採掘王ディグ・ディガーの終生
ディグはセトラを連れ北大陸へ。
大地の声に従い穴を堀り続けるディグの章、ひとまずここに完結。
「こんな所を通って大陸を渡ったのね……」
ディグとセトラは第2根橋近くの海底洞穴を通り、北大陸へ戻ると、街道を避け、両腕を服で隠し大陸中を流れ歩くことにした。何しろ1人は樹教国を追われ、1人は魔族、まして2人とも体格が大きく目立つ風貌をしている(特にセトラはすらりと高い背に他を寄せ付けない美貌で、衆目を集めるであろうことはディグにも容易に想像できた)ので、人目を避けて穴掘りの旅をすることにしたのだ。
「ここが北大陸……豊かなところね……」
北大陸に広がる広大な緑を目にし、セトラが物憂げに呟いた。
「ああ。その象徴が世界樹さ、あんなにでっかい木は他にない。同時に恐ろしくもあるが……」
「北大陸の人間が世界樹を怖がるなんて、変わった人」
「今さらか?」
「そうね、今さらね……ふふ」
セトラは敵地にいることも徐々に忘れ、引き続きディグと共にいられることを素直に喜んだ。
……
その後ディグとセトラは10年かけて北大陸中を周り、穴を掘った。南大陸で見つけた前時代の遺跡に酷似した遺跡や、古文書、絶滅した生物の化石、そして数々の鉱脈を見つけた。その功績に、やがてディグは"採掘王"と呼ばれるようになり、2人は魔族と疑われる心配もなくなり、堂々と穴堀の旅を続けた。
ディグとセトラは5人の子宝に恵まれたが、5人目を宿した時にセトラは病に臥せ、旅が出来なくなってしまった。そこで北大陸の西の果ての山奥の小さな村にひっそりと住み、セトラと赤子を家に残し、そこを拠点にディグと上の4人の子で穴堀をするようになった。
やがて、ディグはどこを掘っても同じ声が聞こえるようになった。
――深く……深く……もっと深く……――
ディグは声に従い、より深く掘ろうとしたが、どこを掘っても世界樹の根にぶつかり、それ以上掘ることは出来なかった。ディグの4人の子らは大地の声を聞くことは出来なかったが、ディグに従いより深く掘れる場所を探し歩いた。
晩年になると、ディグは4人の子に子々孫々までより深く掘れる場所を探し穴を堀り続けるよう命じ、村でセトラと末の子と穏やかに暮らしたという――
……
……
……
上空から謎の少女が村を見下ろしている。
「なるほど、これじゃバッドエンドね。何とかしなくちゃ」
呟くと少女は虚空に消えた――
お読みいただきありがとうございました。
これにて第2章、完結です。第2章は今後の物語へ繋がる地盤のような役割の章です。章が進むに連れ本章の伏線が回収されていくことでしょう。
次からは再び姫エマと騎士見習いウィルの時代へ移り、いよいよ人魔大戦は次の段階へ進みます。
第3章もお楽しみに!





