表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/34

第13話 18歳だもん。冒険したいよ

 毎日毎日、自分の体を動かし続ける。



 その行為、苦行としか言いようがない。他人が見たら目を逸してしまうほどの常軌を逸した戦い。



 武器を持つ手は重さに耐え切れず大きく震え、戦場の熱気で大きく湯気が立つ。



 戦場の悪魔はその肉を目の当たりにし、顔を大きく歪め、誰を垂らしていた…………





「お待たせしました! サーロインステーキでございます!」









 ――――









「レンタくんお疲れ様、はいこれ今月の給料!」


「ありがとうございます……」


 結局、あの日から俺は何のアクションも起こすことなく、給料日まで働きに働き続けた。


(疲れた……本当に……)


 もらえる金額を少しでも増やすため、休みなしでぶっ続けで働いていた。普通に苦行だった。もうこんなことしたくない。


 仕事をすると言う大変さ。それを嫌と言うほど教えられた時間だった。


 最後の方になってくると、料理の重さで食器を持つ手が大きく震え、手から汗が垂れる。料理から溢れる湯気に無意味にいらつきを覚えたほどだ。


 もちろん料理はお客に出すわけだが、仕事を続けているうちに注文をするお客さんに憎悪が溜まり出す。


 あまり注文するな。こっちの労働量が増えるだろう。そんな定員にあるまじき考えが浮かぶ。もう目の前のお客さんが悪魔にしか見えなかった。



(けど……そのおかげで……)



 給料の入っている封筒。人の夢と希望と人生が詰まった茶色い封筒。その開け口を開けると……


「おお……!!」


 その中にあったのは万札の束。数えたところ30万ジェムほどあった。


 バイトでこの金額は凄まじい量だ。毎日労働と言う地獄の所業が産んだそれ相応の対価だ。

 5万ジェムで10日以上粘ったのだ。30万ジェムもあれば3ヶ月はもつだろう。


(よし……!!)


 その後、俺は店長に毎日働きから普通の働く日数にすることを伝え、シフトを組み直し、店を出た。









 ――――









「うーん……さみさみ……」


 俺は肌寒い帰り道を歩きながら、体中を両手でさすさすと擦る。


 かなり中途半端な寒さ。厚着をするほど寒くはないが、薄着だとなんだか肌寒い。人間誰しもが嫌いなかの感じだ。


「今日は少し豪華に行くか……あったかいものがいいな」


 せっかくの給料日なのだ。こんな日位は羽を伸ばしてリラックスしたい。無理な我慢は続かない。出すときにとことん出してこそ、次の励みになる。どこかの班長も言っていた。


「……よし! 今日はバイト先の料理屋でも気になっていた鳥の丸焼きに……」


 ……と、その時。


「……ん?」


 道のど真ん中に、見覚えのない紙が1つ。


「……なんだ?」


 何度も通った帰り道なので、もともとその場に捨ててあったのなら、見覚えがないわけがない。おそらく夜のうちにポイ捨てされたものだと考えられる。


 帰り道なのでもともと通る道だし、人間特有の好奇心からも、その紙を見ない理由はなかった。


 俺はその紙切れへ近づき、その紙を手で拾って確認する。



「……へぇ」



 そこには、『ティーンの森でスライムが大量発生。注意せよ』と、注意喚起が書かれていた。


「…………」


 スライム……スライムといえば、雑魚キャラの代表格であり、どこにでも出現するモンスターだ。その力はとても弱く、俺も村での討伐経験がある。


「…………」


 その時、俺の頭にある1つの考えが浮かんだ。



 雑魚キャラならば、今の俺でも殺せるんじゃないか……と。



「…………」



 ティーンに来たばかりの俺なら、この紙を見てもそんな考えは思い浮かばなかっただろう。


 しかし、今の俺はテストに落ちた衝撃で、自信を失ってしまっていた。



『スライムを倒すことができれば、少しは自分の自信になるかもしれない』



 そんな思いが頭をよぎり、自信をつけるために、この考えが浮かんでしまった。





 そのまま俺は、歩いて行く。





 ティーンの森に向かって。

 ブックマーク、感想、評価よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ