表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/361

閑話:キャルディの贖罪

ちょっと閑話です

 エクがこちらを見て、いつものような歪んだ笑顔を向けてくる…



 俺がエクに修行をつけようと思ったのは、気に入ったからとかでは全くない。

 俺とガルディのやったことに対する、後悔からくるものだ。



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 これは今から大体5千億年前くらいのこと。


 俺らは綺麗な異空間にいた。

 俺らが初めからいた場所。



 この頃すでに、ガルディは人を苦しめて遊ぶのに悦を感じていた。

 そして、俺も…



 「ねぇ兄さん。現在に神魂になったのって、どのくらいいいる?」

 「大体…12,3くらいだな。まぁまぁ増えてきたな。もうそろそろ放っておいても良さそうだぜ?」



 オービスを作り上げて、2千年と少しぐらい。オービスと同時に神魂になることの可能な種族…上位長耳種、つまりハイエルフを作った。


 この頃は、初めての神魂が生まれて、基本的なことをすべて教え切ってすぐのことだ。



 「じゃあさぁ。呪いをつけて遊ばない?」

 「呪いか?何に、どうやって、どんなやつをだ?」

 「不幸の呪い。1つの魂をどうやっても分解されないように作って、肉体の死以外では死ななくした奴に、不幸の呪いをかけるんだ」

 「で、その魂は?」

 「一箇所の世界じゃなくて、今あるすべての世界を回りきった時に呪いが解けるように設定して、世界中を毎回記憶をリセットさせてやるんだ。どう?面白そうじゃない?」

 「へぇ。いいんじゃねぇの」

 「じゃあやろう」



 そう言って、ガルディは3つの魂を作り出した。


 その魂は普通のものと見た目は全く同じだが、中身は全く違う。形や色などに全く違いはないが、根本的に質が違う。他の魂は、エネルギーの塊で世界によってはレベルとかで昇華されていくのに対して、これは初めから俺らに近いレベルで高エネルギーの塊だった。



 「ず、ずいぶんなの作ったな」

 「でしょ?これに〜……こんな感じでいいかな?」

 「で、どうんなやつにしたんだ?」

 「根本的に生きてるだけで不幸。多分、初めのうちは生まれた瞬間に親に殺されるんじゃないかな?」

 「うっわ。えぐいな」

 「と、いうわけで。いってらっしゃーい」



 ガルディがその魂たちを適当な世界にばらまいた。



 「じゃあ、観察を始めよう」

 

 3つの画面を作り出し、俺とがルディはそれを見始めた。








 それから、3千年くらい。



 「ありゃりゃ?神様に攻めいったよ!見てよ、兄さん」

 「ん?あ、おう。これ何世界目?」


 画面には、1人の男が大量の魔法陣を描いて神を今にも殺そうとしているのが映っている。



 「これは確か…ああ、246世界目だね」

 「結構ゆるくなってきたか。ま、今までの平均寿命が10歳いってねぇし、ちょうどいいか。にしてもこいつは長生きだな」

 「珍しいよね。こいつ、もう30年近く生きてるよ」

 「で、なんでこうなってんだ?」

 「えっとね、ここの神様に彼女を殺された挙句、家族を皆殺し、自分の近くにいる人がどんどん奇病で死んでるね」

 「で、原因がその神か?」

 「いや、最初以外は単なる不幸。それなのに神様に立ち向かうとか、すっごい滑稽だね」

 

 

 つまり、この世界の神に嫌われ、近づく人にも嫌われ、その上に大切なものを持って行かれたわけだ。

 


 「そうだな。くくく…」

 

 その頃、世界の権限を預けていたら、俺が入れないように設定し直されたが、まぁ今はこっちの方が楽しかったので気にしていない。それに、現状とかは神魂になった奴がこっちに転送された時に聞けるので、問題もない。



 「今一番頑張ってるのはこいつだね。他は、悪魔の子だとか言われて殺されたりとかだね」



 そうして、観察を続ける。







 「なんか、魂に記憶の一部が残ってるみたいだね」

 「だな。堕ちるのが早くなってきたわ」



 さらに、1千万年と少し。


 魂がちょっとしたことで、恨みや憎しみの感情に囚われるようになってきてしまった。

 魂自体に記憶の破片が残りまくっているみたいで、前の一生の時の影響で人を嫌い、神を恨み、いろいろなことに時間を注いで、その世界の神を殺そうとすることが増えている。

 さらに、才能自体が継続されているから、結構いいところまでいくのだ。



 「ま、面白いからいいか」

 「そうだな。まぁ、大体は神にたどり着けないしな」

 「けど、最初にたどり着いた奴いたでしょ?」

 「ああ、あの魔法陣大量に使って頑張ってくれた奴か?」

 「そ。あいつ、神殺しもう4回目だよ。おかげで、魂の格が上がりまくってるね」



 ガルディが作り出した魂は、記憶を封印して次の世界に行くのだが、だんだんと体制ができてきてしまったようだ。



 「いんじゃねぇの?で、神は直したか?」

 「大丈夫。次の奴に変わったりしてるから、俺は手を出す必要ないし」

 「そうか」


 そうして、観察を続ける。







 それから、1万年と少し。



 「精神構造がおかしくなりだしたかな?」

 「お前に近づいたな」

 「あれ?俺ってあんなマッドサイエンティストじみたことなんかしてるっけ?」

 「今やってるのがそうだな」

 「あ、そうか」




 魂たちは、どんどん才能や記憶を継続して強くなり、いつしか神を恨むことなどはなくなり、自分以外の人で遊びだした。研究、拷問、薬物実験、etc…と、いろいろやっている。世界によっては、魔王となって世界征服なんかをしている。ただし、



 「やっぱり、人に嫌われるのと、人をなんとも思わないのは一緒だね」

 「そうだな。才能や記憶の継続ったってほんの一部だし、基本的に継続されるのはその一生のうちで最も印象に残っていることだからな」



 だから、人に嫌われていたこと、迫害されていたこと、奪われたこと、などなど、基本的に負の感情しか残っていない。強い感情だったほど、受け継がれやすいようだ。



 「まぁ、しょうがないでしょ?」

 「そうだな」








 そして、さらに3千万年。


 「やっと1人クリアー」

 「で、どいつだ?」

 「そこのだよ」

 「へぇ…色がちげぇのか」



 

 普通の神魂が金色に輝いているのに対して、呪いで弄ばれた神魂は濁った銀色…まるで、刃物のような鈍い輝やきを放っている。そして、魂が俺らにかなり近い。



 「だね。ああ、あとさ」

 「ん?どうした?」

 「記憶確かめたんだけど。全体的に夢とかに見るのが多いみたいだね」

 「へぇ。じゃあ、まんま変わんねぇのか」



 恨みを持ったり、精神が壊れやすくなってはいるが、根本は普通の魂とあまり変わらないようだ。

 才能の方も使おうと思っていなければ、”アルツヴァイ”とかみたいな平和な場所じゃ気付かないだろう。



 「うん。そうみたいだね。じゃ、後のやつはあげるよ。俺は飽きちゃったから」

 「おう。そうか」


 ガルディは、神魂たちの中に遊びに行き、俺は観察を続ける。




 



 そうして、オービスが生まれて9千8百万年。


 俺は最近になって、呪いの魂たちに対して罪悪感というものを覚えていた。

 ガルディはやることがなくなって、さらに消えていく神魂たちを見て、最近様子がおかしかった。



 そんな時。


 「兄さん。俺、もう飽きちゃった。先に行くよ」

 「え?いや、冗談だろ?」

 「ごめんね。後はよろしく」

 「は?ちょ、ちょっと!おい!」


 俺が止めるのも甲斐無く、ガルディは光の粒となって消えた。

 そして、その光は俺の中に入ってくる…


 さらに、それに続くように他の神魂たちも消えていった。



 「………ぁ、ん?」



 神魂たちが消えていく中で銀色の魂たちは消えなず、最後の1人となっていた呪いの魂の元へと流れていき、吸収された。



 「こ、これは?何が起きたんだ?」



 とにかく、俺はその最後の呪いの魂が最後に来るようになっている世界…オービスに来るのを待った。














 そして、5千億年くらい。



 エク。いや、この時は笹原 新一郎だったな。


 こいつは、生まれてから親に殺されることもなく、親戚に嫌われることもなく、普通に生きていた。

 だが、ちょっとした理由から小学生に入って少しの頃に父親に嫌われた。

 それが、引き金となったのだろうか。



 「あ〜あ。死んだ」


 妹は不良どもに玩具にされかけ。救った挙句に親は離婚。松井 新一郎となった。

 そこに来て平和な世界のはずが、継続し続けてきた才能を発揮した。不良に一生の傷をつけた。

 それを巧妙に隠しながら、いたって普通の学生を演じ、高校へ上がる。

 しかし、その残った母と妹が半年後に死亡。



 「まだちょっと残ってるのか…悪いな、俺はガルディがやったやつが高度すぎて、この人生が終わるまで待つしかねぇ」



 だが、呪いはガルディがかなり高度なものをかけたせいで、俺がその呪いを解くより、その人生が終わる方が早い。

 だから、観察を続ける他なかった。


 しかし予想を裏切って、オービスに呼ばれた。

 おそらく、共に来た奴らが死んだりするという不幸が待っていたのだろうが、世界を渡ったことで呪いがかき消された。

 その時ちょっと見失って、いつの間にか神魂にすらなっていた。本来なら、ハイエルフ以外の種族は神魂にはならないように作られていたのだが、おそらく他の呪いを持っていた魂によって変質したのだろう。

 しかも、あいつは他の魂を吸収して神魂になった。その際に声が聞こえてきたと言っていたが、それは多分今までの魂の記憶だったと思う。


 他にも魂は記憶とかを一度バラバラに崩すので、吸収された魂の記憶はまばらになっている。それを一つにまとめて理解するのは至難の技だ。

 つまり、それをこなすのはかなりの能力が必要になる。



 こいつは、始めに世界に喧嘩を売っていた魂の持ち主だ。


 今までの生は、苦しいものばかりだったのだろう。


 その能力の高さから、今までの生の叫びが聞こえてくるようだった。 



 それで…こいつの面倒を俺が見よう。それを俺らのやったことの”贖罪”としよう。そう思った。




^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 「お前は本当ついてねぇな」

 「うるせぇよっ」


 エクは、可愛らしい少女の姿で俺を睨む。

 

 「言葉遣い直せよ。体は女なんだしよ」

 「うっさいわ。俺は男だっつの」

 「そのちっさい体でか?」

 「うるせぇよ!『焼き払え。劫火』」



 神魂になりたてじゃ、ありえねぇ威力の神法が飛んでくる。

 これは早く、制御を教えたほうがいいな。俺が死ぬ。


 「おっと。あぶねぇな」

 「ちっ。当たれよ」

 「誰が当たるか。さ、再開するぞ」

 「ほ〜い」



 俺はエクの修行を続ける…




意見・感想等あったらお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ