70.長老会に行きました
俺らが猫になってしばらく遊んだ後、ふとルシウスとの約束を思い出して、俺は人に戻って準備をした。
「じゃあ行ってくるね。」
「はい、お気をつけて。」
俺は空間をまたぎ、久しぶりに外に出た。
詰所の陰から出ると、避難していた人たちは、元の生活に戻り、街には活気が戻っていた。
「さて、じゃあギルドに行こう。後20分で約束の時間だし、急がなきゃ。」
俺はギルドに向かう。
『なぁ、お前。”黒龍の英雄”見たか?』
『見てるわけねぇじゃん。俺はお前と一緒に避難してたんだぜ?』
『そだよな。いったいどんな人だったんだろうな?』
『見た人が言うには、真っ黒いローブに仮面をかぶってたらしいぜ。』
『他にはなんか情報ないのかよ?』
『さぁ〜?どこでも、それくらいしか聞かねぇな。』
『だよな〜。いったいどこの…』
どうやら、ルシウスは約束を守ってくれたらしい。どこで盗み聞いても、その程度の情報しか出回っていなかった。
そんなことをしていたら、ギルドに着く。
カランカラン…
俺は受付に向かう。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件はなんでしょうか?」
「これを見せればいいって言われてるんだけど〜。」
そう言って、俺はギルドカードを渡した。
「ああ、シン様ですね。こちらへ。」
「ほ〜い。」
受付嬢に連れられ、2階にある部屋に案内された。
コンコン…
「シン様がお越しになりました。」
『入っていいぞ。』
「失礼します。」
カチャ…
「よく来てくれたね。ああ、君は下がっていいよ。」
「失礼します。」
受付嬢が出て行く。
「おひさ〜。元気そうだね。」
「おかげさまでね…さて、じゃあこれが新しいカードだ。受け取ってくれるかい?」
「はいよ。ふ〜ん、Sになるとカードの色も変わるんだね〜。」
俺はルシウスからカードを受け取った。
カードは今までのは深い青色だったのだが、このカードは漆のようなツヤのある黒だった。Sランク以上は黒に変わり、書かれている文字も金色になっていた。
「あと、こっちが許可証だよ。」
「ほ〜い、ありがとさん。」
「さて、では塔に行こうか。長老会のメンバーが、そろそろ揃う頃だろう。」
「了解〜。」
ルシウスは座ってた椅子から立ち上がると、俺を連れて塔へ向かって歩き出す…
「さて、じゃあ少し待ってくれ。今、門を開けるから。」
そう言って、ルシウスが塔の入り口に近づき、門に手をかざす…
どうやらこの門は魔道具で、特定の人物の魔力で開くようになっているようだ。まぁ、俺は魔力の質を真似るくらいはできるから、意味はないな。
ゴゴゴゴゴゴ…
少しすると門が開いた。
「さぁ行こうか。」
「ほ〜い。」
俺らは中に入っていく。
塔の中は、1階には階段があるだけで特には何もなかった。
「ねぇ、ここからどうやって行くの?」
「とりあえず、2階に行こうか。そうるれば分かるかもしれないし。」
「ふ〜ん。了解〜。」
俺らは階段を上って2階に上がる。
「あ、もしかしてあれ?」
2階には、向こうの世界でいうところの”エレベーター”のような物があった。いや、正しくはそれらしき物というのが正解かな?壁際に扉があり、魔道具であるのが見てわかったので、込められた魔法を解析したらそれに近いのがわかったのだ。
いやぁ〜、この世界にもそんな物があるんだな。
「そうだよ。」
「ふ〜ん、じゃあ行こうか。」
「そうだね。きっとみんなも待ってると思うしね。」
ルシウスが扉に近づくと、独りでに扉が開いた。中には4m四方くらいの空間があった。
「さぁ、乗ってくれ。」
「ほ〜い。」
俺らは中に乗ると、扉が閉まり上に上がりだした。
「珍しいね。これに、全く動じずに乗った人は、あまりいないのに。」
「解析したからね〜。」
「この短時間でかい⁉︎それは驚いた。」
「あ、仮面つけたほうがいい?」
「う〜む、どちらでも構わないよ。好きなようにしてくれ。」
じゃあ、つけとくかな。他の人には、あまり知られたくないし。
「よいしょ…あ、あ〜。よし、これでいいか。」
「あ、ああ。」
仮面には見る人に、軽くだが威圧するような魔法陣が刻まれているせいで、ルシウスが一瞬驚く。
少しして、止まって扉が開いた。
「おや、着いたみたいだな。」
「こっちだ。」
「ああ、わかった。」
俺はルシウスについて行く。
「さて、ここだ。入るよ。」
「ああ、問題ないぞ。」
少し歩いたところにある、扉のまえで止まった。ルシウスは扉を開けた。
「おや、ルシウスじゃないか。珍しいねぇ、あんたからの呼び出しなんて。そいつが例のアレかい?」
中は、よくある会議室のようなところで、中にいた鬼族の女が話しかけてくる。鬼族は、普通の人に眉間の辺りから、ツノが生えたのを想像してくれるといいだろう。
「そうだよ。さぁ、皆席へ。」
ガタガタガタ…
中にいた、いろんな種族の人が席に着いた。
エルフやドワーフなどを始め、鬼族、竜人族、小人族、妖精族、有翼族、様々な種族がいる。
「さて、本日皆に集まってもらったのは、彼、”黒龍の英雄”に対する褒美の件についてだ。」
「ああ、それは知っておるよ。それはなんなんだい?」
「それは今から彼に、頼めるかい?」
なんだ、俺に自分で言わせるのかよ。別にいいけどさ。
「ああ、構わない。俺からの頼みというのは、”勇者返還”の魔法の再生、又は製作だ。俺はこちらの世界の住人ではない。できれば、知り合いも共に向こうの世界に帰りたいのだ。」
「なるほど。ということは君は勇者かい?」
「いや、俺は巻き込まれただけの一般人だ。」
「いやいや、そんな力を持った人が、一般人って。ないでしょうよ。」
「まぁそれだけだ。」
あとは、禁書とかの閲覧許可だ。そっちはもう貰ったがな。
「ということなのだが、可能だろうか?」
「問題はないだろう。半年もあれば十分よ。我らが竜人族の知能を見せつけてくれよう。」
「なにを言うんだい!先に完成させるのは、私ら小人族さ!」
「バカ言っちゃいけないよ。私たち、ドワーフが一番だ!」
「はぁ…最近、競う物がなくなってしまったから、ちょうどよかったんだよ。」
なるほど。確かにこれは面倒だな。
「そうか。それで、できるのか?」
「「「「「「「「「当たり前だ!」」」」」」」」
「ふむ。じゃあ俺はこれで失礼しよう。」
「ああ、ちょっと待ってくれ。できたらどうすればいい?」
「王国のそうだな…カリーナという図書館司書に送ってくれ。」
カリーナに送ってもらおう。そうすれば分かりやすくていい。
「わかった。」
「じゃあな。」
「は?お前一人であの扉は開かねぇぞ?」
「問題ない。開け方は理解した。」
「どういうことだ⁉︎」
「じゃあ、また機会があれば会おう。」
俺は無視して帰る。
扉は、普通に魔力で干渉すればいいので、問題ない。俺は早く図書館に行きたいのだ。
俺はさっさと塔を出て、図書館に向かう…
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