6 仕事を選ぶのは大変
「まず、1つ。神官。大神殿で募集されているわ。他の大地へと大神殿の分所を作る計画みたいね。要は、他の神殿で働く巫女さま的な感じかしら。年齢不問、経験不問、スキル、前職不問。処女であり、容姿が18歳以下であればOK。どぉ!?」
「ど、どぉ?っと言われても、・・・巫女、いや神官ですか?」
神官って言ったら、この階級制度のど真ん中だし、絶対にレアみたいな子供がうまくいくわけない。
女であればいい。みたいな適当な募集概要もちょっと・・。嫌かな。
なんか、いじめられそうだし。
「一旦、保留にしてください」
「そぉ?それじゃこっちは?」
一枚の紙が差し出される。
「一緒に魂を浄化しましょう!回収された魂をきれいにするお仕事です!。こっちはどぉっ!?」
これって。・・・。
「これって、魂の回収箱の行き先なんですか?」
「そう!レアちゃんがいつも回収してくる魂!それを今度は裏方さんとして綺麗に浄化するお仕事!。今なら職業訓練期間があって、天界から助成金も出ちゃう!」
「でも、そんな難しそうなこと、レアみたいなのができるでしょうか?」
「だぁいじょうぶ!!ここ見てっ!経験不問!やる気がある人優遇!夜勤交代制。繁忙期手当有り!残業は毎月平均20時間。人間界へ行ったことある方優遇!お休みは毎月6日と安定的な・・・」
「ままま、待ってください!!そ、そんなに忙しいんですか?あの魂の回収箱、そんないつも混んでませんけど・・・。むしろ、今よりもかなりハードワークなんですけど・・・。」
「そりゃそうよ!女神でも豊穣の女神なんて、一流の女神の家系ですもの。週休2日、長期休暇有り、仕事は変形7時間。残業はゼロ!残業した場合も後日調整で早あがりができる。神の仕事と私たち神の中でも下位のグループは扱いが違うのよ」
「は、はぁ・・・。」
確かに、そう言われると、今の求人を見ているとだいぶ今の仕事の方が楽。
でも、なれたら楽しいのかな・・・。
うぅ~ん。
「保留にしとく?まだ、あるし」
「すいません」
軽い溜息をついて、お姉さんは最後の1枚を私に出す。
「おいっ!こんな求人いいのかよ!?前職、ランクA以上の神のみって、こんなとこにいないだろ!?」
お姉さんが口を開けたのと同時に、隣の席に座っていたおじさんが声を上げた。
手に持っているのはレアが見ているのと同じような紙。この人も、仕事を探しているようだ。
ちなみに、ランクA以上、というのは大伸ゼウス直属の神々、もしくは12神将クラス。更には、人間界のエレメントを司る神々、もしくはそれに属するもの。
火の神はAクラス。星の神はBクラス以下。っていった感じになる。
「すいません、依頼元の要望なのでそれは変更できかねます」
頭を下げる様子を見ると、働くって大変なんだなぁ。と改めて思う。
でも、どんな仕事なんだろう。よっぽど難しいのかな。
「ごめんね、レアちゃん。続けるよ?」
「は、はいっ!こちらこそ、すいません」
「たまにね、こんなこともあるのよ。仕事が少なくてね、働きたくても働けない人が多くて・・・。それじゃ、3件目ね、最後は、精霊騎士です!」
「き、騎士・・!?」
「大神殿で働ける仕事で、剣術経験者であれば可能なんだけど-」
「ごめんなさい!レアには無理です!」
お姉さんの声を遮って、レアは声を上げた。
剣術の稽古も無理なのに、精霊騎士なんて絶対に無理。
怖いし、お稽古やだし、大神殿で働くなんて絶対にイヤ。
「なんか、ごめんなさい。レアが何もできないのに変に期待してきちゃったから・・・」
「ふぅ・・・」
3枚の紙を見比べながら、お姉さんが静かに溜息を吐いた。
仕事って、もっと簡単になれるとか思ってたのに、こんなにいろいろと壁があるんだな。
資格とか、できることとか、前に何やってたとか・・・。
(前に、・・・何をやってたか?)
既に空席のとなりの席。さっきまで不機嫌そうにしていたおじさんを思い出した。
「あのっ!」
わたしは、さっきの隣の人のことを思い出した。
前職、Aランクの神。
豊穣の女神は大地の女神の直結。つまり、Aランク。
「さっきの、隣の人が見てたAランクの神じゃないとできないって言ってたヤツ、見せてもらませんか!?」
「これ?」
となりのカウンターに座っていたおにいさんが身を乗り出して紙を見せてくれた。
「それ、あまり人気がないんだよ。もう長いこと募集されているんだけど・・・」
『君も人間界で活躍しませんか?
経験はなくても大丈夫!人間の命を司るお仕事です。親切丁寧なスタッフが教えます。神職なので、前職Aランクの神が必須条件です。年齢、性別問いません。詳しい条件は面接にて。
まずは、死神協会まで』
昨晩見た、死神さんのことが頭によぎる。
「わたし、これやってみたいです!」
お姉さんに差し出した紙は、死神募集の紙だった。