80.帰ってきました
「よし、もうそろそろ戻るか!」
しばらくたち、ルディは元気を取り戻した。というか、取り戻させた。
元気がないルディは見たくない。というか、見てて面白くない。
「うん。そうだね」
「じゃあ開けてみろ」
「え?僕が?なんでさ。ルディがやってよ」
「じゃあ修行の最終試験ってことで」
「ええ〜…面倒いんだけど」
「ほら早く」
「ほ〜い。えっと…」
僕はオービスの場所を探す。
始めにこの世界を作った時はすぐ近くにあったので、割と早く見つかった。僕はそこに穴を開ける。
「これでいい?」
「ああ、合格だな。戻ろうぜ」
「ほ〜い」
僕らは穴をくぐり、シャルドネの空間…いや、今は僕の空間へ戻る。
正しく言えば、オービスのための管理空間だけど。まぁ、それはいいよね。
「ねぇ、そういえばこっちの時間はどれくらいだったの?」
「ええと…多分、3,4日ってところだな」
「え?本当に⁉︎」
「ど、どうした?」
「ロメが心配してそう…」
「ああ、そうか。じゃあ早く帰ってやりな。俺もたまにはそっちに行くからよ」
「うん。でも、戻るのは一緒に行かない?どうせ暇でしょ?しばらく僕の空間にいなよ。ロメとかテラもいるしさ」
「あ、ああ〜…そうだな。しばらく世話になる」
「よし、じゃあ行こうか。『扉』」
「なぁ、その”扉”ってのは必要か?」
「気分だよ。気にしない気にしない。さ、行こ」
僕は”メインルーム”への扉を開き、空間をまたぐ。
「へぇ〜。なかなかだな」
ルディは僕の空間を見て、感心したような声を上げた。
「さ、早くいこ。ロメに怒られる…」
「はっはっは。たかが3,4日程度だ。そんなに怒られやしないだろ」
「いやぁ〜…無断でどっか行ってたら、普通は心配すると思う…」
「まぁ、こっちじゃそうだったな。まぁ早く行こうぜ」
僕らはロメの書斎に行く。
「ロメ、いる〜?」
「あ、主。ちょっと待ってください…」
「ほら、なんでもなかっただろ?」
「そうみたいだね。よかった」
ロメから帰ってきた声は、いつものような感じだったので、怒ってはいないと思う。
「お待たせ、し、ました?」
「ん?どうかした?」
「あああああ、主が誰かを連れてきた⁉︎」
「そんなに驚く?」
「当然です!いつも、私ら眷属以外を近くに置いていなかったのに…ところで、そちらの方は誰ですか?」
「あ、紹介するね。ルディだよ」
僕はルディをロメの方に押し出す。
「初めましてだな。エクの師匠兼友人のキャルディだ。しばらく世話になる」
「はぁ、初めまして…って、今世話になるって言いませんでしたか⁉︎」
「ああ、言ったぞ。それがどうかしたか?」
「主が人を連れてくるだけで珍しいのに…さらに、しばらくここにいるなんて」
「あ、そっか。ロメ、それは説明するから、客間に来てよ。ついでになんか飲み物も」
「は、はぁ。承知しました」
ロメは、何が何だか全く分からないといった顔をした。
「よし、じゃあこっちに来て」
「おう、わかった」
僕らは客間へ移動する。
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「つまり、主は修行をしていたというのですね?」
「そ。で、ルディが暇そうだったから、こっちに呼んだんだ」
ロメに千年のことを話した。ロメも最終的には納得したようで、いつもの調子に戻っている。
「そうでしたか。キャルディ様、これからどうぞよろしくお願いいたします」
「おう、よろしくな」
「で、僕が出かけてからどのくらいが経ってる?」
「ええと…確か5日ですね」
「ルディ、5日だってよ?3,4日じゃないよ?」
「1日ぐらいいいじゃねぇか。な?」
「まぁ、別にいんだけどね。さてと、じゃあどうしようかな〜?」
「どうしようとは?」
大雪の期間は、後5日くらいはある。その間は外には行けないし、やる事もこれといってないのだ。つまり、もうしばらく暇なのである。
「大雪の間どうやって時間潰そうかな〜、って」
「ああ、そうか。この世界にはそんなのもあるんだったな」
「で、何か案ある?」
「そうですね…テラと遊んであげてはいかかでしょう?テラ、主に会えなくて寂しそうでしたよ」
「あ、そうだね。今どこにいる?」
「おそらく部屋にいると思いますよ」
「よし、じゃあ行こう。…っとその前に、ルディ」
「ん?どうかしたか?」
「ルディの部屋、どこがいい?」
そういえば、しばらくはこっちにいるんだし、ルディにも部屋があった方がいいだろう。
「う〜ん、そうだな。エクの部屋はどこなんだ?」
「あっちの端だよ」
「ならそこの隣で」
「了解〜。『空間増設』…これでできたかな?」
「ず、随分と簡単になりましたね…」
「でしょ〜?修行の成果だねっ!」
「修行の成果なら、いちいち声に出すな」
声に出す方がイメージしやすいから、楽なんだけどな…
「ええ〜、その方が楽じゃん」
「はぁ…全く」
「ふふふ〜。じゃあ、とにかく部屋を見に行こうよ」
「そうだな。じゃあロメ、しばらく世話になる。多分、数万年くらいは」
「はい。え…?万年?」
「どうせ死なねぇんだ。しばらくはこっちに住むから」
「まぁ、別に困る事もないし、いいでしょ?」
「はぁ。承知しました」
「よし、とにかく部屋に行こう!」
僕とルディはロメと別れ、部屋を見に行く…
「という事で、ここがルディの部屋です!」
僕らは部屋に入った。ルディの部屋は10畳くらいの部屋で、ただ白いだけの空間だ。
「何もねぇな」
「自分で創ってね。部屋を広げたりは好きなようにしていいよ。カスタマイズは自由自在だよ!」
「了解だ。つまり勝手に創れと言いたいんだな。俺の自由にさせてもらうぞ?」
「いいよ〜。住みやすいように自分で創ってね」
「よし、ちょっと今から創る」
「テラのとこに行かない?」
「ああ〜、そうだな。それは後にしよう」
「よし、じゃあ行こうか」
僕らはテラの部屋に行く。
「テラ〜、いる〜?」
僕を声をかけた次の瞬間、
「あ、お姉ちゃん!」
扉を勢いよく開け、テラが飛び出してきた。
というか、話し方変わったな。
「やっほ〜。遊びに来たよ」
「えっと…そっちの人は?」
あ、紹介してなかった。
「ルディだよ。しばらくはここに一緒に住んでるから」
「へぇ〜、わかった。よろしくね、お兄ちゃん!」
「おう、よろしくテラ。」
「ねぇ、なんでルディはお兄ちゃんで、僕はお姉ちゃんなの?」
なんで、ルディはお兄ちゃんで、僕はそのままなんだ?今は、もう元々の男の状態のはずなんだけど…
「慣れちゃったから!いいでしょ?」
「別にいいじゃねぇか。な、お姉ちゃん?」
「テラはいいけど、ルディが言うとなんか腹立つ〜」
「はっはっは。さぁ、しばらく暇潰すんだろ?何する?」
そうだった。暇だったから、テラのとこに遊びに来たんだったっけ。
「そうだったね。じゃあ、テラは何がしたい?」
「う〜ん…わかんない!」
「お、おう。元気にわかんないって…」
「ルディは何か案ある?」
「いや、ないぞ?」
「だよね。ルディにあるとは思ってなかったし。じゃあどうしよっか?」
「ひでぇな。俺にある可能性なかったのかよ」
「う〜ん…あ」
そうだ、”眷属の箱庭”に行こう。
「ねぇ、”眷属の箱庭”に行かない?」
「どこだそれ?」
「僕の眷属がいるとこ。結構楽しいと思うよ」
「うん、行く〜!」
「そうか。じゃあ行くか」
「よし、『扉」…じゃあ、行こっか」
僕らは空間を移動する。
目の前には大自然が広がり、ゴブリン達が訓練していたり、上空を竜が飛んでいたり、小動物が走り回ったりしている。
「おお〜。結構スゲェな」
「でしょ?僕の自信作だもん」
ここを作るのには、結構な時間を費やした。
入り口付近は森だが、奥に行けば湖や川などもあるし、さらに奥には火山地帯など、ここが1つの世界のようになっているのだ。
「さて、じゃあ行こ〜」
僕は歩き出す…
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