60.迷宮に行こうとしました
俺はルーネにもらった鍵の部屋に行く。
「ええと、203は、ここかな?」
ガチャッ…きぃぃ…
俺は部屋の鍵を開け、部屋に入った。
部屋は6畳くらいで、ベットとテーブル、あとはタンスがあるくらいで質素な部屋だった。俺はそこに護衛のときから持ちっぱなしのバッグを置き、中身を”アイテムルーム”に戻したり、タンスにしまったりする。
「これでよし。じゃあ迷宮に行こうかな。」
「…キュ、キュウゥ?」
「あ、起きた?」
護衛依頼が終わって、移動し始めた頃からニーズは俺の頭の上で寝ていたのだ。なんとも器用である。
「じゃあ行こうか?」
「キュウゥウ?」
「迷宮だよ。」
「キュウ!」
どうやら分かっていなかったようなので、教えてやると尻尾をバタバタして、早く行こうと言わんばかりに俺を急かしだした。前にニーズに迷宮のことを教えてやったら、かなり興味を持っていたのだ。と、言うよりは、迷宮の中なら大きくなっていいと言ったのが原因だと思う。
「ほら、わかったから。」
キィイイ…ガシャン…ガチャッ
俺は、部屋から出て、鍵を閉めた。
「じゃあ、これを預けたら、迷宮に行こう。」
俺は鍵をルーネに預け、宿を出た…
「おぉ〜、やっぱり近くで見ると大きいね〜。」
「キュゥウウ〜!」
俺は迷宮の入り口に来た。入り口には門番のような人が立っていて、そこから人が出入りしているようだ。俺もそこから入ればいいのかな?
俺は迷宮の入り口に向かう。
「おや、ずいぶん若い探求者だね。カードはあるかい?」
門番さんは鎧を着た初老なおっさんで、優しげな雰囲気を纏っていた。
「これでいい?」
「ああ、初めてなのか。冒険者のギルドカードじゃなくて探求者の方のギルドカードだよ。」
ん?探求者の方ってなんだ?
「その様子じゃ、まだ登録してないようだね。登録してからおいで。探求者総合援助協会こと、探求者ギルドは冒険者ギルドの隣にあるから。」
「そのカードがないと入れないの〜?」
面倒だから入れてくれないかな?
「ああ、知らないようだね。ここで、迷宮に入った人を確認してるんだよ。その日から1ヶ月以上出てこなかった場合に死亡扱いとしたり、一緒に入ったパーティの人数が出た時に足りなかった時、その人のいない理由を聞いたりしてるんだよ。他にもいろいろあるけど、基本は探求者の援助と情報の共有のために義務になってるんだ。」
「ふ〜ん、じゃあまた明日にでも出直すよ〜。」
「うん、そうするといい。ギルドはすぐそこにあるから。」
「了解〜。」
しょうがない。登録に行くか。
「じゃあ、ギルドはすぐそこにあるはずだから、さっさと登録して今日は早めに戻って、”メインルーム”に久しぶりに帰るとしよう。」
俺は門番さんに言われた方に行く。
って、本当に近いな!
ギルドは言われた方に歩いて2分程度で着いたぞ⁉︎近いにしてもこれは近すぎだろ…まぁいいや、さっさと登録を済まそう。
俺はギルドに入る。
カランカラン…
中には、あまり人はいなく、迷宮での収穫を換金する場所と、受付があるくらいだった。
俺は受付へと向かう。
「ようこそ、探求者ギルドへ。ご用件はなんでしょう?」
「えっと、登録したいんだけど〜。」
「新規ですか。少々お待ちください。」
ガサゴソガサゴソ…
受付嬢が手前にある紙をあさってる。なかなか見つからないようだ。
「あっ、ありました。これに必要事項を記入してください。」
「ほ〜い。ところで、なんでそんなに紙が見当たらなかったの〜?」
「すみません。ここへ来る人のほとんどが、別の迷宮に行っていて、そこのギルドで登録を済ませてくる人が多く、このギルドでの登録をされる方はあまりいないんです。」
「へぇ〜。じゃあ記入してくるね〜。」
確かに、ここは一番難易度の高い迷宮だし、他の迷宮に行ってからくる人が多いのは当然だな。
「よし、ええと…名前はシンでいいか、職業は、魔物使い、技能ってのは…なんだろ?ねぇ、技能って何を書けばいいの?」
「それは、パーティを組む時に”鍵開け”や”罠解除”などのスキルを持っていると優遇されやすいので、そこに使えるスキルを記入していただいています。まぁ、いわば自己アピールです。それを見て、我々がパーティなどを紹介したりしています。」
「ふ〜ん、じゃあ書かなくていいや。えっと次は…冒険者ランクはAAで、使用中の宿は天使の安息、他は…書かなくてよさそうかな?はい、これでいい〜?」
「はい、大丈夫です。ですが、技能は記入しなくてよろしいのですか?メンバーを探しているパーティなどに紹介はできませんが。」
「うん、問題ないよ〜。」
「そうですか。わかりました。では少々お待ちください。」
そういって、受付嬢は奥に引っ込んだ。
さて、今ここには誰もいないし、何をしようか?
さすがに午後3時では、迷宮から帰ってくる人もいないようだ。ギルド内には、換金をする所と受付にいる人以外は俺しかいない。
「キュゥウ?」
「ああ、今日は迷宮には行けなさそうだよ。」
俺の頭の上でニーズが鳴くので、返事をしてやる。
「キュウ…」
「まぁ、明日には行けるんだから今日は我慢してな。もう戻ってる?」
「キュウ。」
「そっか。じゃあ後でね。『扉、眷属の箱庭』」
俺は誰にも見えないように、俺の陰で扉を開き、ニーズを戻す。
「さて、じゃあどうしようかな?」
「お待たせしました。シン様、こちらへ。」
おや、冒険者ギルドの時とは随分違って早いな。
俺は受付に戻る。
「では、まずこちらがカードとなります。魔力を注ぐと登録が完了されます。」
「了解〜。」
「では、探求者ギルドについて説明は必要でしょうか?」
「うん、お願い〜。」
「ではご説明します。探求者ギルドは、正式名称”探求者総合援助協会”といい、迷宮に潜る人を援助するものです。ここでは、サポーターの派遣やメンバーを必要としているパーティへの紹介、迷宮内の地図や情報の公開や迷宮内で獲得した物の換金などを行っています。他にも、迷宮内での探求者の生存確認やー」
まぁ、つまりは色んな協力をしてくれるってことだ。
「ーなどを行う機関となっております。詳しくは、そこに置いてある探求者ギルド案内を読んでください。」
「ほ〜い。」
「では、これからの健闘をお祈りいたします。」
「ねぇ、迷宮の情報がある所ってどこ?」
「それなら、ギルドを出て右側にしばらくいった所に図書館があります。」
「ありがとね〜。」
じゃあ登録は終わったし、図書館に行こう。さっき、迷宮内では罠があるとか、宝箱があるとか、いろいろ言っていたので、まずは情報収集をしようと思うのだ。
カランカラン…
俺はギルドを出て、図書館に向かった…
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