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67.魔族と戦いました

 しばらく待つこと2時間。街の中に変化があった。

 まず、一般人や女子供は皆塔の方に行き、ギルドの人や騎士団と、それでも参加しようとやってきた冒険者のみが残っている。まぁ、この人数じゃどう頑張ったって1時間程度が限度かな?

 多分、城壁にもいくらか人が待機してるとは思うが、城壁を抜けられるのも時間の問題だろう。


 『A,B班は城壁から、魔法で魔物を撃て、残りのC,D班は城壁の外で魔族を向かえ撃つ、意見がある者はいるか?いないのならこのまま城壁へ移動する。』

 

  どうやら移動するようだ。俺は先回りして城壁の上で待つかな…『遊泳』起動。



 俺は屋根から飛び立ち、入ってきたところの城壁の上に立つ。そこからは、かなり遠くに魔物の集団が侵攻してくるのが見えた。おそらく後1時間ちょっとでここまでたどり着くだろう。


 「あ、魔族はどのくらいいるかな?」


 魔族はたった1人で魔物、何体分もの戦力になりうる。王都の時も、神野たちのところは魔族にやられたのがほとんどだったらしいし。


 「『身体制御』…あ、いた。えっと…3,4,5,6 ⁉︎そんなにいるのかよ!ここ終わったな。」


 王都の時は、勇者がいても1人で数十人の死者と百数十人の怪我人を出したのだ。その6倍…間違いなく最低でも千人近いの死傷者が出るだろう。


 そんなことを思っていると、ギルド員や冒険者達が城壁から出たのが見えた。さらに、魔法使いのグループが俺がいる城壁に登ってきている。


 「隠れなきゃ、”隠密”『消滅』起動。」


 俺は、誰かが来る前に隠れる。



 『…たとえ俺らが死んでも、この街は…俺らの故郷は守る。』

 『ああ、でも死ぬなんて言うなよ。また一緒に酒でも飲もう。きっと生きて帰ろう。』

 『そ、そうだな。俺らは生きてこの街を守るんだ。』



 はっはっは…どうせ無理だろ。


 なんというか、俺の感情は冷めていた。


 その後も、魔法使いグループが話しているのを聞きながら、魔族との戦闘が始まるのを待つ…



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 『くそっ、魔…力が…』


 ドサッ…




 また1人、魔法使いが魔力切れで倒れた。これで57人目。




 ここにいる魔法使いも、頑張っているのがわかる。倒れている奴らも、皆悔しそうな表情をしながら倒れていった。外にいる、戦闘グループも何人かが死んでいるが、もう3時間も魔物の侵攻を抑えている。さすがは歴戦の戦士達って感じだ。まぁ、魔族が後ろで魔物の指揮しかしてないってのも、原因だとは思うが。それでもなかなかだ。


 「いやぁ〜。頑張ってるねぇ〜。」


 皆、精一杯やっている。俺にはもう存在しない、情熱ってやつが感じられる気がした。



 俺の世界が霞む…


 

 「あ〜あ…目立つつもりはなかったんだけどなぁ…まぁ、しょうがないか。」


 この世界であまり目立つつもりはないが、ここがなくなると色々と困るし、ルシウス達はあんまり死んでほしくないんだよね。いい人が死ぬのは不条理だ。それに、なんか頑張っているのを見たら、助けてやりたくなった。


 俺は迷宮の時に作ったオリハルコン製の仮面をつけ、ローブについているフードを少し深めにかぶり、”隠密”と”消滅”を切った。



 「なっ!お前、何者だ!」

 「俺は味方だよ。安心しろ。『我が呼び声を聞け、来たれ眷属よ』」


 俺は近くにいた魔法使いに声をかけられたが、気にせずニーズを呼びだし、元の大きさに戻し背中に飛び乗った。


 「じゃあ行くぞ。」


 俺は魔物の軍勢にニーズとともに突っ込む。


 「焼き払え!」

 「グラァァァァ!」


 グゥウォオオオオオオオオオ…


 ニーズが、人のいない場所まで来たところで、黄金色とも言えるようなブレスを吐く…



 『な、なんだあいつは!』

 『敵なのか⁉︎』

 『いや、でも魔物を倒してるぞ!』

 『うおおおお!こっちも負けていられるか!あっちはあいつに任せて、残りの魔物をやるぞ!』



 少し向こうで騒がれたが、まぁしゃーない。その辺は諦めるとしよう。じゃあ、こっちもささっと終わらせて、魂の回収でもするとしようか。


 「じゃあ行こうか、『鎌鼬』起動。」


 俺は大量の風の鎌を生み出し、それを魔物に向かって打ち出す。



 ズシャッ…ドサドサドサドサ…


 一瞬にして、目の前の魔物達が細切れになり、見るも無残なゴミになる。



 「さぁ、回収回収〜。『影腕』起動。」


 影の腕の出して、ついでに魂を回収する。今、傍目からみると、俺ってかなり不気味だよな…


 「ギャウォオオオ!」


 そんなことを思っているとニーズも、俺を背中に乗せたまま、魔物を爪で切り裂き、ブレスで燃やしていく。

 実に楽な作業だ。



 俺がそんなことを思いながら魔物を狩り続けていたら、ついに1人の魔族が動き出した。

 せっかく魔物の残りが、あと数百くらいになったのに、面倒な…ってこっちに来ている気がするのだが。



 「おい貴殿、何者だ?」


 青い肌の3mくらいある、筋肉ムキムキの大男がやってきた。


 「人に聞いてる暇があったら、さっさと倒すことをお勧めするよ?まぁ、無理だろうけど…よっと、はいおしまい。」

 「何を言って…な?」


 俺はニーズの背中に乗ったままで、ナイフを目に見えないくらいの速さで魔族に投げつけた。すると、魔族の腹に直径30cmくらいの大穴が開いて、魔族が倒れる。


 「はい残念無念、また来年〜。ははは〜。」

 「くっ、我輩がこの程度で…倒せると思うな!」


 おっ、起き上がってきたよ。すげ〜。


 「どうせ少ししたら死ぬでしょ。諦めろ。」

 「せめて一矢報いることぐらいなら…できる!」

 

 魔族は俺に向かって走りだす…が、残念。俺はもう一本ナイフを投げ、首が吹き飛ぶ。


 「さて、次行こうか。」

 「ギャウ!」


 俺…というよりもニーズが残りの魔物を倒しに行く。俺は背中の上で眺めるだけだ。


 そんな感じにしばらく魔物を狩っていたら、さすがに魔族もまずいと思ったのか、他の5人の魔族がこちらに向かってきた。

  


 「御主、なかなかやるようじゃな。じゃがここまでよ。」

 「さぁ〜て、それはどうだかね。」


 魔族のじいさんっぽい白い髭の奴が、俺に声をかけてきた。


 「ちっ。おいナルハセ。さっさとかたづけちまおうぜ。」

 「そうだよぉ〜。魔王様にぃ、ここを献上するんでしょぉ〜?」


 どうやら、魔王が命令してきたんじゃなくて、自分たちで勝手に来たようだ。


 「ふむ、それもそうじゃな。レオーネ、カードル、奴を仕留めよ。」

 「「はっ。」」


 白髭の後ろに控えていた魔族2人が前に出てきた。片方は執事服、もう片方はメイド服みたいな服装だ。魔族にも階級ってあるのかな?


 「わたくし、レオーネと申します。お見知り置きを。」

 「私は、カードル。あなたを殺す者の名よ。」


 なるほど、こいつら俺を殺せるとか思ってるらしい。さっきの筋肉を見てなかったのだろうか?


 「俺は…エクレイム。攻め入ったことを後悔するといい。魔族ども。」


 さすがに、本名は言ったらまずいかもしれないと思ったので、中学くらいの時にゲームとかのプレイヤーネームでよく使っていた名前を言った。ちなみに、鎮魂曲…レクイエムを並び替えただけのものだ。

 

 「ふん、後悔するのはあなたよ。」

 「さて、どうだか…ねっ。」


 シュン…ドサ


 「え?レオーネ、レオーネ⁉︎」


 そんなことを言っている魔族の横にいた、レオーネとかいう執事服を着ていた魔族の首を切り落とした。

 

 「はい、次〜。よいしょ。」


 シュン…ドサ



 もう片方の魔族も首を飛ばす。 

 ついでに言うと、さっきから投げてるナイフは、普通のナイフを”改変”で異常に硬くして、魔石を埋め込み、”返還”の魔法が刻んであるので、何もしなくても2分すると勝手に”アイテムルーム”に戻るようになっている。



 

 「…ふむ、こやつらが瞬殺とは…御主、何者じゃ?」

 「その辺の一般市民。次はこないの?」

 「いや、そやつらを一撃で仕留めるような相手に、儂らは勝てんよ。ここは引かせてもらおう。」

 

 どうやら逃げるつもりらしい…そんなのを許すとでも思ってるのか?


 「ははは〜。逃げられるとでも思って?」

 「さて、どうだかな…『闇の扉よ、ゲート』」


 白髭の魔族の前に黒い穴が形成されていく。

 使用している魔力に、空間属性が含まれているので、どうやら空間転移系統の魔法で、逃げるつもりのようだ。まぁ、それなら空間の行き先を変えてやろうじゃないか。



 「…『魔法干渉、空間接続。αから”地獄の心底-1”へ』…これでよし。さて、逃げたければ逃げるといい。その先には地獄が待ってるよ。」


 俺は魔法に少し介入し、行き先を変更してやった。


 ちなみに”地獄の心底”は、俺の作った空間の1つで、”-1”はただ暗くて地面が血のような物で出来ているだけの部屋なのだが、その中に入った者の魂を少しずつ破壊して吸収し、どうなっているのかわからない恐怖に襲われながら、衰弱死させるおまけ付きなのだ。ついでに言うと、その破壊した魂は、水道やコンロ、電気など、俺の空間のエネルギーに使われるようになっている。



 「ふん、何をしていたのかは知らぬが、その言葉に甘えて、逃げさせていただこう。いくぞ、リューク、アルビナ。」

 「はぁ⁉︎逃げるのかよ、ナルハセ?こんなガキ1匹なのにか?冗談だろ。」

 「本当よぉ〜。なんでこんなやつ如きで、逃げるのぉ〜?」

 「汝らには力の差がわからんかったのか?こやつはその気になれば、儂らはもう死んでおるのだぞ?」

 「ははは〜。今からでもその気になっておく?」

 「いや、遠慮していただきたい。さぁ行くぞ。」

 「はぁ〜い。」

 「チッ!覚えとけ。」


 魔族どもが、俺の空間に入って行ったのがわかった。ザマァないな。


 「さて、残りをかたづけるとするか。」


 俺は残った魔物を倒しながら、魂を回収し始めた…


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