50.出発しました
「やっぱ行くのか?」
「うん。もちろんだよ〜。」
ついに1週間と少しが経ち、俺が王国を出る日になった。俺らは今、城壁の出口にいる。
あれから、一応普通の旅の準備も買って、”アイテムルーム”にしまってある。それ以外は、検証してるくらいで何もしなかった。
「そうか、気をつけろよ?」
「僕が危ない目にあったら、テラたちが助けてくれるから、大丈夫だよ〜。」
「まぁそうだな。俺らも頑張るから、そっちも頑張れよ。」
「うん、頑張ってね〜。」
「おうよ。」
「じゃあ次に会うのは、何かあったらか、魔王倒したらね〜。」
「ああ、じゃあな。」
俺は、神野たちに背を向け、歩き出す。
神野たちが後ろで手を振ってるのが見える。俺はそれを放置し歩き続け、見えなくなるところまで行く。
「さて、この辺で大丈夫かな?『扉、アイテムルーム』…よいしょ。」
俺はフライトボードを取り出す。
「じゃあ、行くかな。スピード出せば、9時間で国境くらいまで行けるだろうし。」
俺はボードに乗り、かなりの速度で走りだす。
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出発から1時間。国境までの道のりをひたすら走り続けている。
出発から2時間。国境までの道のりをひたすら走り続けている。
「だぁぁぁぁ!暇だ!」
何もすることがない。暇なのだ。最初は景色を見るだとか、単純に楽しむだとかできたのだが、さすがに2時間もすれば飽きる。
「次の大きな街で休も…」
このまま走り続けてたら、移動する気が起きなくなる。王都から大体80kmくらいは移動し、4,5個の街を通り過ぎたが、まだ200kmくらいはある。こんなのを続けるとか憂鬱だ。
「もうそろそろ歩くかな。」
次の街が見えたので、俺はボードから降りる。さすがにこのまま行くと、目立ってならない。ここに来るまでにも、通り過ぎた人たちに奇異な物を見るような目で見られたし。
「キュウ〜…」
「ああ、飽きたね〜。」
どうやら、ニーズも飽きてきてたらしい。
「走るか?」
「キュイ!」
「じゃあ、街の手前までね?」
俺はニーズと走りだす。
「とうちゃーく!」
「キュウ!」
街の入り口に着いた。街は4mくらいの壁に覆われ、その入り口には街に入るために、人が並んでいる。
「僕らも並ぼうか〜。」
俺はその列の最後尾に並ぶ…とは言っても、数人しかいないが。
「次。身分を証明できるものは?」
「ほい、これでいい?」
俺はギルドカードを出す。
「ああ、問題ない。通っていいぞ。ようこそ、ミュートへ。」
「ありがとさん〜。」
何てことなく通り過ぎる。
「おぉ〜、結構広いな。」
中に入ると、れんが造りの建物が立ち並ぶ大通りが目に入る。王都よりはずいぶん小さいが、それでも小さい市が1つ分はある。まぁまぁな規模の街だ。
「止まってみたけど、まだ12時くらいだし。することないんだよな〜。」
飽きたから立ち寄ってはみただけで、これといってやることはない。第一、ここが何で有名な街なのか知らないんだから、どうすることもできない。
「まぁ、とりあえずギルドに行って、そのあとはお昼かな?」
まぁギルドに行けば何かしらはあるでしょ。
俺はギルドに向けて歩き…出せない。ギルドどこだし。
「ギルドがどこだか、知らないんじゃん。誰かに聞こ…」
仕方がないので、その辺の人に聞けばいいだろう。どこで聞こうかな〜。
「へいっ、いらっしゃい!ルイブの実はいらんかい?みずみずしくて美味いよっ!」
威勢のいい声でおじさんがルイブの実を売っている。ルイブの実ってのは、赤いミカンみたいな見た目の木の実で、味はブドウとリンゴの中間みたいな感じだ。
俺は結構気に入ってる。ここでいいや、買うついでに聞こう。
「20個くれる〜?」
「あいよっ!40Bだよ。ずいぶんと買うね〜。」
「ははは〜、最近残りが少なくなってたんだ〜。ほい、あとギルドってどこにある〜?」
最近”アイテムルーム”の残りが尽きかけていたので、ちょうどよかった。
「ちょうどだな。あいどあり!ギルドはそこの道をまっすぐ行った、突き当たりにあるよ。」
「ありがとね〜。」
俺はルイブの実を受け取ると、背負ってるリュックから”アイテムルーム”に放り込む。
「さて、じゃあ行くかな。」
俺は教えてもらった、道を進む…
カランカラン…
この音ってどのギルドも同じなのかな?
そんなことを考えながら、俺はギルドに入る。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件はなんでしょうか?」
「この街のオススメの食事処と、有名なものって何か教えてくれる〜?」
「はい、食事なら向かいにある”まんぷく亭”がオススメです。この街の有名なものといえば、やはり新鮮な果実でしょうか。この街には果樹園が多数あり、とれたての果実が購入できますよ。」
なるほど。果実買いまくっとこ。
「ふ〜ん、ありがとね〜。」
「いえ、良い1日を。」
さて、まずは昼だな。ギルドの目の前って…これか。
ガチャ…
「いらっしゃい。空いてる席に座っとくれ。メニューはそこにあるから。」
「りょうかーい。」
ふむ、結構混んでるな。
広い店内には、20人くらいの人がいた。俺は適当に空いてる席に座る。
「さて、何にしようかな〜。」
メニューを見ると、結構な数の料理が書いてある。値段は大体が10~15B程度で、懐にも優しい。
「じゃあ、本日のオススメでいいかな。あ、デザートがある。」
適当にメニューを見てたら、珍しいことにデザートが書かれていた。この世界では、砂糖が高く甘いものは珍しい。まぁ多分、ここは果実があるからだろうけど。
「注文は決まったかい?」
「あ、オススメとデザートのオススメ2つ〜。」
「はいよ、待ってな。」
注文を聞きに来たおばちゃんが、厨房に戻っていく。
さて、料理が来るまでテラでも撫でるかな…
プニプニ…
久しぶりにテラをポケットから出し、撫でる。相変わらずよくわからん触り心地だ。
「お待ちどうさん。ブルムとシュルンのサラダとハンドベアーのシチューだよ。パンはそこから持って行きな。」
「おぉ〜、結構あるね〜。」
大きめの皿にシチューが、よそられてきた。
ブルムってのは、キャベツみたいな野菜、シュルンは人参みたいな野菜だ。
「いただきまーす…ふむ、美味い。」
ハンドベアーがかなり柔らかく煮込まれ口の中でとろける。パンもこの世界では珍しく、ふんわりとしていた。
「ふぅ、美味しかった。」
なかなかの量で、かなり満足だ。
「はい、ルイブのパフェとランギスのパイだよ。」
食べ終わった頃に、デザートが来る。ランギスってのは、桃みたいな味の木の実だ。
「おぉ〜、これまた大きいね〜。」
こちらも、パイは普通に1カットだったが、パフェが大きい器にいっぱいだった。
「いただきます〜…!」
おお〜、甘い!この世界に来てからは、久ぶりにこんなに甘いものを食べた気がする。
「ふぅ〜、お腹いっぱいだわ〜。」
美味かった。なかなかいいな、ここ。機会があったらまた来たいな。
「さて、お勘定お願い〜。」
「はいはい。オススメとパイとパフェで…24Bだよ。」
「はい、これでいいかな。」
「まいど。」
「ごちそうさん。そのうち来れたら、また来るね〜。」
「いつでもおいで。」
俺は、まんぷく亭を出て街に出る…
「じゃあ、果実買ったら行こうか。」
俺は中央通りに出て、買い物をする…




