幼女な僕と理不尽な姉達×2
それは、何時もの帰り道の筈だった。
学校が終わり、何時も一緒にいる二人の幼馴染みと三人での下校途中、今日帰って何するとか、明日の休みは何処に遊びに行こうとか、多分そんな話をしていたと思う。
何時もと変わらない帰り道。
何時もと変わらない友人達と。
何時もと変わらない日常。
ただ、何時も違ったのは青信号で渡っている子供に、青信号で直進してきた車を見てしまった事だった。
気付いた時には走り出して、代わりに僕が車に跳ねられていた。
身体中が痛い…
頭を強く打ったのか意識は朦朧とするし、血溜まりが出来ているのか、地面に触れている筈の頬や掌に当たる生温く滑った感触が気持ち悪かった。
友人達が何か叫んでるけど良く聞き取れない。
そう言えば今日何するって言ってたっけ?どうせまた悪友達がうちの姉達と結託して、明日の祭で僕に浴衣を着せようとか企んでいるに違いない。
でも、ごめん。明日の祭は行けそうにないや。
次第に気持ち悪かった地面の感触も分からなくなり、僕の意識は深い闇の中へと落ちていった。
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目を覚ますとそこは異世界だった…
いやいや、いくら異世界物のアニメが好きだったとしてもそれはないだろうと、正直思った。
だって見たこと無い部屋だし、そもそも病院じゃないし、じゃあここどこって?混乱している僕の事を微笑ましく見ている女性がいた。
知らない人に抱き抱えられ、より一層混乱が増した。
まさかの本当に異世界?ってか巨人物?
「もう、アイリス暴れないの」
………?・?・?・!!
ああ、ごめん。明日どころか一緒に祭に行くのは無理らしい。
これ、転生物だ。
僕はようやく、優という人間が死んで、アイリスとして生まれた事を理解したのだった。
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そして、あれから時は過ぎ。
「さあ、アイリス!次はこれを着るのよ!」
「まあ!可愛らしいですわ!次はこちらにいたしましょう」
現在、僕は二人の姉により、着せ替え人形にされている。
「もう!イヴお姉様もフローラお姉様も少しは休ませて下さい」
僕の姿を褒めながらも、次々とドレスを用意してくる長女のフローラ。
少し?男勝りな口調で強制的に着替えを要求してくる次女のイヴ。
そして、先ほどから何十着も着替えさせられている僕、三女のアイリス。
「久々の休みだというのに、アイリスが冷たいわ、反抗期かしら」
「反抗期なら矯正が必要だな、フローラ姉様」
普段はおしとやかなフローラお姉様と普段からがさつなイヴお姉様。
まるで正反対な性格の二人なのだが、こと僕に関しては何故か息がピッタリと合っていた。その証拠に二人は手をワキワキさせながら近づいてくる。
「な、なにをなさるおつもりですの?お姉様」
後ずさる僕の足首に飛び付くイヴお姉様。
「今よ!」
掛け声と同時に後ろからフローラお姉様に羽交い締めにされる。
ああ…既に退路は断たれた。
「覚悟はいいわね?」
いや、退路など元より無かったのだ。
歳の離れた姉二人をもって生まれた時点で。
「ちょっ!お、お姉様っ!あははっ!!くすぐったい!」
僕が妹だろうが弟だろうがこの結末に変わりはなかったのだから。
まさにデジャブとはこの事を言うのだろう。
生前、僕には二人の姉がいた。
今と同じように歳の離れた姉達。今と同じように着せ替え人形にされ、反抗しようものなら羽交い締めからのこちょこちょの刑である。
母親に似たのか女顔だった僕を姉達は猫可愛がりし、可愛がりすぎた結果が女装の着せ替え人形だった。
きっとこの転生には、よくあるラノベのように神様という存在が関わっているに違いない。
よくあるチートとかスキルで無双とか、輝かしい未来が待っているはず。
その時、神様から『世界を救え』とかどうとか言われて、僕は神様に『その前に一言宜しいでしょうか?』と言うのだ。
いや、違うと、すぐさま訂正しこう言い直すのだ。
『その前に一発ぶん殴って宜しいでしょうか?』と。




