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世界樹と星の守人 ~七色の光の王女と黒き鋼の英雄は【最高の加護】×【最強の物攻】で人魔大戦を切り開く~  作者: 星太
第6章 樹歴1300年 発明少女ジニー

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即言実行発明少女の遺跡探索

 翌朝――と言っても最早世界に朝陽は昇らない――、スパナを握り締めて気絶するように寝ていたジニーは、飛び起きてロボを見る。ロボは申し訳なさそうに片手を上げ、挨拶した。


「……オハヨウ」

「あーーやっぱり夢じゃなかった! ……もういい、不確定要素を絶ゆまぬ実験と観察で解き明かすのも発明者としての責務よね!」


 自分に言い聞かせるように吐き捨てると、ジニーはテキパキと荷物をまとめる。


「ナニをスルンデスカ?」

「決まってるでしょ、早速出発! 私には立ち止まってる時間なんてないんだから。さ、あなたはあれ持って」


 ジニーはガラクタの山の上に鎮座する大きな鉄箱を指差す。


「あなたの予備電源。本体にも積んでるけど、念のため」


 ロボは立ち上がり鉄箱を背負う。鉄箱は重く、その寸胴の本体に比べ頼りないロボの足はサスペンションが潰れギシギシと軋んだ。


 ジニーは毛皮の衣類を3重に着込み、大きな鞄を背負い立ち上がる。中には防寒テントやかつての世界地図、この日のために少しずつ貯めた保存食などが詰まっていた。

 

 ロボはその準備の良さに、ジニーの覚悟を感じた。


「よし、行くわよ!」


 ジニーはほら穴の戸を開けてロボと共に螺旋通路を歩み、大空洞の岩壁に沿い上下に延びる昇降機へ向かう。かつて掘削土を引き揚げた昇降機は、今や人々の移動手段として稼働していた。


 ジニーとロボは大きな駆動音を上げる錆び付いた昇降機に乗り、大空洞を上昇する。


「さあ、外が見えてきたわよ」


 やがて上方から吹雪が舞い込んできた。ジニーはフードを被り極寒に備える。ロボは感じないが、すでに地の底の熱は届かず、上昇するに連れ気温は急激に下がっていく。


 ――昇降機は最上部に着くと、大きな振動と衝撃をあげて止まった。ロボはその衝撃に尻もちをつく。ジニーは慣れた様子でしゃがんでいた。


「オット……」

「ごめん、気を付けてって言うの忘れてた」


 2人が地上に降り立つと、昇降機は再び大きな駆動音を立て地下へ降りていった。


「ううーっ、さぶっ!!」

「ワタシはダイジョウブデス」

「そうでしょうねっ!」


 2人は極寒の猛吹雪の中、コンパスを頼りに南へ向かう。一見先は雪、雪、雪。どこまでも真っ白で方向感覚どころか時間感覚まで狂いそうになる。ジニーはなるべくロボに話しかけて気を正しく持とうとした。


「初めて大空洞の外に出たけど、何も見えなくてあんまり感動しないわね」

「ソウデスカ」

「だってこれじゃ目を瞑ってるのと変わらないもの」

「ソウデスネ」

「もう、もっと気の利いた返しは出来ないの?」

「……スイマセン」


……


 危険に備えロボを同行させたジニーだったが、道中は何も起きなかった。いや、もっと正確には、何も無かった。


 ジニーが広げるかつての世界地図、まだ人々が世界を旅していた頃に使われていたその地図には、道中に森林や湖、大草原などが記されている。


 しかし目の前に広がるのは雪ばかりで、ネズミ一匹出会わない白銀の世界だった。


 やがて2人はやたら凸凹した雪原に着き、前方に巨大な何かを見つける。


「これが世界樹……?」


 2人はいつの間にか雪に埋もれたかつての街並みの上を歩き、世界樹に辿り着いていた。


 世界樹はとうに枝葉を喪い、天まで伸びていたであろう幹は半ばで折れている。ジニーが伝説に聞く七色の豊穣の面影は全くなく、それは化石のように白くそびえていた。


「幹だけでも山のように大きい……伝説は本当だったのね」

「……」


 ジニーが興味深そうに見回す一方で、ロボは何かが引っ掛かり考えていた。自分はこれを見たことがある気がする。が、その既視感はぼんやりと浮かぶだけで言葉に出来ない。


「すごい、建物が木に飲み込まれてるわ……入れるかな」


 ジニーは世界樹に飲み込まれた遺跡を見つけると、躊躇なく中に入っていく。ロボも後を追った。


「ここ、多分お城だったところだ……綺麗……」


 世界樹に守られ、遺跡の中は大きく崩れることなく形を保っていた。貴金属の装飾は錆び、数々の調度品は埃を被っているが、荘厳かつ絢爛な内装だったことが伺い知れる。


 ジニーが奥へ進むと、遥か昔に封印されたような地下への階段があった。そこは豪華だったであろう他の内装と異なり、黒い装飾が為され、まるで永遠に喪に服してきたようだった。


「何だろう、気になるな。ここだけ違う雰囲気を感じる」

「……? ワタシもキニナリマス」


 ロボも違う意味でその階段が気になった。他の箇所はぼんやりとした既視感があるのに、その階段には感じなかったからだ。


 2人は何かに惹かれるようにその階段を降りていく。


 階段を降りた先は、何かの祭壇のようでもあり、墳墓のようでもある。その奥へ細長く続く部屋には、綻びた黒い絨毯が延び、左右には燭台が並んでいる。


「……」


 2人はその雰囲気に息を飲む。ここは当時一般人が入る所ではなかったに違いない。明らかに人目を避け、しかし大切に扱いたかった何かが奥にある。ジニーはそう直感した。


 そしてついに部屋の最奥に着くと、2人は絶句する。


 そこには、きめ細やかな装飾が施された寝台に、樹の化石のように堅くなった1人の少女が横たわっていた――

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