幼女な僕の思い違い
「で、この戦闘の中どうやって向こうに行くつもり?」
目の前では、王国軍とスズキ家の軍が未だやりあっている最中だった。お互い陣形を取りぶつかり合っている。王国軍の前に出る事さえ出来ればなんとでもなるのだが、イヴお姉様に反対されそうで恐い。
「まずは王国軍の前に出ます。それからカノンに敵を押し退けて貰いますわ」
「ええと、それってつまり?」
「正面突破ですわ。行きなさいカノン」
「は?ちょっ!待ちなさいアイリス」
反対される前にカノンに馬を走らせる。僕はカノンにしがみつき、後ろから聞こえる声を無視した。
「風切りの使用を許可します!ですが斬らないように」
「かしこまりました。アイリス様」
風切りというのは僕が贈った刀の魔道具で、記号は『空』と『風』。この魔道具の試し切りで以前100メートル先の木まで切り倒したのだ。それ以降、許可がない限り使用を禁じていた。効果範囲を広げ威力を落とせば切れる事はないのだが、それでも障害物を吹き飛ばすくらいの威力がある。
王国軍の先頭に出たカノンが一閃。それだけで正面の敵が押し退けられ道が出来る。僕は敵からの攻撃を防ぐ為、左右にシールドを張った。直ぐ後ろから続くイヴお姉様の中隊も、シールドを張りながら付いてきている。僕のシールドの劣化版みたいな仕様にしているが、余程の強い攻撃を受けない限りは壊れはしないだろう。
カノンが二度三度と刀を振るうだけで、スズキ家の陣営は完全に二つに割れ、その間を無理矢理突破
。暫くそのまま走り、後ろから敵軍が来てない事を確認した。
スズキ家へと向かう道中、彼の言葉が頭を過る。一族の宿願、そして世界を手に入れると彼は言ったのだ。
一族とはスズキ家の名前の通り、異世界人を祖とした一族なのだろう。異世界召喚による代理戦争は間違いなくどちらかが死んでいる。お爺様の時のような病死は稀だろう。スズキという家名が残っているという事は、彼の祖はその時代の勝者な筈だ。つまり、同じ異世界人をその手に掛けたのだ。
国とは言わず、世界を手に入れると言った。これは、魔界を含む全ての事を指しているのでは?もし、宿願というのが僕が思った通りなら…
もしかすると、僕はとんだ思い違いをしていたのかもしれない。
スズキ家の屋敷へと辿り着く。兵士は全て出払っているのか、外には誰も居なかった。
「イヴお姉様、レオナルドとどうしても話したい事があるのです。出来れば直ぐに殺さず、捕らえてはもらえませんか?」
「抵抗次第では難しいかもしれないけど、なるべく生かして捕らえるようにするわ」
イヴお姉様は連れて来た兵達に屋敷の捜索とレオナルドの捕獲を命じた。
レオナルドを捕らえたとの連絡が来たのは、それから少し経っての事だった。




