66.マドーラに移動しました
「じゃあ、僕はもう行くね〜。」
「ああ。新くん、これからの活躍に期待してるよ。今更だが、迷宮制覇おめでとう。」
俺は、この3日間で準備を整え、今この街を出ようとしているところだった。
「ねぇ、でも本当に聞かなくていいの?」
「ああ、いいんだ。儂はこの迷宮の最上階がどんなところなのかは、知らなくてもよい。それはおそらく、この世界の住人が自分たちの手で、やり遂げるものだと思っているのだよ。」
「そっか。じゃあ、またそのうち機会があったら会おうね。」
「気を付けてな…おっと、忘れておった。これを持って行くといい。きっとマドーラで役に立つだろう。」
そういってエルシードは、俺に何かの紋章が刻まれた短剣を渡してきた。これはなんだ?
「これは〜?」
「儂ら4人を表す、紋章が刻まれておる。何かがあったらこれを見せるといい。」
「へぇ〜。わかった、ありがと〜。」
「いや、気にするな。では、汝の旅に幸あらんことを!」
俺は城壁を抜け、マドーラへ向かう。ここからマドーラとの国境まで4時間。そこから一番近いマドーラの都市までは2時間で着く。さらに、そこから目的の中心都市までは2時間半だ。
「さて、じゃあい行きましょう〜。」
俺はボードを出して、全速力でマドーラに向かった…
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ルファーリオを出て、7時間が経った。
かなり頑張って速度を出してきたので、あと少し歩くとマドーラのエルフ達の長老や魔導研究所などがある都市、リューカスに着く。
「あ、見えてきた。あそこかな?」
視線の先に巨大な城壁が現れた。そこの中から、結構高い塔や煙突が顔をの覗かせている。
俺はその入り口まで歩いていく…
「おお〜、やっぱり近くで見るとかなりでかいな。」
俺は入り口までたどり着くと、中に入るための列に並んだ。
ちょうどその時、俺の後ろ方から馬のような生き物に乗った騎士が駆けてきた。そして、すごい形相で入り口の詰所に入っていった。何かあるのかと思い、俺はそれを"身体制御"で聞き耳をたてて聞いてみた。
『た、大変だ!魔族が攻めてきた!急いで伝令を!海の方から、ハイアム、ダロファが落ちた。次はここだ。あと4時間もすればこちらに到着する!防衛の支度とギルドに協力の要請を!』
『わ、わかった。おい、鐘を鳴らせ。緊急警報だ。』
ふむ、どうやら魔族が攻めてきたようだ。魔族は、王都の侵攻以来一度も攻めてきてなかった。まぁ、それは多分準備をしていたのだろう。それで、次に来るとしたらスリングかルクシオかと思っていたが、まさかマドーラに来るとは…俺ついてないな。
とにかく、ここは守らないと、図書館とかが使えなくなりそうだな。ここの図書館は、大陸一の本の保有量を誇る大図書館なのに…
『今、外にいるやつらはどうする?』
『緊急事態だ。とりあえず中に入れろ。』
『分かった。よし、じゃあお前、頼むわ。』
『わかりました…ええ、緊急事態が発生しました。希望者は速やかに中へ。』
なんか、俺らは中に入れられるようだ。列が進みだした。
そんなこんなで中に入れた。さて、じゃあギルドに行ってみるとしよう。さっきの協力要請で、ギルドでも説明があるだろし。
ガランガラン…ガランガラン…
ほら、緊急招集だ。じゃあ、ゆっくり歩いてギルドに行こうか。まぁ、ギルドがどこにあるのかは知らんがな。多分、街の中心部とかだろ。大抵の所はそこだったし。
俺はギルドがありそうな、街の中心部を目指して歩き出す。
にしても、なんでまたマドーラなんかに来たんだ?この間のシルフィードは、王都が魔族大陸に近い場所にあり、潜入しやすかったからだと思ったのだが、そのまま行けば次は海に面したルクシオか、まだそんなに遠くないスリングかと思ったのだが、どうして一番遠いマドーラに来たのだろうか。
多分、勇者が召喚されたからシルフィードに攻め入るのは得策じゃないと考えたのはわかるが、どうして他の近い場所じゃなくて一番遠いマドーラに来る?何か、マドーラを落とすことに利点でも…あ、ここが落ちれば他の国を挟み撃ちにできるか。それに、遠いからマドーラはそんなに魔族を警戒してないから、警備が他に比べると少し手薄な所があるし。
「まぁ、でも攻めてくる魔族の規模にもよるかな?ある程度なら、ここのギルドと騎士部隊でどうにかなるでしょ。」
魔物が500位とかなら、この街だけでもどうにかできるだろう。1000を超えても死傷者がたくさん出るくらいで済むだろう。さすがに2000位になったらこの街は助からない。さてさて、どの程度だろうか?
「あ、あった。」
そんなことを考えていたら、ギルドを見つけた。ここのギルドは入り口からあまり離れていなくて、結構すぐに着いた。とは言っても、十数分は歩いたがな。
カランカラン…
俺はギルドに入る。
『『『『『…』』』』』
入った瞬間、ギルドにいた3,40人くらいの視線が俺に突き刺さる。なんなんだよ…
「え〜と、なんなの?」
俺がそういったのち、俺の目の前にいた冒険者たちが少し避けて、奥からすごく威厳のある亜人のおっさんがやってきた。
「儂はここのギルド長、ルシウスだ。今、魔族が攻めてきた。規模は最低でも3000、ここはおそらく魔族によって制圧される。君のような、まだ将来のある若者が死ぬことはない。早く塔へ逃げなさい。今ここにいるのは、それでもこの街を守るために残った者たちのみだ。」
なるほど、そりゃあ無理だ。せめて、若い奴らは逃がそうっていうことなのかな?
確かにそう考えてみると、今ギルド内にいるのは一部若いのもいるが、基本的には歴戦の戦士みたいなのや、いかにも魔法使いみたいなおじぃさんが多い。多分、若いのもエルフなだけで結構な年がいっているのだろう。
「ふ〜ん、了解〜。」
「いい子だ。もし、運良く儂等が生き残ったらまた会おう。」
「うん、頑張ってね。」
「ありがとう…」
ルシウスは俺に優しく微笑んだ…なんか俺、こんな人たちって結構嫌いじゃないんだよね。
俺はそんなことを思いながらギルドから出る。
ギルドを出ると、都市の中心にある塔に向かって、大勢の人が我先に走っている。どうやら伝令が伝わり、塔へ避難を始めたようだ。俺はどうしようかな?
「どうしようかな…とりあえず、屋根の上で待機してよ。」
俺は、近くの家の屋根に上り、”隠密”で隠れる。そして、そのまま魔族が攻めてくるのを待った…
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