第3話 ギルド!!
……大勝負だ。
一世一代の大勝負。今までの人生のためにため込んだメンタルを全て解き放つ時だ。
息を大きく吸って吐く。深呼吸を何回か行う。
普通、深呼吸と言うのは落ち着くためにするものだが、深呼吸を何回しても、全くと言っていいほど落ち着かない。体に酸素が取り込まれて、心臓の鼓動がより速くなった気さえする。
しかし、それくらい覚悟を持って望まなければならないのだ。それでいい。それが正常。それぐらい緊張してもらわなければ成せないものなのだ。
一歩、さらに一歩と歩を進める。もちろん軽率な気持ちで進めてはいない。一つ一つの歩に責任を感じながら、歩いてくれている足に応えるために、覚悟をさらに強めながら歩いて行く。
やがて目的地にたどり着き……力を込めて、覚悟を込めて、思いを込めて……一言。
「あっ……あの、冒険者になりたいんですけど……」
ギルドの受付嬢さんに、そう話しかけた。
――――
「……はい。レンタ・イトウ様ですね。では明日、冒険者試験を行いますので、お手数ですが、明日のこの時間にまたギルドに来てください」
「はい。ありがとうございます」
受付嬢さんに日時の記された紙を渡された後、俺は足早にギルドから出て行く。あまりの緊張感に言葉も失い、その姿はまるで機械のようだ。
そして、ギルドから出てしばらく経った後……
「……っ! はぁ〜緊張した……」
俺は緊張の糸が切れたように、ドカッとその場に座り込む。それに抵抗しない体を見るに、俺の体もかなり疲れていたようだ。
一世一代の大勝負、ギルドでの冒険者登録。結果、後日テストをすることになったが、今日のところはひとまずよくやったと言っていいだろう。
俺はギルドの中の様子を思い出す。ギルドはかなり広く、窓口がたくさん用意されていて、玄関から見て左にはカードパック売り場やそれを保護するデッキケース等の物販。右にはテーブルと椅子が用意された休憩スペース、その奥はカードの買取が行われる換金所が配置されていた。
しかし、今の俺はギルドの事よりも、冒険者登録と言う修羅場を一旦はくぐり抜けた。それだけで俺の体は奇妙な満足感に包まれていた。
(それにしても……思ってたところとは結構違ったなぁ……)
ギルドと言えば、屈強な男やローブを着た女性が、カード片手に換金しに来る。そんな場所だと思っていたが、意外と普通の服を着た人もかなり多く、10代になったばかりに見える比較的若い人もちらちらと見受けられた。
(だけど……これが売ってることだけは予想通り……!!)
俺はそう思いつつ、ギルドで購入したとある封筒を取り出す。
「これが……『カードパック』」
そのカードパックと呼ばれる封筒の中には、ランダムにカードが5枚入っている。
もちろん中身はランダムなので、何が出るかはわからないが、運がよければ格安でレアカードを手に入れられる。
まぁガチャのような物だと思ってくれていい。
ギルドでもこのカードパックを購入する者は多く、数多くの人たちがこのカードバックを開封し、一喜一憂していた。
「……っっ〜!!」
カードパックはギルドにしか販売されておらず、俺の村ではもちろん確認できなかった代物だ。こういう大都市でしか手に入れられないものを手に入れると、より一層ティーンに来たんだと言う気持ちが増してくる。
(俺の冒険者人生は……ここからスタートしていくんだ!!)
大都市ティーンでの新たなスタート。その火蓋が切られたような……
気がした。