不穏なる空気
それは、オーテン村でブラックが【リーバ】という狼を倒すために、【覚醒】した時。
………………
…………
……
《勇者の【覚醒】を確認》
《世界から、該当者を検索。
該当。……、……、2人?》
《エラー、再検索を開始》
《エラー》
《エラー》
遺跡の中で、真っ白な球体が何度も世界に向けて検索を繰り返す。
《異常事態と認識》
《勇者と偽る異分子を排除、排除、排除、排除、排除……》
《遺跡に侵入後、抹殺モードに移行を検討……》
《決定》
………………
…………
……
『国の指示だったわけか』
『うん、パパ』
『パパが【覚醒】?するために村を焼けって命令書が届いてきた』
なんでも……スィは幼体…幼いの頃の記憶がなく、気がついたら国の命令が書かれた指示書に従うようになっていたらしい。
ある日、王城の地下にある牢屋で寝泊まりをしている生活が嫌になって、抜け出したそうだ。
でも、脱走が見っかってしまい、呪いの魔法具【従魔の首輪】を取り付けられて、命令に絶対服従させられていたそうだ。
ーーーそれにしても、どこの国の指示だ?
コクロック王国なら、今は第一王女が王になったから違うとしてもな…。
いや?命令が遅れて届いたって可能性もあるか?
『あの村長も知ってたのかな?』
安里、俺が目をそらしていたことを…
『村人全員が協力するから、被害者ゼロの楽な仕事でした』
あの村……火事が起きる前日にお祭り騒ぎだったのは、村の最後を知っていたからか…。
それに、最初の挨拶で俺を勇者だと答えるのも腑に落ちなかったんだ。
俺の顔は撮られていない。っていうか、ここには似顔絵くらいでしか人の顔を知らせることができていない。
勇者の印として、あの王国から書状を貰っているが、この村を助けるのはボランティアでしようと思っていたために挨拶の時には見せていなかったしな。
『パパ?』『コーくん?』
『悪い、考えていた』
『で、決まった。
このまま、村に帰らずに旅に出よう!』
『えっ!?』
安里が驚いて、スライム・ボディが波打つ。
『村は救われてるしな』
正直……この事実を知って、あの村の人達を見るのが怖いし。
『パパ、どこに行くの?』
『遺跡だ。
そこに、勇者の【剣】があるんだ』
勇者の剣を装備したら、力がまた10%上がるんだ!
戦力は高いほど良いし、この先で、魔王に会わないとも言い切れないしな!
とりかく!あの村には、行きたくないぜ!
………………
…………
……
『安里、俺が考えていることは分かるか?』
『私と結婚したい!?
コーくん愛してるぅ~♥』
うん、こいつは低知能のスライムだな。
『パパ、ごめんなさい』
『スィは、悪くないぞ?
このスライムが悪い』
『でも、謝れたことは偉いな!』
『うんうん、スィちゃん偉い!』
さて、穴はこれくらいでいいかな?
もうちょい、掘るか?
いっそ、【覚醒】して、どこまで掘ったら水が出るか、チャレンジするのも悪くはないな!
『パパ…そんな笑顔で、こんなに深い穴を掘ってどうするの?』
『大人になれば分かるさ』
『そう!
コーくんも大人になったよね!』
『大きくなったよね!
昔は、ちっちゃかったのに♥』
こいつの、大人の基準はあれがデカイかどうかなのか?
『よし!あとはスィ、この穴の壁の半分くらいの高さの所で爆発させて、埋めてくれ』
『え?でも…安里が『小さな爆発でいいぞ』でも、『あ、結構深いから見えない?』』
『なら、肩車してやる。
おいで、スィ』
『肩車!
うん!パパ~♪』
俺はスィを抱き寄せて、肩車する。
『スィ?あの辺を爆発してね?』
俺は、穴の半ばほどの壁を指差す。
『でも、『高い高いもしてあげるから』分かった♪パパ♥』
こうして、安里を閉じ込めた箱ごと、掘った穴は埋められた。
『スィ?
今度からは、あんなことはぜ~たいにしないようにな?』
『パパとの約束な♪』
安里がこの国の門番に検問されていた時に、寝ていたスィ(擬態を解いて、丸くなった状態)を起こして、俺の股間部分にテントを張ることを仕込んだせいで、また、【優しい世界】が広がったじゃねぇか!
挙げ句に、こんな幼い子に、
『パパのは、これくらい立派だって見せるのが流儀?だって安里が……』
って言わせやがって。
反省が必要ですね。はい。
『よし!高い高ーい』
キャッ♪キャッ♪と笑顔になって、高い高いされるスィを見ながら俺は、この【リッパー国】の南、マヤゴーア砂漠を目指して森を歩くのだった。
グオーラ砂漠→マヤゴーア砂漠に修正。
やっと、愛娘編が書き終わったので、
私、女神になりました♪~MP頼りのステータスで敵をボコボコに!~
に取り組んでます!