75.神力を試しました
まずは、簡単な魔法をいつもと同じくらいの量の”神力”を込めてやってみよう。
「とりあえず、無難に普通の風を起こすかな…『そよ風』機動。」
ぐおぉぉぉぉぉおおおお…
うん、何故に気持ちのいい風程度の風を起こす魔法で、台風を何百倍にもしたような風が起きるんだよ。
「神力やばいな…」
これはまずいな。さすがに、このまま普通の魔法は使えない。というか、使いたくない。間違いなく俺も巻き込む魔法に早変わりしそうだ。
「さて、このままじゃ死ぬな。いや、死ねないけど。」
別の方法を見つけなくちゃ魔法は使えなさそうだ。
最悪、”創世”で魔法は使えるけど。なんか違う気がするし、気が乗らない。
「ふむ、魔法は世界にある魔力…いや、魂力の残骸に魔力で干渉することだったよな。」
シャルドネの記憶によると魔法ってのは、世界が魂を吸収する途中に残ってしまった残骸…それが空気中に溶けている魔力で、それに自分の魔力を加えて発動することで、魔法が発生する。それは、空気中の魔力に自分の魔力を干渉させて、世界の魔力に現象を起こさせるものであるため、そこまで多くない魔力で魔法が使える。まぁ、威力は干渉させる魔力の量に比例はするが、それでも自分の魔力1で世界の魔力30位を使うことができる。
また、生物が持っている魔力は、世界に破壊されている途中の魂…つまり魂力が吸収されなかった残骸で、それには属性はなく、空気中にある魔力の持つ属性への干渉のしやすさが、生物が持つ属性の正体だ。つまり、空気中の魔力に干渉する前の魔力は、属性がない。だが、”神魂”になると属性が”想像”へ変わり、自分で属性を創り出すことができるようになる。
「なら、最初から自分の”神力”だけで、魔法を発動すればいいんじゃね?」
世界の魔力に干渉することで、世界の魔力が使えるなら、世界の魔力に干渉しなければ、空気中の魔力によって威力が増すこともなくなるので、多少マシになるかもしれないと思う。
「とにかくやってみよう。『そよ風』起動。」
ぐぅぉぉおぉぉぉおおおおお
うむ、なぜに威力増したし。世界の魔力使ってないから、威力は下がるんじゃないのか?
「シャルドネの記憶にないかな…あ、あった。ええと…純粋な神力で魔法を使うと、世界の魔力により阻害されることがなくなり、魔法の威力が上がった。これをキャルディは、”神法”だと教えてくれた…と、キャルディってのは、シャルドネより上位の神魂かな?」
シャルドネには、キャルディという別の神魂らしき人物に、世界の管理や知識を教わっている記憶があった。元々、この世界の管理者はそのキャルディという男で、この世界を作ったのもそいつのようだ。それをシャルドネに譲り、別の世界を創りに行ったようだ。ちなみに、俺らがいた世界もキャルディが作った世界のうちの1つのようだ。
ついでにいうと、今のこの世界の管理者権限は俺になっている。まぁ、シャルドネの神魂を吸収したので当然と言えばそうなのだが…って、そうじゃなかったな。
「じゃあどうしようかな…というか、魔力作れないかな?”神力”を薄めれば”魂力”にはなるみたいだし、それをさらに薄めればいけるかな?」
もともと、”魂力”が格上げしたのが”神力”なので、”魂力”は”神力”を薄めれば作れることは記憶の中にあった。なら、”魂力”を世界に吸収しようとした時の残骸である、”魔力”は”魂力”を薄めれば作れるんじゃないだろうか?
「とにかく、やってみようか。ええと、神力を出して…それの濃度を薄くして…それをさらに、魔力くらいになるまで薄める…お、近くなった。でもなんか違うな…ま、いっか。」
だんだんと濃度を薄めて、魔力を作る。それっぽいが、魔力とは格が違うものが出来上がったが、問題はないだろう。
「さぁ、やってみよう。このままの魔力もどきで、『そよ風』起動!」
ひゅうぅぅうううううう…
「あ、ちょっと強いけど、成功かな?」
本来の魔法より、少し威力は高いが、ほぼ通常通りの威力になった。まぁ、あとは要練習だろう。
「さて、じゃあ練習しようかな。」
俺は練習を始める…
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「ふぅ、大体このくらいまで使えれば問題はないかな?」
練習を始めて、2時間と少しが経った。俺は、いつもと変わりないくらいの威力で魔法が使えるようになっていた。
「さて、じゃあここからは”神法”の製作かな。」
”想像”は、世界の魔力の持つ属性でなく、自分で作ることができるものなので、属性が”想像”に変わったことで、どこの世界でも魔法が使える。だが、世界に干渉しないで魔法を使うと、最初にやったように威力が異常に高い。なので、普通に使える魔法を作ろうと思う。
「とりあえず、威力を下げなくちゃ、どうにもならないよな。とりあえず、どの方法で魔法を使うかだよな…」
詠唱はだるいし、無詠唱でやると威力を抑えるのがむずいから、やっぱり陣かな…
「陣でやるとして、威力はどうやって抑えようか…」
威力を下げる方法といえば、込める魔力量を減らす、魔法陣に威力を抑える魔法文字などを描き込む、陣の魔法文字などを減らして魔法を簡易化する…などが思い浮かぶ。
基本的に俺の魔法陣は、威力を上げる魔法文字はそこまで入っていなくて、その代わりに魔力を大量に込めても壊れないようにしているので、これ以上は陣の魔法文字は削れないの。だから簡易化はできないし、込める魔力を減らすのは面倒い。だが、威力を下げる魔法文字を入れると描くのがかなり面倒なので、あまりやりたくないのである。なので、しょうがなく魔力を減らすしかないのだ。
「でも、うっかり込めすぎると、人とかに当たると死ぬよね…」
やっぱり、威力をある程度は抑えることができるようにした方がいいのも事実なのだ。一応どちらも作るかな。
「まずは、普通に陣を描いて、そこに威力を下げるように命令文を組み込む…と、これで大体2割くらいまで抑えられたはず。『火玉』起動。」
ボォウ…
俺の目の前に、直径10cmくらいの火の玉が出来上がった。
というか、普通にやってたら50cmくらいの火の玉ができていたということなので、結構危なかった気がする。
第一、属性は火、水、風、地の基本属性と、上位属性の光と闇、最上位の空間と時がある。実は治癒は光属性の下位変換であり、それ以外にも知られていないが闇の下位変換の破壊があったりする。ちなみに、それらは基本と上位の中間といったところだ。
まぁそんなことは置いておいて、威力を下げる命令文はそれら全てのものに対応しているわけではなく、今やっていたのは基本属性の命令文。これは数文字程度で済むのだが、上位、最上位と上がるにつれて文字数も増えていくのだ。つまり、威力を下げたいのなら、込める魔力量を減らす方が簡単なのだ。
「面倒だわ…やっぱり作んなくてもいんじゃね?」
なんか問題ないような気がするし、もしもの時はどうにか自分で制御しよう。普段は魔力を調節して使えばいいので問題はないのだ。
「よし、じゃあ次は…過去の付与魔法かな?」
付与魔法というのは、魔道具を作る時に使う魔法であり、属性以外の魔法だ。例えば、自動修復や固定や硬質化などがそうである。
まぁ、そんな付与魔法なのであるが、今では多くの魔法が使える人がいないのが原因で、過去の付与魔法のほとんどの記録が残っていなくて使えないのだ。自動修復も俺の短剣の付与を解析してやっと使えたくらいである。しかし、シャルドネの記憶の中には、ハイエルフであった頃の記憶があり、その中には多くの知識があるはずなのだ。
ハイエルフは、神に最も近い種族。そう言われる所以はハイエルフの寿命の長さにある。寿命が長ければ、レベルも上がるし知識量も多くなる。なので、神魂になる確率が最も高い種族なのだ。だから、神のように崇拝されてきた。しかし、そんなハイエルフも今では衰退し世界から消えている。種族が長命であるために子孫を残す必要があまりないので、いつしか滅んでしまったのだ。さらに、その魂は世界の魔力に溶け込んで消えてしまうため、ロメや俺の魂の中に記憶がない。だが、こいつの記憶の中にはそのハイエルフの知識の記憶を持っているはずなのだ。それを探そうと思うのだ。
「さて、久しぶりに干渉しますかな…『記憶干渉』起動。」
俺は、自分の中にある魂たちに干渉し、記憶を読み取り始める。
「ぐっ…やっぱちょっとつらいわ…」
俺の頭の中に、ロメの記憶を読んだ時とは比べ物にならないほどの記憶が流れ込む。だが、魂の吸収を行っていたせいで今は、そこまでつらくなくなっている。だが、つらいものはつらいのである。やはりひどい頭痛がする。
「…後どれだけあるんだよ。」
流れていく記憶には、悲しみや苦しみ、痛みに恐怖などもあるので、見ていてあまり気分の良いものではないのである。まぁ仕方がないので最後まで見るが。
そのまま俺は、記憶をひたすら見続けた…
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