プロローグ 決意
プロローグ最終話です!
「凜雅様、大広間にございます。」
魔法が使えていることに驚きながらも、
目の前にいるみんなと再会した。
「おぉ、みんな!」
と喜ぶまもなく、みんなの警戒心に気付く。
「凜ちゃん、後ろのおっさんは誰?」
「お、おっさん!?」
霧心をおっさんと呼んだ紫苑がウォンドに手をかける。
躊躇なんてするつもりのない顔をしている。
「待て待て、早まるなよ、紫苑。敵じゃないよ。」
「なんでそう言えるの?今の私たちに敵か味方なんて見分けることなんてできないのよ?」
確かにその通りだ。コマンドもマスター権限も使えない俺たちにとっては味方でないもの危険分子でしかない。
「もしかしてさ、凜雅と同じクランだった人?」
心のナイスなタイミングの助け船に縋る。
「そう、元むき身の切り込み隊長こと霧心だ。」
「紹介にあずかりました、霧心です。」
「ちなみに、彼は20歳で俺たちより一つ上なだけで、おっさんて年齢じゃねーぞ」
と軽い紹介をすると、紫苑は警戒態勢を解いた。
「てか、凜兄、この砦に連れてきてどういうつもりだよ。」
「全く、礼の言う通りよ。どうするつもりだったのよ?」
と無計画さを暗宮姉弟に非難され、紫苑も心も呆れた顔をしている。
「それはそうだが、霧心は信頼に値する人だ。なにかあったら俺が責任をもって対処する。だから、な?」
「わかった。凛ちゃんがそこまで言うなら信じる。」
「ありがと。それはそうと、この状況はどうなってんだ?」
と今の状況の解析と解決方法を見つけなければ。
「心、分かってることを教えてくれ。」
「うん。んじゃ、霧心さんも聞いてください。」
「お?いいのか?いいなら聞いていく。」
「どうぞ。では、現時点で分かっていることを報告します。スティーブ!」
と心が呼ぶと、砦の執事のスティーブが柱の陰から現れた。
「と、このようにゲームの頃コマンドで使役していたNPCは口頭もしくはコールで動かせます。」
「てなると、俺たちを迎えに来た葵もか。」
「はい、。それと同じ方法で魔法やアイテム、装備、スキル、などのコマンドで行っていたものが口頭で行えるようになりました。」
「口で全部か。」
「全部かどうかは分かりませんが、まずそれが報告の一つ目です。二つ目はこの世界についてです。この世界はたぶん、アトランティスダリアを模したもの。」
「模したもの?」
心から先に聞いていたみんなは理解した風だ。
「はい。スティーブやミーアの調査によると、この世界の形は調査した範囲では変わりがないとのこと。しかし、大きさは少し違うらしい。」
「形はいっしょということは、町やダンジョンも変わりがないと思っていいのか?」
「はい。この近辺のダンジョン、および町に変換はないし、モンスターの生息地に変化もないとのこと。だけど、不確定要素が多すぎてなんとも。」
黙って聞いていた霧心が手を挙げた。
「はい、霧心さん。」
「その不確定要素ってのは、つまり、NPCが意志を持ち始めたことが原因なんだろ?」
「それだけではありませんが、大方そうです。敵も意志を持っているのでは?ということです。実際、一般プレイヤーの敵であるはずの砦の使い魔たちは意志を持ち、会話もできます。」
俺たちを迎えに来た葵も、さっきからいるスティーブもゲームの設定ではゲームマスター以外の敵である。
しかし敵であるはずの葵と霧心は会話をした。敵という認識はないということ。
「今お伝えできる確定の情報は以上です。」
「おう、ありがとさん、心。じゃ、その情報をふまえて、俺たちが決めるべきことはとりあえず一つだ。」
「もちろんよ!」
みんなの目が輝いている。これは間違いなく悪だくみをしている時の目だ。
「脱出の目途が経っていない今。この世界でどうするかだ。選択肢は二つ。聞くまでもないが、とりあえず。」
みんなで考え、みんなで決める。それが俺たちの決め方。
「一つめの選択肢、脱出に全力を尽くす。」
「二つ目の選択肢、楽しむことに全力を尽くす。」
「二!!!」
全員一致でニだった。
「満場一致だな。楽しむ、それが俺たちの答えであり、決意だ。そしてその最中にできる限りを尽くして脱出を試みる。できなかったときは、またその時だな。」
これが、俺たちゲームマスターと元クラメンの霧心の決意。
本当にゲームを愛し、この地に夢を見た者の決意。
そして、この決意を裏切らない世界であることを俺は願う。
次回から本編?というより征服譚の始まりです!
是非ここまでの感想を。