22 死亡ルートの変更
「ど、どうしたっていうんですか?いきなり走り出して!?」
小柄な割に、死神さん、足、早いんですね。
レアが遅いだけ??
目の前にいた死神さんが随分小さく見える。
きっと、死神さんにレアの声は届いていないだろうな。
ズズ・・ドドドド!!
急に前の方、死神さんが走っていった方で凄まじい轟音が響き、それと同時に目の前に凄まじい勢いで土埃が襲いかかってくる。
その勢い。土埃にたまらずしゃがみこんでローブを使って顔全体を隠してその場にうずくまってしまう。
(死神さん・・・大丈夫かな。まさか、埋もれてなんかいないよね)
「大丈夫かい?」
どのくらいローブで顔を隠してしゃがみこんでたのかな。
目の前には黒いローブが白と茶色の土埃に汚れた死神さんが立っていた。
まだ坑道の中は粉塵が舞っているけど、ここでうずくまっているわけには行かないし、レアもローブをマスク替わりにして立ち上がる。
「大丈夫ですっ!死神さんも、無事で良かったです。ぺしゃんこになっているんじゃないかって心配しました」
「死神なのに、死んでほかの死神の世話にはなりたくないね。危なかったけど・・・。他の道から迂回していこう。まだ、急げば間に合うかも知れないし」
「はい!」
間に合う?の言葉に疑問を感じながらも、歩き出した死神さんの後ろをついて行くレア。
視界が悪くなって、さっきのように走っていけないもどかしさが、死神さんの後ろ姿からにじみ出ている。
「あの、死神さん?」
「なんだい?」
「さっきから、やられた、とか。間に合うていうのは・・・??なにか心当たりがあるんですか?」
「・・・」
レアの質問に死神さんは無言で答えている。
喋りたくないのか、あまり話すべき内容ではないのか?。
いつも陽気な死神さんがこんなふうだと、なんか何も言われてなくても怖くなっちゃう。
「今回の通告。この予言は誰がしたものだい?」
「ここにきた理由ですか?アテネ様からの予言ですよね??」
先を歩く死神さんが静かに話してくれた。
「そう。世界の運命を決める者。と言ってもいいほどの権力者。運命の女神アテネが予言したんだ。それが外れるなんて、よほどの偶然が重なり合わないと外れることはない。」
「よほどの・・偶然ですか。その人は死なないで済むならラッキーですね!」
「そんな甘いものじゃないんだよ」
「死なないわけじゃないんですか?」
「なんで、死の運命から回避できると思う?」
「ラッキー・・・だから?ですか?」
「・・・」
え?また静かになっちゃうんですか?
運命の女神に死を約束された人が生有る道へ進むことが許される。
そんなの、なにかいいことして認められてラッキー!とかかと思ったのに。
違うのかな?
「死の道を変えられたんだ。本来。この坑道で死亡事故が起きるはずだった。でも、運命の女神の予言を狂わせ、違う坑道で死亡事故を起こした。今回は1人が死ぬはずだった。さっき、僕らの前を担架で運ばれてたよね?」
「う、うん・・・」
「本来、あの中の誰かが死ぬはずだった。でも、死ななかった。運命の女神に逆らって、死亡者リストを書き換えた奴がいる。そしてそいつは、ここではない別の坑道で落盤事故を起こした。そして、より多くの人間を殺したんだ。」
突き放すように。
目の前に誰かがいて、口喧嘩でもしているかのような口調で死神さんは誰に言うでもなく怒りの声を上げた。
レアは、その声に驚きはしたものの、目を丸くして死神さんの言葉を黙って聞いてた。
目の前に、坑道の入口が見える。
外の光がまぶしく思える。
死神さんは外の光を受け、足元がはっきり見えると再び走り出した。
レアは、そのあとを追う。
「アテネの邪魔をするのは闇の王バルバトスしかいない。そしてそれに従う冥府の神、アウシル。きっとヤツがこの人間界に手を伸ばしているだ。」
いつになく真剣な死神さん。その死神さんは『あぁ、この人は死神だ』と思うほどに怖く感じました。
坑道を出ると、さっきとは比較にならないほどの人間たちが少し離れた坑道の入口に集まっていました。
死神さんは何も語らず、走り続けるのでレアもそのあとを一生懸命ついていくだけです。




