第1話 ここはカードが支配する世界
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森の中、客を乗せた馬車がガタガタと音を立て、森の中を進んでいた。
そこは森の中に見えて、実はしっかり道として作られていて、常日頃からその馬車はその道を走っていることがわかる。
「……そういえばお兄さん。なんでティーンに行くんだい?」
馬車を操縦している運転手が、顔を後ろの客席に向けて言葉を放つ。
「あー……まぁ……いろいろありまして」
その客は男。そこまで歳行かない青年だ。
「その年でティーンに1人で行くって事は……『冒険者』になって一山あてるつもりだろ?」
「ま、まぁ……あはは……」
「すごいよねぇ……冒険者の使う『カード』ってやつは。あの紙切れ1枚からモンスターとか何やら出てくるんだから」
「ははは……ですよね……」
運転手と客の会話はそこで終わり、後は馬が地を踏む音と馬車の車輪からガタガタとした音が聞こえるだけ。
(こんな歳行かない青年が冒険者を志すとは……怖い時代になったもんだ)
――――
「忘れ物は無し……っと。ありがとうございました。ここまで連れてきてくれて」
「いいよ。仕事だからな……それよりも気をつけてな、お兄さん」
俺は馬車の運転手に別れを告げ、俺の目指す大都市、ティーンの門へと踏み出す。
胸がドキドキと鳴り響く。その原因は期待感と高揚感。ここから生まれる第二の人生と、果たしてそれがうまくいくのかと言う不安。そこから生まれる心音が、俺の耳を邪魔している。
胸の内に秘めた期待と不安、耳にうるさいのは高鳴る鼓動。この思いを早く終わらせたい。心の中でカウントダウンが始まる。第二の人生はもうすぐそこだ。
そして……門をくぐると……
(お……おお!! うおおおおおお!!!!)
そこにあったのは、村にいた頃、絵本で読んだ中世ヨーロッパのような洋風の建物が立ち並ぶ綺麗な光景。
道路には、元いた村にないようなデザインの石畳が敷き詰められ、街灯が所々に並び立っている。
さらに……
(じゅ……獣人だ……獣人がいる……)
俺の故郷にはいない、犬や狼などの顔をした人である獣人が、当たり前かのように歩きまわっていた。
獣人と言う種族は過去にとある出来事があり、数がそもそも少なく、今なお減少傾向にある。
なのにこの数。どこを向いてもどこを見ても、必ず獣人が目に入る。
(獣人はただでさえ少ないのに……さすが大都市ティーン……!!)
もはや充分過ぎるほどの証拠、場所、そこから導き出される答えは1つしかなかった。
「ついに……ティーンに……冒険者に……!!」
言葉がそれしか出ない。喉が震える。手足も震える。
夢にまで見た冒険者への道。それがついに開かれたような気がして……
呼吸をすることを忘れて、呼吸困難になる。目の前の光景を凝視することしかできない。体が鉛になったようだ。
そして、その光景はとても夢とは思えなく――――
「……っ! ハァっ、ハァっはぁぁ……」
その状況を飲み込むのに、少しの時間が必要だった。
――――
「はぁ……はぁ……よし……落ち着け、ゆっくり……」
10分後、俺は10分前と場所を全く変えず、ただその場に立ち尽くしながら動悸が収まるのを待っていた。
無論、10分間も過呼吸で全く動かず、その場に立っているのだ。
周りから変な目で見られるわ、呼吸は安定しないわで散々だった。
しかし、そんなことで焦ってしまうのは愚の骨頂。紙切れ程度しかないメンタルをフル活用し、何とか落ち着くことに成功した。
「よし……」
レンタ・イトウ。年齢18歳、出身地は町外れの村、彼女経験なし、両親は2人とも他界、憧れの職業は冒険者。
そんな俺は、憧れの冒険者になるため、大都市ティーンの石畳を一つ一つ踏みしめていく。
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