邪法の修練2
ウィルはダンカンと邪法の修練に励むも、初戦は圧倒的なダンカンの技に完敗。ウィルはどれ程強くなれるのか。
「完敗です、すごい樹法ですね!」
「凄かったろう。俺のオリジナルだ」
ウィルは気絶から覚めると、飛び起きてキラキラした目でダンカンを誉めた。ダンカンは得意気に応えた。
「ネタばらししちまえば、雷の力で反射神経と攻撃力を強化して、風の力で機動力を強化。言ってしまえば邪法と同じ身体強化を樹法でしたようなもんよ……昔魔族にやられたのが悔しくてな、編み出したんだ……俺は天才だからな!」
ダンカンのその言葉には過去の悲劇の哀愁が滲み出ていたが、それを隠すようにおどけてみせた。
「だから安心してかかってきな、もっと力を込めてもいいぜ」
「はい、いきます……っ」
……
こうしてウィルとダンカンは邪法の修練を続けた。リーフの効力が切れる2週間毎に王都へ補給しに帰る以外は、朝から晩まで山林で戦い続けた。
……
修練開始から半年たっても、ウィルはダンカンに触れることすら出来なかった。流れ込む混沌に飲み込まれ、その隙に幾度となくダンカンに打ちのめされた。
「どうした、お前の意志はそんなものか!」
「……まだまだっ!!」
……
修練開始から1年たったころ、ウィルの邪法に変化が現れた。意志を込め膨れ上がった筋骨を意志で留め凝縮させることが出来た。すると混沌に飲み込まれることは少なくなり、更にウィルの動きは俊敏さを増した。
――しかしそれでもダンカンに一撃入れることは叶わなかった。
「判断が遅い! お前は俺より速いが、それだけじゃ駄目だ。俺とお前の力は同じ身体強化、俺の戦い方は参考になるはずだ。教えるのはめんどくせえ、盗んでみろ!」
「はいっ!」
……
修練開始から1年半。ウィルは邪法を使いこなし、鋼毛を刃となす術を操り、加えてダンカン譲りの先読みと格闘術でようやくダンカンに一撃入れるに至る。
「……やったな」
「ありがとうございます! もう一度お願いします!」
「……ちょっと休んでからな。次は負けねえ」
……
修練開始から2年の月日が立った。少年だったウィルは見違えるほど成長し、あどけない顔つきは精悍に、肌は日や雷に黒く焼け、体格は一回り大きくなっていた。
「ウィル、今日で最後だ。明日には王都へ帰るぞ、ジールのじーさんから呼び出しがあった」
「了解です、最後の手合わせ、よろしくお願いします……!」
「待て。……ウィル、今日は本気だしてみろ」
「(見透かされていた……!)……はいっ!」
修練を積むうち、ウィルは自然と力を調節していた。流れ込む混沌に決して飲み込まれぬラインで、ダンカンと釣り合う力を引き出すことを覚えていた。ダンカンはそれに気付いていたのだ。
(本気……そうだ、戦場では相手の力量なんて分からない……本気でやるんだ……!)
ウィルは第3根橋で込めたのと同様に全力で意志を込めた。あの頃とは違う……今なら使いこなしてみせる……!
――樹教国を滅ぼせ!!! 世界樹を滅せよ! 滅せよ! 滅せよ!!!――
突如身体中に混沌が響き渡る! 強い衝動がウィルを襲う。全身が漆黒の鋼毛に覆われ、筋骨が隆起と凝縮を繰り返す。ウィルは人とも獣ともつかぬ呻き声をあげた。
「グああアアぁあアぁぁああ……」
ダンカンは身構え、見守っている。いつでも"覚悟"は出来ている。
「ハアッ……はぁっ…………いきます」
ウィルはそう言うと天高く翔び上がり、ダンカンの視界から消えた。
(どこだっ!)
ダンカンは周囲に注意を巡らす。瞬間、頭上から漆黒の鋼の刃が激しい風切り音を立てて無数に降り注ぎダンカンの周囲を覆った。刃はいとも容易く地に深く刺さっている。
(……動けなかった……この俺が)
気が付くとウィルはダンカンの目の前に降り立っていた。凝縮した筋骨の密度はどれほどか、ダンカンは計り知れない質量と威を感じ、敗北を悟った。
「……カンパイだ。よくやったな」
するとウィルの体毛はもとに戻り、その場に座り込んだ。同時に、ダンカンの周囲の刃は普通の体毛に戻りパラパラと風に消えた。
「ダンカンさんのお陰です、ありがとうございました……」
……
こうしてウィルは2年の修練を経て邪法を修得した。ダンカンと共に王都へ戻り、賢者ジールの自室へ向かった――





