幼女な僕のお見合い
お爺様の葬式は国を上げての大掛かりなものだった。
この国の英雄だったのだから当然といえば当然だろうけど。
お爺様が亡くなる直前、ちょっとした一騒動もあった。
僕が何度も打ち上げた花火のせいで、王都の騎士団がうちに押し掛けて来たのだ。
何度も爆発が見えたので、戦争が起きたのだと勘違いしたのだとか。
騎士団の中には副団長でもあるイヴお姉様と、王宮で法務の仕事をしているフローラお姉様の姿もあった。
あの爆発は僕の仕業だと説明するのは大変だった。
何せライターが超が付くほどの高級品の世界で、あの爆発を起こした魔道具を十歳の子供が作り上げたのだ。
なかなか信じて貰えないので一発打ち上げたら、家族の皆が頭を抱えていた。
最終的には、お陰でお爺様の最後に立ち会う事が出来たと礼を言われ取り敢えずお咎めなしで済んだのだった。
あれから半年後。
僕は今馬車に揺られ、お父様と共に隣の領地へと向かっていた。
「はぁー…」
「アイリス、嫌なのは分かるが相手に失礼の無いようにな」
気分は最悪である。こんな用事さっさと済ませて家で魔道具製作の続きをしたい。
「分かってますけど…私にはまだ早い話ですわ。それにお父様より素敵な方ではないのでしたらすぐ御断りします」
嫌だとはっきりいいながらもお父様を建てる。お父様はこの手の搦め手には弱いのだ。はっきりいってチョロい。
「ん、ごほん!まあ、何だ相手の方も中々出来た人間だと聞いてる。容姿もだが頭もいい、間違いなく次の当主に選ばれるだろう」
そう言いながらも頬が緩んでるのが分かる。やっぱりチョロい。かといってこの事態を回避するのは難しそうだ。
仮にも貴族同士の見合いなのだ、それも形だけでほぼ婚約まで決まっているという。
「そういえば私、相手の名前もしりませんの」
今までがほぼ箱入り娘状態で、いわば社交界デビューは今日が初めてだったりする。
お父様が国のお偉いさんなのは知っているが、他の貴族なんて名前すら知らないのだ。
「レオナルドだよ、スズキ家の」
「は?今何て?」
思わず素で聞き返してしまう。
「だからレオナルドだよ」
「いえ、お父様その後です」
「ああ、スズキ家だよ。うちと同じ四大貴族の」
スズキって、あの鈴木か。
おもいっきり日本の名字じゃないか。
レオナルド・鈴木って…
ヤバい吹きそう。
うわ~ないわ~、マジないわ~。
僕は心の中で健治の口癖で呟いたのだった。