4話 初戦闘
――――ドーーーーーン!!―――――
ウェタンデの町を大きな揺れが襲った。
「なんだ!なんだ!」
町の中にいたプレイヤー、村人たちが一斉に震源を見に来る。
「お、おい。でっけー遺跡が移動して来てんぞ…。」
「どうなってんだ…。なぁおい、疾風迅雷のクラマスさんよ。」
と、皆を町の外に出ないようにしていた霧心が問い詰められえる。
「いや、これはだな。知らないというか、知ってるというか…。」
「どっちなんですか、それは…。」
疾風迅雷の参謀が呆れる。
実際、霧心は心から大したことは聞いていない。
こんなことならちゃんと聞いておくんだった。
と、後悔した顔をした霧心の下に葵が近寄る。
「霧心さま。凜雅様がお呼びです。」
「お、おう。分かったのだが、この事態をどうにかしないことには。」
「左様ですか。では。」
というと葵は、
「お集りの皆さん、ここは聖なる遺跡。凡人の触れていい領域じゃない。よって、去れ。」
と大声で警告した。
「・・・。」
「いや、葵さん、それでは無理かと…。」
そして予想通り、
「あははははは、聖なる領域?どこがだよ。てめーみたいな召使姿のやつが出てきたところがか?笑わせんな。」
「笑わせるつもりはなかったのですが。」
「あぁん?あんま調子乗んなよ。知ってること全部言えや。この世界から出れねーのもてめーの仕業か?」
「調子に乗っているのは、あなた様方ですよ。」
「なんだって?雑魚の分際でデケー口利いてんじゃねーよ。」
その場にいたプライドの高いプレイヤーたちは武器を取り出す。
「雑魚ですか…。ハルシャレインの誇り高き主様に創られた私が雑魚ですか。見上げた根性です。」
「主?創られた?何のことか知らねーが、痛い目を見たいみたいだな。」
「あなた方では私には遠く及びません。そして我々より遥かに強い主様にも…。」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ!!」
近距離タイプのプレイヤーが一斉に仕掛ける。
「いっぺん死んどけや!」
戦士たちは葵に向かって剣や斧を振り下ろす。
が、葵は焦る様子なく、
「甘いですね。切れが足りない。そして殺意が足りない。」
――――ブワァッ――――
その場にいた全員の毛が逆立ち攻撃に躊躇が見えた。
葵の許容しきれない殺意が全員を喰らいつくさんばかりに襲ったのだ。
「なめてんじゃねーよ!」
さすが戦士というべきか、戸惑いを捨てて襲い掛かる。
「少し良くなりました。が、足りない。」
と言って葵は両手で襲ってきた二人の大剣を受け止める。
「なっ…。」
「嘘だろ…。」
それを見た他のプレイヤーは攻撃を止める。
「う、嘘だろ。俺たち戦士のレベル90だぞ?片手で止めれるはずが…。」
「だから甘いというのです。敵の力すら見極められないものが何もわからないこの世界で生き抜けはしませんよ。」
というと、大剣を手放す。
騒動を見ていた霧心の元に凜雅と紫苑がこそこそやってくる。
「いや~、よかった。葵に行かせて。」
「おいおい、なんてもん動かしてんだよ。せめてなんか説明を…。」
「それは心に言ってくれ。にしても、あれだな。思いのほか暴れてないな。」
「そうだよねぇ。もっとすごいことになってるのかと思ってたよぉ。むーちゃんのおかげだねぇ。」
「いやいや、みんなも我慢してんだよ。」
「ところで、アンナと錬斗は?」
「この辺にいるはずだけど。」
「そうか、じゃ、また今度でいいか。」
「コール:葵。」
「はい。葵でございます。」
「俺だ。そろそろ引き上げるぞ。」
「わかりました。この騒動はどうしましょうか?」
「霧心たちに任せよう。」
「わかりました。」
「というわけだ。霧心頼んだぞ。あと、錬斗とアンナによろしく。」
「お、おいちょっと…。」
霧心が全部言い終わる前に凜雅と紫苑それに葵は消えていた。
「マジかよ…。」
霧心は苦笑いで武装したプレイヤーたちを見ていた。
ハルシャレイン 第八階層
心たちの元に戻った凜雅たちは八華たちと喋っていた。
「それにしてもいいのですか?こんなに時にこんなに遊んでしまっていて。」
と、ミーアが不安そうに凜雅に聞く。。
ミーアは今にもモンスターやプレイヤーが攻めてくるのではないかと危惧しているのだ。
「なにをおっしゃいますか。あなたはいつもライオンに乗って遊んでいるではありませんか。」
リアンナがミーアをからかう。
怒ったミーアとその使い魔のライオンのガジュマが殺意を放つ。
「遊んでるんじゃないもん。この子は私の分身!リアンナなんて喰っちゃうんだから。」
「あら、やるとおっしゃるの?いいわよ?受けて立つわ。」
ふたりが臨戦態勢に入る。
「やめなさい。」
咲渦が止める。
「仲間同士の対決は許しません。ミーアもリアンナもほら。」
といって、飴玉を渡す。
「あ、ありがとうございます…。」
ミーアが申し訳なさそうに受け取る。
それとおなじくしてスティーブがやってくる。
「凜雅様、敵襲でございます。モンスターです。数は100匹ほどです。」
「な!?敵襲?ここを嗅ぎつけられたのか?」
「はい、そのようです。結界が効いていないわけではないのですが、何をもとに嗅ぎつけたのか…。」
「うって出ようじゃん。」
そういって、早速武器の筆と巻物を取り出す礼渦。
「おう。じゃ、ミーアとクレアついて来い。」
「はい!」
「ハッ。」
「初戦闘だが、無茶はするな。数もそんなにいないから苦戦はしないと思うが。」
「もちろん!!」
「じゃあ、ほかのみんなは、それぞれの階層に戻ってくれ。今日はもう休んでいいぞ。」
「はい。分かりました。」
「それと、今回は俺と礼渦が行くから、見ておいてくれ。」
「うん。りょーかーい。」
全員が転移を使って部屋からいなくなった。
夜8時 ハルシャレイン大遺跡 第一壁 上。
「なかなか多いな。」
「はい。マイロード。ですが、装備からしても下級共にございます。」
「じゃ、ちゃっと終わらせようぜ。」
「あぁ、気をつけてな。」
「オーケー!!」
というと礼渦は飛び降りていった。
「スティーブ。原因を探しておけ。」
「はい。」
そして、凜雅に続いて四方へクレアもミーアも飛び降りる。
―――タン!!―――
華麗に着地した。
「おっし!いっちょ行きますか!!」
そう声を上げ、剣を二本抜いた凜雅は敵に突っ込んでいった。
「魔力増幅魔法:マナライズ!」
「鋭利化魔法:キーンブレイド!」
「守備強化魔法:ブラックアーマー!」
「反射反撃魔法:ローズウィップ!」
魔法が自然と使えている自分に驚きながら、舞う様に戦う凜雅。
敵の攻撃をかわし、敵を一撃で切り伏せ、返り血を浴びながらも戦っている。
「凜兄、こいつら血吹き出すんだけどーー!!」
遠くから礼渦の声がする。
「おう、ちょいグロテスクだな。」
「洗濯機あんの?この世界!!」
「しらねーよ!!川じゃねーの!!」
「マジかぁ!!」
文句を言いながらも楽しそうに戦う二人と、淡々と敵を消していくクレア。
ミーアはガジュマの上に座っているだけで、下のガジュマは美味しそうにゴブリンを食べている。
「もしかして俺たちこの世界でかなり強いんじゃね?」
不安要素だった一つが薄らいだ瞬間だった。
この世界は圧倒的に情報不足で、敵の強さが分からない状態だった。
が、一撃もくらうことなく戦っていた凜雅たちは圧倒的優位に立った気分だった。
この自信はつまり自分他のよく知っている強さだということ。
そしてその世界で最強であった凜雅たちは、負けることがないという自信だった。
「いける!いけるぞ!」
凜雅が確信すると同時に敵の殲滅が終わった。
「余裕だったけど、血が噴き出すのだけは慣れだな。」
初戦闘を終えて凜雅たちはハルシャレインに戻ったのだった。
もう少し臨場感出せるように頑張ります。
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