64.迷宮に来て半年が経ちました
迷宮に潜り始めて、およそ半年…160日ちょっとが経った。
今、俺は迷宮の97階層にいる。
ここまで来るのは以外と大変だった。70階層を越えると、ランクはSを超え始め、80階層を超えたあたりからここまで、すべてがボス部屋になっていて、ランクはSSくらいになっていた。
「ギャウォォオオオオ!」
そして今。俺の目の前では怪獣大戦争が起きている。
いや、普通にニーズが元のサイズに戻って戦っているだけなのだが、ニーズもこの半年くらいで成長し、体長は10mは軽く超えている。それに見た目も、角や牙や爪は禍々しく鋭く変化し、胴体は真っ黒い鱗にエメラルド色のラインが入ってかなりカッコイイ感じになっていた。目つきもエメラルド色の瞳がキリッとした感じになり威厳を放っている。それに、幼体から成龍になってランクも上がり、今やランクは測定不能になっているのだ。
まぁ、そんなわけで、なぜそんな状態になっているのかというと、俺がボスと戦うと面白くもなんともないからだ。60階層から、俺はボス戦はニーズやテラに任せているのだ。まぁ、テラは”嵐化”ですぐに終わらせてしまうし、Sがで始めたら流石に辛くなったの、その辺からはずっとニーズがやってる。それに、ニーズの戦闘訓練は今までしてこなかったし、いい機会だと思ったのだ。
「ギャアオゥゥウウウ!」
あ、ニーズがボス倒したわ。じゃあ、次の階に行くかな。
「次に行くよ〜。」
ズズズズ…
「キュウ!」
ニーズはいつものように小さくなり、俺の頭に飛び乗る。
俺は階段を登り、次の階層へ行く。
「さて、じゃあ後2階層。がんばろ〜。」
「キュウゥウ!」
俺は”ワープポイント”を登録した後、扉を開く。
扉を開けると、中には龍種のファイヤー・ドラゴンがいた。ちなみに、龍と竜の違いは根本的な力の違いだと思ってくれればいい。
「よし、じゃあニーズ頑張って!」
「キュウ!」
ズズズズ…
ニーズは元の大きさに戻り、その龍と戦い始める。
「さて、じゃあ俺は隠れるとしようか。『絶壁空間』起動。」
俺は部屋の端で防壁を貼り、ニーズが戦うのを観戦する…
なんだかんだでこの半年に結構いろんなことがあった。今思えば、検証ばかりだったような気もするが、そんなことは気にしない。
まず、迷宮のせいで結構有名になってしまい、外にいるときは仮面をつけるようにしている。俺が、探索記録を塗り替えた日に、たまたま通りかかった別の探求者に聞かれていたようで、町中に噂が広まって大変だった。それで、仮面をつけて顔を覚えられないようにしたのだ。おかげで俺がその探求者だと知っているのは、門番さんとエルシードだけだ。
あ、エルシードといえば、時魔法が使える人を探している時に見てみたら、エルシードが時魔法が使えた。それで、頼んで魔力を出してもらい、時魔法も使えるようにした。これで使えないのは、光だけになったのだ。
他にも、魔物を作るように魔力で物を作り出せないかの研究で、魔力の代わりになるエネルギーを見つけた。どうにも、魔力では作ることができず、仕方ないので”眷属生成”が行われている最中を”神眼”で観察していたら、俺が注いだ魔力が変質して魂となり、そこから魔物になっているのがわかった。それなら、魂そのものを使ったらいけるんじゃないかと思い、魂を使おうとしたところ、俺の魂そのものを操作することができるようにはなったが、使うことはできなかったので、ならば擬似的に自分で魂を崩壊させてみたらどうかと思って、やってみたところ、魔力に近いが魔力よりも高次であるエネルギーができたのだ。それなら、魔法も今までより高い威力で使えたし、魔物を作ったりすることもできた。それに、今は魂が減っても”自己再生”が修復してくれているので、全く問題ない。
それに、魂が操作できるようになったおかげで、世界に魂を破壊されるのを防ぐことができるようになった。まぁ、その代わりに魔力が使えないが、別にそちらを使えばいいので問題はない。
まぁ、とは言っても他にもいろいろできるようになったことなどもあるが、当面は、世界に干渉しない魔法のような物の製作と、”自己再生”などのスキルの研究と、称号やステータスの原理を調べるだけで基本的にはやることは全部だ。
ああ、あと職業の詳細もわかった。
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名前:嘘つきの王
説明:自らを欺き、仲間を欺き、友を家族を欺く呪われた魂の継承
者。全ステータス値の上昇に異常補正。
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全くもって意味がわからん。
そんなことを考えていたら、ニーズも相手を倒したようだ。
「キュウ…」
「ああ、疲れたの?」
「キュウ。」
どうやら、以外と大変だったようで、疲れているようだ。
「じゃあ、もう戻ってるといいよ。『扉、眷属の箱庭』…お疲れ。」
「キュウゥ。」
まぁ、最後くらい自分で倒してもいいだろう。
俺は登録を済ますと、99階層に登った。
「さて、じゃあ最後の階層に行くか。」
今更だが、この迷宮が100階層までだとわかっているのは、時折出てくる数世紀の大魔導士とかの時代の遺跡に、この迷宮は100階層まである、っていう趣旨の内容が書かれた資料が見つかっているからだ。
俺は最後の階段を上った。
階段を上ると、そこには扉はなかった。
だが、代わりに光の玉のような物が宙に浮いている。その玉には、迷宮内…いや、オービスから魔力となった魂が送られているのが、”神眼”で確認できた。
「…なんだよこれ。魔力というよりは魂に近いじゃないか。」
そうなのだ。これは、魔力の塊というよりは、俺が使ってるエネルギーに近い魂のような感じがする。
「とにかく、見てみよう。『解析』」
”解析”は”鑑定”の上位変換で、少し前に変化したのだ。
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名前:世界の意思
種類:高エネルギー体
説明:世界に存在している魂となる直前の魔力。これが魂に変化し
世界中に送られる。
追記:現在、190034666430個の魂分のエネルギーを保持
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「…いやいやいや、どいうことだよ。迷宮ってのは、普通最上階には最強の敵とか、すべてを手に入れられる力とかがあるもんじゃないの?…いや、すべてを手に入れられる力ってのは正解かもしれないな。」
今、これには大量の魂分のエネルギーがある。それを取り込めば、最強になるのは間違いないだろうしな。
とにかく、持って帰ろう。
「流石に、別の物と一緒にするのはまずいよな。『空間生成、隔離部屋』…さて、じゃあ、『扉、隔離部屋』…さて、どうやって持って行こうか?」
触って大丈夫な物なのかがわからない。多分、”霊操作”の応用のような感じで触れば持つことはでいると思うのだが、触って俺が取り込まれたら、元も子もない。
「どうしようか…」
触らずに持っていく…いや、空間の入り口を玉の真下に開けばいけるか?
まぁ、とにかくやってみよう。
「『扉、隔離部屋』…落ちろ!」
俺は扉を玉の真下に起動する。
スゥウゥ…
うまくいった。玉が吸い込まれるように、俺の空間に移動する。
「あ、でもこれがなくなったら迷宮が壊れるとか…ないよな?」
ちょっと恐ろしいことを考えてしまった。どうしよ…
そんなことを考えていると、玉があった場所にまた同じように魔力のような物が集まりだした。
「あ、元に戻るのか。よかったぁ〜。」
どうやら、溜まったエネルギーが0になっただけで、元に戻るようだ。多分問題はなかったのだろう。
「さて、じゃあもう迷宮はクリアしちゃったし、帰ろうかな。」
俺は100階層に”扉”を設置した後、”ワープポイント”から入り口に飛んだ…
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