不幸な少年バドラック
これは世界樹と星を巡る時空を超えた物語。
舞台は古代の不幸な少年バドラックから始まる。
少年バドラックは、とにかく不幸だった。
物心ついた時には両親共に亡く、雑草の生い茂る野原で1人佇んでいたのが思い出せる最初の記憶だった。
あてなく野原を進み集落を探しては助けを求めたが、なぜかバドラックのいるところには極端に局地的(もはや局人的)な天災が起きたので、その度に追放され、また別の集落を探して歩いていく。
7歳の時には住む家が落雷で焼け落ち、9歳の時にはバドラックの猟犬だけが何匹も病死し、11歳の時には豪雨による洪水でバドラックの家だけ遥か下流に流された。
バドラックは、それでも歩いた。野を行くうちに体は鋼のように強くなり、心は柳のようにしなやかになっていく。
あまりに多い天災に、自分は大地に試されているのだと思うこともあった。それが事実だとすれば、大地は自分を試し、何を期待しているのか、自分は何を為すべきなのか。
17歳になったバドラックは、天から降る小さな星が自分に向かってくるのを見つけ、運命を悟った。バドラックの時はそこで止まったが、この物語はここから始まったのだった。