54.暇をつぶしました
「さて、じゃあ「あなた!今すぐ私を解放しなさい!」…は?」
なんか店を出た途端に、青髪の人間の水属性持ちが騒ぎ出す。
「なんで僕が君を解放しなきゃなんないの?」
「私はセリーナ・アトクリフですわ!貴族ですのよ!平民風情が私を奴隷にして許されると思って!」
うん、こいつアホなんじゃないかな?貴族ったって元だろ?どうせ潰れて金がないから売られたんでしょ?なんで俺がそんなのを解放しなきゃなんないわけ?
「うん、”元”貴族でしょ?それなら僕はシルフィード王国の国賓だよ?僕に逆らう?」
「えっ…そ、そんなの嘘ですわ!」
「別に、信じなくてもいいよ〜。さて、じゃあうるさいし、さっさと送るかな?『扉、悠久の監獄』」
俺の前に空間の穴が開いた。
「よし、じゃあ行こうか〜。」
「え、それはなんですの?」
うん、うるさいのは放置でいいや。さっさと入るかな。
俺は鎖を持ったまま中に入る。というか後ろの奴隷どもを、無理やり引っ張り入れる。逃げようとして引っ張られてるみたいだが、ステータス差がありすぎて何にもなってない。
「”主”、おかエり。ソレ、”奴隷”?しマウ?」
空間を越えると、アフラが迎えてくれた。
アフラはノーマル・ゴレームで、ロメを作る前に作った眷属だ。
ノーマル・ゴーレムは、ゴーレム系の魔物の中で一番下のランクのゴーレムで、ゴツゴツとした岩が集まってかろうじて人型になっているっていうのが普通だが、アフラは違う。こいつは元ノーマル・ゴーレムだ。
ゴーレムっていうのは魔物と魔道具の二つの種類がある。魔物はその辺で魔石を核として生きているやつで、自分の意思で動く。魔道具は魔石に陣を刻み作る人形、こちらは単純な命令をこなすだけのロボットのようなものだ。アフラはそのどちらも兼ねている。
ノーマル・ゴーレムとして作った眷属から、生きたままで核となっている魔石を取り出し、そこに新しく作る体の動かし方や知識などを刻み込み、全く別の体に埋め込みなおしたのがアフラだ。
体はゴツゴツとした岩ではなく、ミスリルとオリハルコンの合金で作られた精妙な人型、動きも人と同じように動ける。力は人の数十倍はあり、知能も高いのだ。まぁ、きちんと動けるようになるまで、数十回はやり直したがな…
「あ、うん。一人に一つずつ部屋をあげて〜。」
「わかっタ。”ロメ”にオシえる?」
「うん、そうしておいて〜。」
「なラ、ヨぶ。」
アフラの頭上に魔法陣が浮かび上がる。
これで、ロメに向かって魔力が流れていくようになっている。
「イマ、よんダ。」
どうやら伝わったようだ。少し待てばロメがくるだろう…
「あ、来た。」
俺の近くにある扉が開く。
「主、この者たちが買ってきた者ですか?」
「そ。後は頼むね〜。」
「承知しました。主はこの後は?」
「しばらくセビアで、テラとニーズと遊んでくる〜。」
「そうですか。いってらっしゃいませ。」
「うん。行ってくるね〜。」
よし、じゃあ後のことはアフラとロメに任せて、遊びに行こうか。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!ここはどこなのよ!私をどうするつもりなのよ!」
あ、またうるさいのが喋り出した。さっきまでは黙ってたのに、うるさいな〜。
「やだ、待たない。じゃあロメ、教育よろしく〜。」
「承知しました。」
「ちょっと!待ち「うるせ〜『扉、オービス』じゃあね〜。」な、さいよ…」
うるさいのを放置して空間をまたぐ。
まぁでも多分、帰ってくる頃には静かになってるだろう。ロメには、魂と魔力を変質させない程度なら、何してもいいって言ってあるし。
「さて、じゃあ遊びに行こうかな〜。『扉、眷属の箱庭』…ニーズ、おいで〜。」
扉を開いて、ニーズを呼ぶ。
「キュウ!」
おお…ニーズが飛び出してきた。
「ははは〜。よし、じゃあ遊びに行こうか〜。」
「キュウ!」
ふむ、随分と嬉しそうだな。そんなに遊びに行きたかったのか。
「じゃあ、まだ行ってない東側に行ってみようか?」
「キュウ〜!」
何があるんだろ?武器も食べ物も奴隷も、もうあったぞ。他に何があるんだろうか?
俺はワクワクしながら東側に向かう…
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「う〜ん…なんか違う。こういうのが欲しかったんじゃない。」
俺は東側に来ていた。東側にあったのは賭け系の建物だった。あと花街。
そして、今俺はその遊楽街でニーズと遊んでいたんだが…
「また、にぃちゃんの勝ち!本当に強ぇな!」
腕相撲っぽいので、さっき200連勝をあげたところだ。ステータス差がありすぎて面白くもなんともないのだ…
ここで、俺に挑戦者を募って、一回5Bで勝ったら今までの掛け金が全部手に入るという物だ。
他にもいろいろやったのだが、ギャンブルはやり方がよくわかんないし、魔物の戦闘観戦はいつもしてるからあんまり面白くないし、ダーツとかビリヤードっぽいのにはもう飽きた。
ということで、その辺にいたにぃちゃんと一緒に始めたのだ。向こうから声をかけてきて、始めたんだが、つまんないけど稼ぎはいい。だが問題は、いつやめればいいのかがわかんないことだ…どうしよ。
「さぁ!にぃちゃんに立ち向かう奴は、もういないのか!」
「う〜ん、そろそろ帰っていい?」
「あ、ああ、そうか。じゃあ、あと一人ってことで頼む!俺もこれで稼いでんだわ。」
「じゃああと一人ね。」
よし、あと一人やったら、別のところに行こう。
「さぁ!挑戦者は誰かいないのか⁉︎」
「おう、俺がやるぜ!」
「おぉっ!これは随分と強そうな兄ちゃんだ!」
「一回5Bだな?」
「おうよ!勝ったら全部やるぜ?」
「よっしゃ!やってやるぜ!」
「じゃあ、構えて…レディ〜、ゴォ!」
「ぬうぉぉぉぉおおお!」
兄ちゃんが一気に力を込めてくる。
結構強いな。大体筋力値が56くらいかな?
俺は100戦目くらいから、筋力値当てゲームをしている。結構近い値まで当たるようになった。
「よいしょ。」
ガンッ
「おお〜、またにぃちゃんの勝ち!残念!」
軽く、勝負を終わらせる。
「くっそ!なんでそんなに強ぇんだよ!」
「さぁ〜?それは俺にもわかんない!」
「ねぇ、筋力値いくつ?」
「あ?56だが、それがどうかしたのか?」
「よっし、当たり。いや、なんでもないよ。やった人に聞いてるんだ〜。」
うし、当たったぜ。意味はないが。
「さて、じゃあ今日はここまでだ!まいど!」
俺らの周りにいた人だかりが減っていく。
「さて、じゃあ一旦戻るか!」
「そうだね〜。」
俺らはにぃちゃんと初めに会った所に戻る…
「いやぁ〜。にしても、随分稼げたな!」
俺らは、道の端の木箱の置いてあるスペースにいる。ここの前を歩いている時に、にぃちゃんに声をかけられたのだ。
で、にぃちゃんに腕相撲っぽいので勝ったら、金をくれるって言うからやって勝ったら、いろいろあってこうなったのだ。
「で、いくらくれるの〜?」
「あ、ああ、分け前だったな。半分が…1010Bだから、1100Bだ。はいよ!」
「うん、じゃあ僕は行くね〜。」
奴隷1人分が返ってきたくらいだな。まぁいい、帰ろ。
「えっ!行っちまうのか⁉︎」
「じゃあね〜。」
分け前をもらって、さっさと立ち去る。面倒だから、こういうのは二度とやらないようにしよ。
「ちょっ⁉︎おま…」
さっさと立ち去る。面倒なので無視だ。
「さて、もう”メインルーム”に戻って検証でもやろうかな?」
「キュウ…?」
ニーズも疲れているみたいだし。さっさと戻るとしよう。
俺は出てきたとき見られると困るので、裏道の人通りの少ない道に移動する…
「じゃあ帰ろうか。『扉、メインルーム』…よし、戻るか。」
俺は空間をまたぐ…
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