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閑話:安井 未来の不安《中》

 それから、私はしっかりとテスト勉強を続け、テスト当日を終えて、その答案が返される日になった。

 

 あれから私は、拓巳くんや和くん、しんちゃん、春ちゃんたちと一緒にいることが多くなっていた。


 「神野くんはどうだった〜?」

 「俺は微妙〜。」

 「とか言って、拓巳はまた20位くらいだろ?」

 「石井くんはどうだったの〜?」

 「お、俺は…気にしないでくれ。」

 「ダメだったのね。補習受けることになるのは、また和也くんだけね。」


 テストが返却されて、私たちは食堂でお昼ご飯を食べながら話していた。


 「安井さんは〜?」

 「しんちゃんが教えてくれたおかげで、かなりよかったと思う。」

 「さすが、未来。和也くんとは違うね〜。」

 「やめてくれ…」

 「ははは〜。石井くん、ファイト!」

 「ねぇ、そういえばしんちゃんは?」


 まだ、しんちゃんの結果を聞いていなかったので、どうだったかを尋ねた。


 「僕?僕はいまいちだったよ〜。」

 「え⁉︎あんなにしっかり説明できるのに?」

 「説明ってなんだ?新ちゃんなんかしたの?」

 「わからないとこを教えてあげただけ〜。」

 「そうなんだけど、しんちゃんできなかったの?」

 「まんまり良くなかったよ〜。」


 しっかりと理解していて、私たちに教えてくれているみたいだったので、きっとかなりよかったと思ったけど、しんちゃんはあまり良くなかったと言っていた。


 「そ、そっか。」

 「さて、じゃあそろそろ…」

 「そうだね〜。」

 

 そろそろっていうのは、テスト結果の発表のこと。じゃんけんで勝った順番に、自分の順位を言うことになっている。


 「「「「最初は、グー…じゃんけん…ポン!」」」」

 「よっし、一抜け。」

 「じゃあ神野くんは何位だった?」

 「俺は、21位だった!」

 「ほらやっぱり、また20位くらいだ。俺、間違ってなかっただろ。」


 拓巳くんは、私たち5人の中では2番目に頭がいい。その次は春ちゃんで、そのあとはしんちゃん、和くんと続く。


 「ははは〜。さぁ、次いこう。」

 「そうね。」

 「「「最初はグー…じゃんけん…ポン!」」」

 「あ、俺かよ。拓巳の次って嫌なんだけど、パスはありか…?」

 「もちろん、ないから。観念してさっさと順位を言いなさいよ。」

 「はいはい。俺は327位だったよ。拓巳と300位以上離れてるから、言いたくなかったんだ…」

 「あれま〜。赤点はあった〜?」

 「…あった。英語と数学。」

 「英語は2回赤点だったし、補習確定ね。残念だったわね。」


 私たちの学校では、1学期に2回テストで赤点を取ると、赤点補習がある。和くんは前回、国語と英語が赤点だったので、英語が補習ということになる。


 「今度は、って言ってたのは誰だったっけ〜?石井くん。」

 「う…」

 「次は未来にでも教えてもらいなさい。」

 「え、私⁉︎な、なななんで?」


 この頃から私は和くんに惹かれていた。正しく言うと、最初に私を助けてくれた時から、ずっとそうだった。今まで誰とも付き合ったことはなかったけど、一眼惚れしてた。学校でも、気さくに話しかけてくれるし優しかったから、尚更好きになっていた。


 「だって未来、頭いいじゃん。」

 「そ、そうだね。うん。」

 「さて、次いこうか。」

 「「最初はグー…じゃんけん…ポン!」」

 「あ、私ね。私は29だったわ。まぁ前回より少し落ちたけど、悪くはないかな。」

 「前回は26だったんだっけ?まぁ、3位くらいは誤差の範囲内だろ。」

 「そうだね〜。」

 「じゃあ最後は、しんちゃんと安井さんだね。」

 「どっちが先がいい?」

 「じゃんけんしろよ…」

 「あ、そう?」

 「そうだ。ほら。」

 「しょうがないな〜。じゃあやろっか?」

 「うん、そうだね。」


 残るは私と、しんちゃんだけになった。


 「最初はグー…じゃんけん…ポン!」

 「あ、安井さんだね。どうだった〜?」

 「ええと…私は、……1位。」

 

 前回も1位で、なんか言うのが恥ずかしい。


 「おお〜。さすが、安井さんだね〜。」

 「やっぱりすごいな。俺は、300以上だったのに…」

 「自分で言って、落ち込むなよ。」

 「さぁ、最後はしんちゃんね。何位だったのよ?」

 「僕は、209位だったよ〜。半分より下だね〜。残念。」

 「また新ちゃんは、半分くらいか。」

 「で、数学は何点だったのよ?私たちに教えてたんだし、結構できたんでしょ?」

 「え?別に57点だったよ〜。」


 しんちゃんが、私たちに教えてくれていた範囲が、今回のテストの範囲のほとんどだったので、しんちゃんができない筈はないはずなのに、しんちゃんは私より点数が低かった。なんか、おかしい気がする。


 「また、うっかりど忘れでもしたの?」

 「…うん、ちょっと緊張しっちゃってね〜。」

 「新ちゃんは、またそれか。しっかりしろよな。」

 「ははは〜。次は頑張るよ。」


 そんな感じにお昼は終わり、帰る時間になった。


 私は、春ちゃんと一緒にバレー部に入っていて、和くんと拓巳くんはバスケをやっている。しんちゃんは家が忙しくて、部活には入っていない。和くんと拓巳くんは、もともと中学からバスケをやっていて、そのまま高校でもバスケ部に入った。私は、前は美術部だったけど、春ちゃんに誘われてバレー部に入った。先輩も優しくて、いい部だと思っている。




 「あ、ごめん春ちゃん。教室に忘れ物しちゃった。先校門で待ってて。」

 「わかった。校門で待ってるね。」


 カバンに入れたと思っていた筆箱がカバンの中にないので、教室に置いてきてしまったみたいだった。


 私は教室に向かう。



 「ええと…あ、あった。」 


 案の定、筆箱は机の中に入っていた。


 「じゃあ、筆箱もあったし、帰ろうかな…いや、しんちゃんは確か、テスト置きっぱなしだったよね。」


 帰ろうと思ったが、しんちゃんがテストの答案を持って帰っていないのを思い出した。この時私は、しんちゃんが本当にテストが、できていなかったのか気になった。

 しんちゃんは、いつも持ってきているもの以外は、ほとんど机の中に置いて帰っている。今日も、カバンに何も入れずに帰ったから、もしかしたらテストの答案が残っているかもしれないと思った。


 「しんちゃんの机は、一番後ろの右から3列目…あ、あった。」


 机の中には、やはりテストの答案が残っていた。


 「あ、本当に57点だ。って、あれ?」


 確かに、テストの点数は57点だった。しかし、一箇所もバツがついていなかった。


 「あ、こっちも。もしかして…」


 他のテストも見たが、全て点数はそこまでではないが、一箇所たりともバツがなかった。しかも、全てがほぼ平均点だった。



 「もしかして…しんちゃん、わざと点数取ってない?…なんてことはないよね。きっとたまたまだよね。うん、春ちゃんも待ってるし早く行こ。」


 この時は、ただの偶然かと思った。


 その後も、同じようにそうだったので、今はしんちゃんがわざわざ点数を取っていないのを確信している。


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