巻き戻される運命
戻ってきた。
あんな糞みたいな世界から、俺は!
ーーー戻ったよな?
………うん、日本だ!
これが日本に似せた世界じゃなければ、俺は故郷に帰ったんだ!
『俺は!戻ったぞおおおおお!!』
『コーくん!!』
『ーーーおおおおお!!…ん?』
誰だ、こんなに感動している時に!
『ご近所迷惑でしょ!』
『こんな雨の日に傘もささないで叫んでるなんて変態さんなの!?』
変態とは、失礼だな。安里。
彼女は、山崎 安里。
俺とは、俺が30歳の時に結婚している。
『…え?』
あれ?
安里、若くなった?……いや、若くね?
『もぅ!ちゃんと聞いてるの!』
安里は、当たり前のように傘に俺を入れてくれながら怒る。
『あ、あぁ悪い…いや、ちょっと待って!
安里!今年は何年だ!!』
俺は、安里に問いかける!
『【安里】っ!?……嬉しい』
…は?
『初めて呼んでくれたね、【安里】って』
何言ってるんだよ。
『はぁ?
俺たち付き合ってから、ず~と名前呼びだろ?』
『わ、私たち、つ、付き合ってた…の?』
安里は上目遣いで見つめる。
名前で呼ばれたのが嬉しくてたまらないのか口の端が少しだけ上がってる。
ーーーどうして、あの父親似の安里がこんな美少女になったんだろうな。
って、それどころじゃない!
『俺たち、令和12年から付き合てただろ!
…で、そこから5年で結婚したじゃん!』
『え…、結婚!?
まずは、恋人から…始めよう?コーくん』
だ・か・ら!もう、結婚してるだ……?
この物語の主人公 黒井 告一は、足元に溜まっている水溜まりに映る、自分の顔を見て不思議に思う。
『あれ?俺も若い……はぁあ!?』
『神様!俺は、召喚前に戻せって言ったよな!?』
明らかに若返っている!……中学生くらいか?
『コーくん、コーくん、お、落ち着いて』
『今、何年!?』
『え、今は平成30年……だよ?』
年号が、変わってねぇじゃねぇか!!
それによく見たらここ、俺たちの家じゃなくて、俺の実家前じゃん!
『おい!うるさいぞ!』
隣の安里の家、つまり、山崎家の玄関のドアが開いて顎が突き出てくる。
ーーー顎がだ。
おじさん……相変わらずの顎っぷりだな。
そして眼鏡をかけた男、安里の父親の半身が出かけた時に、俺と安里を囲むように、足元に紫色の魔方陣が広がる!
『ま、まさか!』『きゃああああっ!』
ーーー魔方陣から光が溢れ出して2人を包み込む。
光が納まる頃には、2人の姿は消えていなくなり、2人が立っていた場所に溜まっていた水溜まりの水面に波紋が残るだけだった。
『ま~た、告一の野郎が俺の安里たんに色目を使っているんじゃないか!…と思ったんだがなぁ』
ドアの前で、顎が特徴的な男性。
安里の父親が自分の歳を気にし始めるのだった。
それは……友との夢、つい終えた理想…。
本来なら、美少女ゲーム【スライムな彼女】を作りたかったけど、大人になれば、そんな夢は薄れていってしまう。
ーーーなら、小説で書けばいいじゃない♪