58.護衛をしました
「さて、じゃあ自己紹介でもしておくか。」
俺らは、商隊の一番前の馬車に乗り、馬車は出発した。それから10分くらいして、今に至る。
「俺は、ガルト。”月光”のリーダーをやっている。職業は重剣士だ。獣剣の二つ名を持っている。よろしく頼む。」
さっきの怒鳴った男が自己紹介をする。
「俺はイートンだ。職業は同じく重剣士。よろしく。」
「僕はヨルク。職業は剣士だよ。いやぁ〜、でも”悪霊”がこんな子供だとは思わなかったよ。よろしくね。」
「私はミランダ。職業は魔法使いです。しばらくの間お願いします。」
それに続き、メンバーが自己紹介をする。
見た目は、ガルトとイートンがプロレスラーみたいな体型で、イートンは細め、ミランダはローブでよくわかんないが顔は結構美人だ。
「僕は、シン。職業は魔物使い。こっちがニーズ、こっちがテラだよ。他にもいるけど、普段はこの子達だけしか出してないから。よろしくね〜。」
「キュウ!」
俺は、テラをポケットから出して、自己紹介をしてやった。
魔物使いはあまりいない職業で、大抵の人は聞くとびっくりするし、その上魔物を見たらかなり驚く。
案の定、こいつらもかなり驚いてくれたので、ドッキリ成功だな。
「…あ、ああ。そうか…そいつら、安全だよな?」
「さぁ〜。どうだろうね〜?」
「…いや、やめろよ?」
「ははは〜、冗談だよ〜。嫌なことさえしなければ、別にテラもニーズも怒んないよ〜。」
「そうなんだ〜。ねぇ、そのテラって触ってもいい?」
イートンは結構軽い性格のようだな。このタイミングで触ろうとするやつは、滅多にいないと思うぞ?
「大丈夫だよ〜。」
「じゃあ…」
ふにふに…
「おお〜。なんとも言えない触り心地!いいね、これ!」
「いいでしょ〜。あ、テラ。大きくなれる?僕が座れるくらい。」
この間、テラを床に下ろしている時に、その上に転んでしまったのだが、結構ふにっとして痛くなかった。これに座ったら気持ちいいかなって思って、頼んでみたら普通に座らせてくれたのだ。
そんなわけで最近、テラによく座る。座ると丁度よく沈んで座り心地がいいのだ。それに、テラも嫌ではないらしく、問題もない。
そんなわけで、テラに大きくなってもらう。テラは”収縮”で縮んでいただけなので、本当はかなりの体積があるのだ。一度、普通の状態に戻ってもらったら、25mプールくらいはあった気がする。元々はサッカーボールくらいだったのだが、いつもポケットに入れていたせいで俺の魔力を吸い、えらく巨大化してしまった。
むにむに、むにむに…
「よっこらしょ。ふぅ〜…」
俺はテラに座る。これなら馬車でお尻が痛くならないように、魔法を使わなくて済むので一石二鳥だ。
「なに!それはでかくなるのか⁉︎」
「ははは〜、いいでしょ〜。これで馬車でも辛くないのだ〜。」
「へぇ〜、いいね、それ。僕も座っていい?」
「テラ、もう少し大きくなって〜。」
むにむに、むにむに…
「よし、座っていいよ〜。」
「おお〜。よいしょっと…ああ〜、これは楽だね。」
俺とイートンはテラに座る。
俺、こいつとは仲良くやっていけそうな気がするわ。
「…たく、面倒なのが増えたな。」
「ふふふ、そのようですね。」
「頑張れ、ガルト。」
「はぁ〜。」
そのまま、のんびりと移動が続いた…
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護衛6日目。
俺は、相変わらずガルトたちと前で護衛をしている。この6日間で、ガルトたちと結構仲良くなった。
野営は、俺はゴブリン兵団に任せて寝てたし、通常時も特に何事もなく、ただ馬車に乗ってるだけだった。
だが、ここまで何事もなく来たが、どうやらずっとは続かないようだ。
少し先の林に人の気配がする。俺は、馬車に乗っている間、”空間掌握”で半径1kmくらいを警戒していたのだが、明らかにこちらを待ち構えてる2,30人程度の集団と、その先にアジトのようなところに100人くらいがいる。
「ガルさん〜。」
「ん?どうかしたか?」
「この先の林に盗賊っぽいのがいるけど、どうする〜?」
「なにぃ⁉︎なら、後ろのやつらにも教えて、一旦止まったほうが…」
「倒しちゃっていいなら、倒すんだけど〜?」
「あ、ああ…倒せる程度なら倒してくれて構わないが、大丈夫なのか?」
ガルトたちは、俺が結構強いことを知っているので、やって良いかと聞けば許してくれる。
「大丈夫だよ〜。戦うのは僕じゃないし〜。そんなにいっぱいはいないし〜。」
「そうか。なら、やってくれてかまわん。」
「りょうか〜い。」
よし、言質はとった。やるかな。
「『我が呼び声を聞け、来たれ眷属よ』…よし、かかれ〜。」
「「「「グギャッ!」」」」
俺はゴブリン兵団を呼び出し、盗賊を倒しに行かせる。
今回はキングx8、ナイト、ウィザード、ソルジャーx20ずつの68匹だ。そいつらは”眷属の箱庭”で俺が直々に訓練をつけ、今も自己訓練をしているの上に、装備も俺が作っているので、ランクは本来DのやつらもC以上はあると思う。
『な、なんだこいつらは⁉︎』
『知るか!お前らでどうにかしろ!』
『そんなこと言ったって…うわぁぁぁ!』
『おい!お前大丈夫か⁉︎…へ?…ぎゃぁぁぁ!』
『よくも、てやぁぁ!…ぐっ、え、や、やめ…うぎゃぁぁ!』
前のほうから叫び声が聞こえる。どうせなら、もっと静かにやってくれればいいのに。
「…なぁ、大丈夫なのか、あれは。」
「ははは〜…問題ないと思うよ〜。」
「グチャグチャの屍体とか、持ってこないよな?」
「あ〜、どうだろ〜?持ってくるかも。」
多分、そこまでグチャグチャにはなってないと思う。
一応、賞金首があるかもしれないから、顔は潰さないように言ってるのだ。
「はぁ〜…まじか。自分でどうにかしろよ?」
「じゃあ、燃やす〜。」
「あれ?シンって火魔法使えたのか?」
「いや〜、ゴブリンが。」
「ああ、ウィザードもいるのか。」
ゴブリンにどうにかさせればいいよな。
「うん、そろそろ戻ってくるんじゃないかな〜?」
「まじか。俺は逃げるぞ。」
「逃がすか〜っ!」
俺は、逃げようとするガルトの首元を掴んで、ゴブリンが戻るのを待つ。
「「ギャッ!」」
少しして、ゴブリンたちが戻った。ちゃんとまだ、完全には死んでいない状態になっている。
こうすれば、まだそんなに世界に吸収されていない魂が回収できるのだ。
俺は、そいつらの首をかたっぱしから切り落とし、魂を回収する。
「うわっ、こんなにかよ…」
「ははは〜、ガルト弱〜い。」
「俺はこういうのちょっと苦手なんだよ。」
冒険者なのに、ガルトは屍体が苦手だ。なんとも不思議である。
「うん、知ってる〜。じゃあ、この中に賞金首はいる〜?」
「…はぁ。ええと…って、こいつら”赤竜”じゃねぇか⁉︎」
ガルトが首の一つの見て言う。
「”赤竜”って〜?」
「お前知らねぇのか!この辺の盗賊団の幹部格の盗賊団だぞ!」
「ふ〜ん、じゃあ賞金首結構いそうだね〜。」
「結構どころか、20はいるんじゃねぇか?」
「おお〜。じゃあ早く見てよ〜。」
「あ、ああ。そうだな。」
ガルトは、賞金首がいないか見始め、俺はウィザードに胴体を燃やさせる…
「こいつが頭、そいつらが幹部格、その辺が中級で、残りはほとんど下っ端だ。」
「へぇ〜、結構いるね〜。」
「つーか、これのどこがそんなにいないんだよ!確かにゴブリンの量が多かったから、おかしいとは思ったが、こんなにいるとは思わねぇーよ!」
「やってくれて構わんって言ったじゃ〜ん。」
ちゃんと、俺は言質はとったぞ?
「確かに言ったが、こんなにいっぱいだとは聞いてねぇー!」
「ははは〜、いいじゃん、問題はなかったんだしさ〜。」
「はぁ…やっぱ、お前イートンと同類で、俺をからかって楽しんでるだろ?」
「と〜ぜん。」
「だぁぁぁぁ!」
「はははは〜。」
あ〜、面白い。これだからガルトはおもちゃにされるんだよ。
こんな感じに護衛を続ける…
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