幼女な僕と下町の聖女
集落の出来事から三ヶ月後。
僕は今、一人の少女と共にあの集落だった場所へと向かっていた。
その少女というのが、集落で助けた子で名前はカノン。今では僕の侍女をしている。
そして、あの集落だった場所はというと。
まあ、なんというかちょっと大変な事になっていた。
「聖女様!」
「聖女様だ!」
集落だった場所に着いた僕は、住民からそう声を掛けられ手を振ってそれに答えた。
集落のあちこちで、民家の改修作業が行われている。改修された民家も既にいくつかあり、良く街で見掛けるレンガ造りの建物に瓦の屋根という、僕から見れば歪な建物だ。
集落を囲んでいたボロボロな柵は今では頑丈な壁に。
畦道だった場所も綺麗に舗装されている。
なんというかまあ、やり過ぎてしまった感が半端ないなぁ。
今やあの集落だった場所は集落ではなくなり、ちょっとした街になっていた。
簡単に言えばバブルが来たのである。
事の始まりは二ヶ月前に遡る。
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うちの屋敷の前で、カノン親子と門番が問答を繰り返している所に、王都から帰って来たイヴお姉様が何事かと話を聞き僕の所に連れてきたのである。
命の恩人である僕への御礼と、カノン自身が僕に仕えたいと言って来たのだ。
最初はその場に立ち会ったイヴお姉様も「それは難しいだろう」と言っていたのだか、僕が試しに自作魔道具でスキル鑑定したところその意見は一変したのだ。
カノン
スキル
・忠義
・忍耐
・器用
・頑丈
・修羅
魔力量
・大
魔力密度
・特大
魔力属性
・風
私が直々に鍛えてやると、イヴお姉様はカノンを半ば無理矢理王都へ拉致し。それを聞き付けたフローラお姉様がでしたら私が教養をと、一ヶ月間地獄の特訓をさせられたのである。
帰って来たカノンに『風』と『空』の記号を使って魔道具化した刀を贈ったのだが…
まぁ、その結果どうなったのかというと。
武装したチートメイドが出来ました。
そして、その一ヶ月の間僕は何をしていたのかというと。
お父様と共に何度かあの集落へ訪れていた。
集落の領主である、リノ・フェルナンドに謁見し僕は彼にこう進言したのだ。
「私の提案する魔道具をここで生産してみませんか?」
それがこのバブルの始まりだった。
まず、畑仕事を円滑にするための魔道具。獣が入り込まないように壁を作る魔道具。そして、治療で使った透明にする魔道具を更に治療に特化した物を贈った。
それから生産するものとしては、魔法より優れたレベルの生活に使えそうな物を作り王都に売り付けたところ、追加注文が殺到するほど爆発的に売れたのだ。
ここで起きた問題が、魔石の数だった。だけどこれもあっさりと解決した。
治療の時、液体流動の魔法で助けてくれた冒険者、名前をグラハムというのだが、その人が大量にしかも格安で売ってくれたのだ。
グラハム曰く、先々代が大量に蓄えていたのだか、今まで需要が無くなかなか売れない、異世界召喚で魔物が出だしたら希少価値が下がる。なら今全部売ってしまえという決断だったらしい。
お金にかなりの余裕が出来て、じゃあ集落を改装しようってなり、それに必要な職人達を大勢うちの領地から派遣したのだ。
その結果が今目の前に広がっているこの光景だった。