2 名言?一生上がり。
死神さんは、少しすると手を合わせておばあさんに一礼している。
それが意味するのは、なんだろう?。
「お、終わったんですか?その、選定」
「うん、終わったよ。このおばあさんは、満足したみたい。先に亡くなった旦那さんのところに逝きたいって願っているようだよ。死に方もいたって平和な老衰。事故や、病気で苦しいわけでもないし、満足いく人生だったみたいだ」
「そ、そうなんですか」
そんなこと、魂を天界に連れて行くときレアには一切分からないのに。
死神さんって、すごいんだなぁ。
レアが上から見ていると、なにやらローブの下をゴソゴソ・・・。
「ちょ、ちょっと!?何やってるんですか?」
死神さんは、おばあさんの枕元でハサミをチョキチョキ。
両手に持って今にも切りつけようとしていた。
急いで死神さんの両手を掴んで止めるけど、な、なに・・?あれ。
「あ、あぶないよっ!!いきなりなにするんの!?」
「あれって・・なんですか?」
死神さんの手を掴むと、レアの瞳にはさっきまで何もなかったのに、光る、真っ白の球体があった。
それはおばあさんの頭上でふよふよと浮かんでいて、細いヒモが頭と繋がっている。
死神さんは、これを見ていたんだと思う。
でも、さっきまで見えなかったのに・・・。
「ダメだよ、仕事の妨害したら。怒られちゃうよ?それに・・・。見えてるの?」
「見えてるって・・・このフワフワですか?」
「そう、その、ふわふわ」
顔を見合わせて、お互いの視線は目の前のふわふわに向かった。
うん、レア、死神さんと同じものが見えてるみたい。
「死神にしかない力なんだけどね。僕に触ったからじゃないかな。ほら、離して。早く終わらせないと」
「す、すいません。」
慌てて手を離すと、さっきまで見えてた光る球体は見えなくなった。
そして、死神さんは右手に持つハサミをゆっくりと伸ばしていく。
チョキン・・・。
ふつうに、ハサミで何かを切った音がする。
その瞬間、おばあさんの頭上。さっき光るふわふわがあった場所からゆっくり、光る球体が風船のように浮かび上がってくる。それは、今度はレアの目にもはっきりと見える。
いつも天界へ連れて行く魂だった。
「はいっ!一生上がり!そんじゃ、おさきにぃ・・・」
死神さんは部屋の隅にある影に立つと、その姿をブクブクと影の中に消していった。
死神さんって、そんなところから帰れるんだ・・。
「おばあちゃん!おばあちゃん!!」
死神さんがいなくなったあと、完全に息を引き取ったおばあさん。
残された家族は、どこでも悲しそうな顔をしていた。
もちろん、中には悲しまれない人もいたけど・・・。レアは人間の事情に詳しくないのでそのへんのことはよくわからない。
(もし・・死神さんがこの魂を生き返らせたら、どうなってたのかな?)
魂を手にしたレアは、魔族に襲われる前に天界へ帰ることを決意し、窓を開けてそのまま空へ飛び立った。
きっと、あの家の人はいきなり窓が開いたから驚いたと思うけど・・・。