心してばかりではいられない。今からは俺が頑張る番だ。
(絶対……絶対受かってやる!!)
俺は気を引き締めた後、ギルドの受付嬢さんにテストを受けることを伝える。
「すいません! 昨日来たレンタ・イトウなんですけど!!」
「あ、はい。レンタ・イトウ様ですね……はい。では試験を行いますので、こちらにお越し下さい」
興奮し、少し食い気味に話す俺に対しても、受付嬢さんはにこやかに返事をし、ギルドの奥の廊下へと誘導してくれる。毎日冒険者たちの相手をしているので慣れているのだろう。
俺はそんなことを考えながら、受付嬢さんの後ろを歩いて行く。
(冒険者試験か……どんなものなんだろう……)
冒険者試験があるとは言われていたが、試験の内容は聞いていない。冒険者になるための試験なのだから、カードについてのものだとは思うのだが……
試験なのだから、そこまでしんどいものでは無いはずだ。
(……いや、たとえしんどいものであったとしても、絶対に合格してみせる!!)
「レンタ・イトウ様。こちらの部屋へお入り下さい」
(合格するんだ……絶対に……)
「……レンタ・イトウ様?」
「ん……? あ、すいません!」
受付嬢さんの言葉を無視してしまったことを謝罪し、俺はドアの前に立つ。
そのドアは普通よりも大きく、金属で作られていた。
(……獣人とかも入れるように、普通よりも大きい設計なのかもな)
俺は心の中で勝手に納得しつつ、ドアノブに手をかけた。
ドアノブは金属製でありながらも、ほのかに暖かさを感じられる。誰かが最近この部屋に入ったようだ。
(よし……!)
ドアノブを捻り、ドアの奥へ行こうとした瞬間、何かがドアノブを捻るのを拒否させる。
(なんだ……?)
その瞬間、どくどくと心臓が鳴り始める。体中に血が回り、体がどんどんポカポカしてくる。
しかし、それとは真逆に震える体。暖かいのに震えが止まらない。この矛盾、この不可解さ、自分でも怖くなってくる。
(……怖がってるのか、俺は)
初めての冒険者試験、初めての街、初めての体験、初めてのことが多すぎて、知らず知らずのうちに心が疲弊していたのだろう。
(くそっ……止まらない……)
止まらない震え、どくどくと高鳴る心臓、1人で止まるものでは到底なかった。
しかし、進まなければ欲しいものは掴めない。あちらから近づいてくることは決してないのだ。
(もう震えなんかどうでもいい!! 行けっ……行け!!)
震えや心臓の高鳴りをそのままに、俺はドアノブをぐいっと回し、そのままの勢いでドアを開けた。
そこで、俺の目に入ったものとは…………
「おお……!!」
大量のカードだった。
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