幼女な僕と隣の領地
林道を抜けるとその先には集落が見えた。
「ここから先はスズキ領だ」
「なんといいますか、その、あまり活気がないところですのね」
遠回しに言葉を選ぶが、はっきり言えば寂れた集落だった。
家も板を組み合わせただけ、あれでは隙間風も酷いだろう。農業が主なのか広大な畑なのだが、それにしては畑仕事をしている人数が少ないように思える。住民もどこか疲れた表情をしていた。
「ここは農業が盛んなのですか?」
「いや、この領地で盛んなのは鍛治と軍事産業なんだ。王都の騎士団が使用する鎧や盾、剣もこの領地で作られている」
この集落はスズキ領でありながら、その管理は下級貴族に任せているのだとか、それにこの地域は国を囲む外壁のすぐ近くで、外から潜り込んで来た獣による被害もあるのだとか。
古い外壁だからどこかしらひび割れて出来た穴だとか、地面を掘り進んだりして潜り込んでいるのかもしれない。
「その割には、ここを守っているようには見えませんわ」
たしかこの近くには外壁と外を繋ぐ門があって、更にその先には今はまだ閉ざされている魔界への門がある筈だ。
あと2年くらいで異世界召喚が行われ、開いた門を通じて魔界の人々との交流が始まる。
異世界人に代理戦争をさせ、当の本人達は次の50年を生き抜く為、物資や技術の交換をする。
だけど、魔界からくるのはそれだけではない。
魔物も門を通って襲ってくるのだ。つまり、この集落は最初に犠牲になる場所なのだ。
集落を抜けて更に一時間ほど進むとスズキ領の首都が見えて来た。
ちゃんと門番がいる関所を通り町中を進んで行く。
鍛治や軍事産業が盛んと言ってた通り、町中では全身鎧を来た兵士が巡回し、そこら中から鉄を叩く音が聞こえた。建物もレンガ造りの瓦の屋根が多く、煙突から黒い煙が上がっている。
それを見て僕は顔を顰めた。
この環境破壊も、魔界が肩代わりしていると知っている筈なのに、今は平和だからいいとか、自分達さえ良ければいいとか考えているのだろうか。
その考え方が世界を滅ぼしかけた原因だろうに。
街中の活気はうちの領土よりいいのかもしれない。だけど先程の集落を見たせいもあり、この領地はあまり好きになれそうになかった。




