第13話 18歳だもん。冒険したいよ
毎日毎日、自分の体を動かし続ける。
その行為、苦行としか言いようがない。他人が見たら目を逸してしまうほどの常軌を逸した戦い。
武器を持つ手は重さに耐え切れず大きく震え、戦場の熱気で大きく湯気が立つ。
戦場の悪魔はその肉を目の当たりにし、顔を大きく歪め、誰を垂らしていた…………
「お待たせしました! サーロインステーキでございます!」
――――
「レンタくんお疲れ様、はいこれ今月の給料!」
「ありがとうございます……」
結局、あの日から俺は何のアクションも起こすことなく、給料日まで働きに働き続けた。
(疲れた……本当に……)
もらえる金額を少しでも増やすため、休みなしでぶっ続けで働いていた。普通に苦行だった。もうこんなことしたくない。
仕事をすると言う大変さ。それを嫌と言うほど教えられた時間だった。
最後の方になってくると、料理の重さで食器を持つ手が大きく震え、手から汗が垂れる。料理から溢れる湯気に無意味にいらつきを覚えたほどだ。
もちろん料理はお客に出すわけだが、仕事を続けているうちに注文をするお客さんに憎悪が溜まり出す。
あまり注文するな。こっちの労働量が増えるだろう。そんな定員にあるまじき考えが浮かぶ。もう目の前のお客さんが悪魔にしか見えなかった。
(けど……そのおかげで……)
給料の入っている封筒。人の夢と希望と人生が詰まった茶色い封筒。その開け口を開けると……
「おお……!!」
その中にあったのは万札の束。数えたところ30万ジェムほどあった。
バイトでこの金額は凄まじい量だ。毎日労働と言う地獄の所業が産んだそれ相応の対価だ。
5万ジェムで10日以上粘ったのだ。30万ジェムもあれば3ヶ月はもつだろう。
(よし……!!)
その後、俺は店長に毎日働きから普通の働く日数にすることを伝え、シフトを組み直し、店を出た。
――――
「うーん……さみさみ……」
俺は肌寒い帰り道を歩きながら、体中を両手でさすさすと擦る。
かなり中途半端な寒さ。厚着をするほど寒くはないが、薄着だとなんだか肌寒い。人間誰しもが嫌いなかの感じだ。
「今日は少し豪華に行くか……あったかいものがいいな」
せっかくの給料日なのだ。こんな日位は羽を伸ばしてリラックスしたい。無理な我慢は続かない。出すときにとことん出してこそ、次の励みになる。どこかの班長も言っていた。
「……よし! 今日はバイト先の料理屋でも気になっていた鳥の丸焼きに……」
……と、その時。
「……ん?」
道のど真ん中に、見覚えのない紙が1つ。
「……なんだ?」
何度も通った帰り道なので、もともとその場に捨ててあったのなら、見覚えがないわけがない。おそらく夜のうちにポイ捨てされたものだと考えられる。
帰り道なのでもともと通る道だし、人間特有の好奇心からも、その紙を見ない理由はなかった。
俺はその紙切れへ近づき、その紙を手で拾って確認する。
「……へぇ」
そこには、『ティーンの森でスライムが大量発生。注意せよ』と、注意喚起が書かれていた。
「…………」
スライム……スライムといえば、雑魚キャラの代表格であり、どこにでも出現するモンスターだ。その力はとても弱く、俺も村での討伐経験がある。
「…………」
その時、俺の頭にある1つの考えが浮かんだ。
雑魚キャラならば、今の俺でも殺せるんじゃないか……と。
「…………」
ティーンに来たばかりの俺なら、この紙を見てもそんな考えは思い浮かばなかっただろう。
しかし、今の俺はテストに落ちた衝撃で、自信を失ってしまっていた。
『スライムを倒すことができれば、少しは自分の自信になるかもしれない』
そんな思いが頭をよぎり、自信をつけるために、この考えが浮かんでしまった。
そのまま俺は、歩いて行く。
ティーンの森に向かって。
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