プロローグ 再開と事件
まだプロローグ続きます。
いつものように転移アイテム使って、ウェタンデの町の外に着地する。
しかし、町はいつもと違う様子だった。
町は荒れに荒れていた。というよりも、すさんでいた。
泣き崩れているもの、大声を上げているもの、喧嘩しているもの、必死に手を下から上と動かしているもの。
何が何なのか理解ができず、俺は町の中心へ歩く。
何人かに話しかけてみたが、話は通じず、さらには、殴りかけられた。
「お、おい。まさか、お前あの凜雅か?」
そう後ろから聞こえてきた。
振り向くとそこには見知った顔があった。
「お前は、もしかして霧心か?戻ってきてのか!」
「あ、あぁ。戻ってきたよ、今日。けどなんなんだこれ?」
霧心は消え入りそうな声で言う。
「何のことだ?もしかしてこの騒動の…」
「そうだよ!知らねーのかよ!出れねーんだよ!」
「出れない?町からか?それなら俺さっき…」
「は?何言ってんだよ。この世界からだよ!」
俺は想像だにしていなかった答えに唖然とする。
「今なんつった?」
「だから、出れないってんだよ。」
「そんなはずは!」
「確認してみろ!!」
そういわれて、俺はすぐに手を上に上げる動作、メニューを開けようとしたが開かなかった。
それから何度も何度も開けようとした。
次第に焦りが大きくなる。
「ど、どうなってんだ?」
理解の範疇を超えた現象に何もできなかった。
何が起こっているのかわかんなかった俺は、すぐに心に連絡を取ろうとした。
が、
「メニュー出せなきゃコールできねぇ!!」
ということだ。
コールとは、いわゆるゲーム内電話みたいなもので、どんなに離れようと関係なく通話できるシステムだ。
あれこれ悩んでると、突然頭に直接、音が流れ込んできた。
「凛雅様。至急、砦までお戻りください。大事件とのことです。」
「だ、誰?」
知らぬ声と謎の情報に困惑しながら、聞き返す。
「わたくし、楓でございます。」
「……………」
……………。
「大丈夫ですか?」
「え、あ、えっと、次女の?」
「そうでございますが?」
「えっと、よくわかんないんだけど、とりあえず、どやって戻んだよ。」
「指輪をお使いください。」
「指輪は使えるのか。」
「はい。では、のちほど。」
とそれきり不思議な感覚の通話はなくなった。
そして、横で不思議なものを見る目でこちらを見ている霧心がいた。
事情を呑み込めていないようだ。
「えっと、そのなんだ。ちょっと仲間のとこ行くわ。」
「いや、待て。説明しろ。」
ものすごい鋭い三白眼でこっちを睨んでいる。
そうは言われても、俺の本当の役職を明かすのは得策ではない。
「なんの説明がほ、ほしいんだ?」
「まず、どうやってコールしたのか、それと、指輪ってなんだ?」
思ったより軽い質問だった。
「わかった。んじゃ、人のいないところへ。」
と言って進むとついてきた。
人気のないところにつき、どう説明するか考える。
そして決まった。
「コールの件は後だ。」
「は?」
「先に指輪について教える。」
「お、おう。」
「掴まれ。早く。」
「おう。って大丈夫だよな?」
「安心しな。殺されるとしてもう少し先だ。」
指輪を手にはめ、
「転移、ハルシャレイン!」
と唱えると同時に、ハルシャレイン大遺跡砦の門前に着地した。
「ど、どうなって…。てか、どこ!?」
「ここから先、見たものは他言無用だ。でないと、ほかの四人が何するか、分かったもんじゃないからな。」
「わ、分かった。死んでも口にしねーよ。」
「んじゃ、ついてきな。ここが、ゲームマスターの砦、ハルシャレイン大遺跡だ。」
頭に直接響く声って一度味わってみたい。