到着、運命の時代
やがて光は収まり、揺れも止まる。その時、吸魂の珠が乾いた音を立て真っ二つに割れた。ジニーが思わず叫ぶ。
「あッ!! ……割れちゃった……これでもう時空転移は出来ない……!」
「! ホントダ……」
ロボが呟くと、エマはそれどころではないとばかりに立ち上がって言う。
「それより着いたの!? 樹歴602年に!」
「確認してこよう」
そう言うとバドラックは壁をすり抜け外へ出た。エマ、ロボ、ジニーも後に続く。
キューブの外に出ると、目の前には光の奔流が渦巻く巨大な海のような球体が浮かび、その横の壁にはトンネルが口を開けている。その様子を見てロボは確信する。
(……あれは大空洞! 採掘王とディガー一族が掘ったに違いない)
バドラックはコアの前に浮き、問う。
「コアよ、今は樹歴何年だ」
するとコアから光の奔流が延び答える。
――選ばれし者バドラックよ、再び時を越えたようだな。今は樹歴602年、まさに大きな戦いが始まらんとしている所だ……――
それを聞きエマが叫ぶ。
「最終決戦が始まるんだわ、ぎりぎりのタイミング! 急いで王を説得に行かなきゃ!」
大空洞へと走るエマにロボとジニーが続く。バドラックも追いかけエマに話しかける。
「我はこれから我が城へ向かい一旦進軍を止める。樹教国王の説得が終わったら何か南大陸まで届く合図をせよ。合図があり次第、樹教国軍には攻撃せず世界樹へ進軍する。よいな」
「わかったわッ!」
エマの返事を聞いたバドラックは一人地層をすり抜け南大陸の魔王城へ向かう。エマ、ロボ、ジニーがトンネルに入ると昇降機らしき物が動いている。
「乗るわよ!」
3人は動き続ける昇降機に乗り込んだ。どこからか滝が流れるような音が聞こえ、ジニーは推察する。
(……おそらく地下水の流れを利用した水力昇降機ね。この時代、まだ電気を使った技術は無かったはず)
昇降機は軋む音をあげながら地上へと向かう。エマは焦りに汗を滲ませ、針の先の様に細い出口を見上げた。
(最終決戦が始まる前に止めなくちゃ――)
……
幾刻経ったか、ようやく地上に出ると3人は樹教国に向け走りに走った。走りながらロボがエマに問う。
「……エマ、フツウニ言ッテモ信ジテモラエナイゾ。未来カラ来タトカ、世界樹ガ悪ダトカ……ドウ説得スル」
先頭を走るエマが振り向きながら返す。
「策なんかあるわけ無いでしょッ! 信じてもらえるまで話して話して話して話すッ!」
それを聞いたジニーが賛同する。
「下手に話を作るより、その方が本人だって信じてもらえるかも。とってもエマらしいもん!」
その言葉に、ロボは黙って走る。
(大丈夫か……? 失敗は許されない、俺が何か考えておかなきゃ……)
……
やがて前方に七色の葉が輝き繁る世界樹と、その恵みに抱かれた王都が見えた。
リーフがもたらす豊かな水と緑、穏やかな気候。年々大きくなる幹に半ば飲み込まれた王城と周囲に栄える石造りの街並み――
それはエマとロボにとっては700年振りに見る懐かしい光景だったが、真実を知った今、その姿は違ったものに見える。
エマは走りながらその光景に想いを馳せた。
(世界樹に半ば飲み込まれた王城……世界樹に抱かれ護られてると思ってたけど、今見るとまるで"人質"ね……。今度は、救ってみせる……!)
ロボもまた想いを馳せる。
(世界樹は恵みを与えているんじゃない……星中の生命の源を集め消費してるだけだ……今ならアストラルの流れがはっきりと見える。今この瞬間も、世界樹はこの星に生きとし生けるものの命を吸い上げているんだ……!)
「……エマ! 絶対世界樹ヲ倒スゾッ!」
「ええッ、必ずッ!」
3人は王城の作戦室を目指し、全力で走り続ける。魔族との最終決戦が始まるその前に、真の敵が誰なのか、真実を伝えるために――





