ドンぎつね
これは私が小さいときに、白旗の湯のヌシというおじいさんから聞いた話です。
昔々草津の山奥にイタズラ好きの狐ドンがいました。
ドンはひとりぼっちでしたが、昼でも夜でもネット上に姿を現しては投稿小説サイトを荒らしたり、感想欄に火を付けたりとイタズラばかり働いていました。
ある秋のことでした。台風が来て二、三日雨が降り続いたその間、ドンは外へも出られなくて家でネットを見ていました。
ふと投稿サイトを見ると、自分の小説に感想がついています。
「ははあ、香ばしニキだな」と、ドンは思いました。
ドンはいつものように煽りコメントを投稿して、香ばしニキの過去作を掘り返していました。するとその間に香ばしニキが
「ろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむろむ」
と、どなりたてました。
ドンはびっくりして、そのとき書き溜めていた煽りコメントを投稿してしまいました。
それから香ばしニキは追いかけては来ませんでした。
十日ほど経って、投稿サイトを覗いてみると、皆が騒がしくしています。
「何だろう、炎上かな。炎上ならクソコメや荒らしコメが付きそうなものだ。それに第一、お宮にヲチスレが立つはずだが」
こんな事を考えながら、香ばしニキの家の前へ来ました。
その小さな家の前には大勢の人が集まっていました。
「ああ、葬式だ」と、ドンは思いました。
「ははん、死んだのは香ばしニキの友人だ」
香ばしニキの数少ない友人が投稿サイトを卒業してしまったようです。
その晩ドンは考えました。
「香ばしニキは承認欲求を満たすために、友人に読んでもらうためのクソ小説をこさえていたんだな。友人は普段から辟易していたのに、俺の煽りコメにも巻き込まれそうになったから辞めちまったんだ。これじゃあ香ばしニキが新しい燃料を投下しなくなっちまう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった」
それからドンは捨て垢で、香ばしニキへ応援コメを残して行くようになりました。
ドンは煽りコメのつぐないに、まず一つ、良い事をしたと思いました。
月の良い晩でした。香ばしニキは活動報告で独り言をつぶやいていました。
「おれは、このごろ、とても不思議なことがあるんだ」
「友人が死んでから、誰だか知らんが、俺にコメや評価なんかを、毎日毎日くれるんだよ」
そのとき本垢でログインしていたドンが、うっかりコメントを残してしまいました。
「ドン、おまいだったのか。いつもコメをくれたのはAAAAAAAAHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!」
香ばしニキはドンをお気に入りユーザー登録しました。
ドンは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずき、相互お気に入り登録をしました。
「バレちまったら仕方がねえなAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ここからが本当の煽りあいバトゥウウウウウウウウUUUUUUHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!! 俺達の物語は感想欄を超克して、みんなみんな炎上し尽くすまで終わらないぜイエエエエエアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!」
ここで話し疲れてあくびをしたヌシの涙がすべての源泉となり、草津温泉が生まれました。




