69.ちょっとヤバイ状況になりました
俺は今、非常に大変な状況に直面している。
あれから9日。俺は迷宮の100階層に行くのと、空白世界で訓練ばっかりしていた。
迷宮に行っていたのは、俺が回収した”世界の意思”がどの程度修復されるかを確認するためだったが、2日もあれば元の大きさに戻っていたので、その度に”隔離部屋”に持って行っていたら、部屋にものすごい量の高エネルギー体が溜まっている状態になっている。
ついでに、訓練中に気付いたのだが、魂を吸収してたらレベルが上がっていた。まぁ、もともとレベルアップは、倒した魔物…というか近くで死んだの魂の一部を、魂に影響の出ないレベルで吸収して、魂の格を上げるというものなのだ。ましてや俺は、それをそのまま吸収している。レベルの上がらないなんてことが、あるわけがないのだ。ついでに、今のステータスはこんな感じ。
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名前:松井 新一郎
種族:ー
性別:男
年齢:16
称号:暇人 鬼畜 外道 ドS 快楽主義者
読書家 知識人 異界人 不老不死 虐殺者
悪霊 黒龍の英雄 世界の異常 迷宮攻略者
上級冒険者
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職業:嘘つきの王 レベル:143
筋力:error
体力:error
耐性:error
敏捷:error
魔力:ー
知力:error
属性:火 水 風 地 闇 空間 時
スキル:改変 隠蔽 実現 隠密 解析
思考進化 速読 異世界言語 身体制御
眷属創生 神眼 魔力生成 自己再生
空間掌握 陣記録 肉体生成 念話 究極武術
魂操作 魂吸収 擬似創世
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結構いろいろと変わったが、何より変わったのは能力値だろう。”世界の異常”という称号が出てから表示されなくなった。”世界の異常”という称号は効果がなく、説明には『世界の理から外れた魂を持つもの』なんて表示されるだけで、何もわからない。
と、よくわからない形で変化している。
さらに、魂の吸収している途中に気づいてやったのだが、『魔物は魂の破壊途中のエネルギーから生み出せた…つまり、自分も作り替えられるんじゃね?』なんて思いついて、魂を操作して試しに俺の手を純金製に変えてみたら…できてしまったのだ。
つまり、俺の肉体も魂に近い別の何かによって形成されていたのだ。
ということで、いろいろやってみたところ、結構いろいろできた。翼を生やしてみたり、腕を増やしてみたり、目を増やしてみたり、と結構何でもできることがわかった。
そして今。完全に魂だけの状態になっている。というより、なれてしまった。
さっき、魂の吸収訓練に飽たから別のことでもやってリセットしようと思い、肉体の形成しているエネルギーを魂に還元できないかと思って、肉体の形成しているエネルギーを魂に変えてみたら以外とできたので、そのままやり続けてたら、いつの間にか肉体が消えて魂だけの状態になっていたのだ。非常に笑えない状況である。
(さて、どうしようか?)
困ったことに、口がないからしゃべれないのだ。おかげで、扉は開くことができないし、声に出さないと使えないスキルなども無理だ。
(う〜ん…あ、いっその事、体を一から作ればいいんじゃね?)
今更だがこんなことが思いつかなかったとは、俺もかなり気が動転していたのだな。まぁ、そんなことはどうでもいい。人体の構造は医学系の参考書や専門書で読んだし、機能なども把握している。それを自分でやればいいのだ。
(まずは骨を作って…)
俺は元の体と、人体の構造をイメージしながら、肉体を形作っていく…
「よっしゃぁ〜!もどった〜!」
力戦奮闘すること約10分。やっとの事で元に戻れた。初めは大変だったが、途中からはいつもと同じように部位を作るだけだったので、簡単だった。
「いやぁ〜、よかったよかった。」
本当によかった。戻れなかったら、これから一生を魂で生きていくことになるところだった。危ない危ない。
「でも、これで魂で体を作るのはわかった。これを使えば、別の生き物にもなれそうだな…よし、やってみるか。あ、その前に鏡持ってこよ。『扉。アイテムルーム』…よっと。」
俺は鏡を取り出した。
「さぁ、やってみよう。」
これと同じように、別の生物の肉体を作れば、全く別の生き物にもなれると思う。
俺はまた肉体を壊し、魂だけになる。その状態を鏡で見ると、15cmくらいの白い光の塊だった。
(俺が、しっかりと肉体の構造を知ってる生き物がいいよな。とりあえずは…猫かな?)
前に何かの資料で、猫の肉体の構造が載ってるのを見た覚えがあるので、猫にしようと思う。
俺は、猫になろうと肉体を作り始める…
「にゃーお…?」
声が出ない。できたって言ったつもりだったのだが、”にゃーお”って…
「にゃ!」
あ、それもそうか。猫には人と同じような声帯は、ないんだった。えっと、人の声帯は…
「あ、あ〜。あ、出た。うわっ、なんか猫が喋るってシュールだな。」
俺は目の前に用意していた鏡を見て思う。ちなみに、種類はアメショだ。
「さて、ロメでも驚かしにいこ〜。『扉、メインルーム』」
俺は猫の体で、ロメのいる書斎に行く。
テクテクテクテク…
歩くのが、以外と大変だ。いつもの歩幅ならもっと早いのだが、いかんせん猫なのだ。ゆっくりである。
そのまましばらく歩き、書斎にたどり着く。
「お〜い、ロメ〜。」
俺は扉の前でロメを呼ぶ。
「はい。主、どうかされましたか?」
「ちょっと来てくれ。」
「はい、わかりました。」
扉の向こうから、足音が聞こえる。
がチャッ…
「あれ?確かに今、主の声が聞こえた気が…猫?でしたっけ?」
「ここだ、ここ。」
「⁉︎猫から主の声が!」
「くくく…あ〜面白。」
見事に予想どうりの反応、ありがとう。これだからドッキリは面白いのだ。
「え、ええと…これは一体?」
「猫になってみた。どうよ?」
「なってみたって…一体どういうことですか!」
あ、やべ。これは怒られるパターンだ。
「この間も!魂の吸収などを始めて!私がどれほど主を心配していることか!大体、主はいつもそうです。私がこんなにも心配しているのに、どうしてそのようなことをするのですか!」
「いや、それは…」
というか、青年に猫が叱られてる絵って…どうよ?
「お願いですから、私を心配させるようなことはできるだけ控えてください!私だって、できる限りの協力はしますから!」
「は、はい。」
あれ?俺って主だったよね?
「で、どういうことなのですか?説明してください。」
「ええと、ロメって”霊体変化”で肉体を作ってるじゃん?」
「は、はい。確かにそうですが。」
「でだ。俺は魂が操作できる。なら、肉体も作り替えられるんじゃないかって思って、やってみた。」
「で、結果がこれと。」
「そういうこと。わかった?」
「わかりましたが、元には戻れるのですよね?」
「当然。」
俺はさっきやったように、人間に戻る。
「こんな感じ。」
「なるほど。戻ることは可能なのですね。」
「おもしろくね?」
俺はもう一度猫に戻る。
「確かに興味深くはありますが。なぜ、こんなことするんですか?」
「いや、だって、誰もが思い描く夢じゃない?”鳥になりたーい”とか、”魚になりたーい”とかさ?」
大体、子供なら一度くらいは思ったことはあるだろう。それが叶いそうだったから、やったまでのことよ。
「はぁ〜…前々から思ってはいましたが、主よ。あなたって時折本当、極限に自分の欲望に忠実ですよね。」
「あはは〜。しょうがないじゃん。俺は快楽主義者で楽観主義だよ?」
「それが私を心配させている原因ですよ!…まったく。」
「悪い悪い。でも、猫の体って結構面白いな。」
「なるほど、私もやってみましょう。ええと…こうでしょうかな?」
ロメの体が一瞬光った後、そこには可愛らしい子猫がいた。
「にゃーう?」
「ぶっ。ロメ可愛いっ。面白!ははは〜。」
「にゃー!」
「え?笑うなって?無理だ。くっくっく…」
それに、しゃべる猫が普通の猫をバカにしている様子を思い浮かべたら、もっと笑えてきた。
「にゃうー!」
「ははは〜。ロメも声帯作ればいいのに。」
「にゃ?」
ああ、そうだったな。こっちの世界には猫がいないから、どういうことかわかんないのか。
「しょうがないな〜。教えてやろう。」
「にゃっ!」
「くくくく…」
「にゃー!」
「ああ、悪い。今から教える。くくくく…」
その後、俺がひとしきり笑ってから、ロメに生物の肉体の構造を教えてやった…
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