第17話 客観的に見たら脅迫
俺は試験により失った自信を取り戻すため、ティーンの森に入り、スライムを大量に殺しまくった。
その結果、スライムを10匹討伐することに成功し、少しは自信を取り戻すことに成功。もうじき暗くなるため、帰ろうとしたのだが……
「あ、ううぅ……」
(端から見たら脅迫だなこれ……)
目の前にいるのは1人の女の子。金属の防具に身を包んでおり、俺と同い年位に見える。
そして彼女の手には、3枚ほどのカードが握られている。
(うーん……)
見た目からして、彼女も冒険者。スライム大量発生を聞いて、ティーンの森に入ってきたのだろう。
しかし、それだと俺をストーカーしてきた理由にはならない。
(ま、聞いてみるか)
「なぁ、あんた」
「ヒッ……は、はい……」
(いちいち怖がられるのも面倒だな……)
「安心しろ、体を触ろうってわけじゃない。聞きたいことがあるだけだ」
彼女を落ち着けるため、自分は害を与える気がないことを伝える。これで少しは落ち着くことができるだろう。
「……なぁ、なんで俺を隠れて見てたんだ?」
俺の質問に対し、彼女は怯えた様子を見せつつ、その震える唇でポツポツと答える。
「え、えっと……この時間に人が森にいることが珍しくて……それで、その……ごめんなさい!」
彼女は理由を言った後、大きな声で謝罪の言葉を述べる。
(確かに、真夜中に1人で森に入るやつはなかなかいない……理由としては成立している……か)
完全に陰険だが、こんな怯えた女の子がぱっと嘘を考えつくとは思えない。この理由は本当と断定していいだろう。
「……じゃあ、あんたはなんでここにいるんだ?」
「あ……仲間の中で、私が1番弱いので……その……特訓っていうか……」
(……なるほどな)
おそらく、彼女はどこかの冒険者パーティーの一員なのだろう。
しかし、その中で自分が1番弱いので、誰にもバレない深夜にこっそり練習していたところ、俺を発見し、興味本位でついてきたのだろう。
「こんな真夜中に森を徘徊してた俺も悪かったから、今夜は許すけど……もうこんなことするなよ?」
「あ……はい……すみません……」
彼女は俺に頭を下げ、再度謝罪してくる。
「…………」
彼女が頭を下げてきたとき、俺は思わず彼女の防具を目にしてしまった。
その高そうな防具に、目の前の彼女は冒険者なんだと理解させられる。
(女の子でもクリアできる試験に、俺は落ちたのか……)
俺は改めて、自分の力のなさに失望を覚える。取り戻しつつあった自信が体から抜けていくのを感じた。
(……気持ちが暗くなる前に帰ろう)
俺は彼女に別れを告げるため、「じゃあね」と言葉を述べようとしたその時――――
俺たちの立っている場所の右側から、何かが飛び出してくる音が聞こえた。
「ギャルァァ!!」
そこにいたのはモンスター。動きが速く、シルエットでしか確認できなかったが、明らかにこちらに敵意を示している事はわかる。
(まずい!!)
いくらシルエットが確認できても、それに体が反応しなければ意味がない。このままでは体が反応する前に、モンスターの攻撃がこちらに当たってしまう。
既に俺のどうにかできる範囲を超えている。これから襲ってくる痛みに耐えるしかなくなり、思わず目をつむってしまう。
(くる!!)
……と。
(うおっ!?)
と、その時、とても大きな衝撃音が響く。
そして何故か、俺の体に痛みが走ってこない。それを不思議に思った俺は、目の前で何が起きたのか確認するために、ゆっくりと目を開けると……
「あの……大丈夫ですか?」
そこには、ついさっきまで怯えていた女の子と、モンスターの攻撃を防いだ大きな盾があった。
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