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閑話:松井 新一郎の崩壊《中》

 「…よし、これを一斉送信すれば…これでいいな。さて、じゃ行くか。」


 その翌日、夕食を食べたあとに家を出て、廃工場に催眠ガスや自作の拷問器具などを準備をして、奴らを呼び寄せた。

 俺は隣にある空き家の2階で待機している。全員が集まったら、2つしかない出入り口の1つの鍵は閉めてあるので、残り1つの鍵を閉めて催眠ガスを中でバラまくのだ。もうその為の機械は設置してある。


 『なぁ、お前。後藤さんの大切な話ってなんだと思う?』

 『さぁな。もしかして、後藤さんがいなくなるとか?』

 『テメェ、縁起でもねぇことぬかしてると、しばくぞ?』

 『わりぃ、冗談だ。でもなんなんだろうな?』


 30人ちょっとの不良が集まった。これで全員だ。どいつもこいつもゴミにしか見えなかった。


 「…さて、閉めるか。」


 ギィィイイ…ガシャンッ…ガチャ


 俺は扉を閉め、鍵をかける。


 『おい!これはなんだ⁉︎』

 『知るかよ!こっちが知りてぇよ!』

 『はぁ⁉︎テメェなめてんのか?ゴラ!』


 中で騒ぎが始まる。やっぱりゴミの集まりだ。


 「…じゃあ、眠れ。」


 俺は、睡眠ガスをバラまく為に作った機械のスイッチを押す。

 睡眠ガスの効力は自分で試したので問題無い。ただ、次の日遅刻しそうになっただけだ。

 今日はガスマスクをしているので問題は無い。ついでに顔も隠せる。


 『うわぁ⁉︎なんだこれは!』

 『だから知る、かって、言ってる…』

 『はぁ⁉︎テメ、ェ、何を…』


 効果はすぐに現れる。不良どもが全員眠るのを待つ為に俺は少し待ってから、中に入る…




^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



 「…なんかつまんねぇ。」

 「ぎゃぁぁぁぁああ⁉︎頼む!もうやめてくれ!」

 「…うるせぇよ。黙れ。」


 ザク…


 俺はそれの腕に15本目のナイフを突き刺す。もう既に、両足は使い物にならないくらいにナイフでぐずぐずになるまで切り刻み、それを止血のために炭火で炙った状態になっていた。


 「うぎゃぁあぁああぁあ⁉︎」


 俺は不良どもが眠った後、中に入り全員を縛り上げ、天井に吊るした。そして、その中から一人ずつ下ろして適当に拷問する。そんなのの繰り返しだ。

 初めは楽しかった。自分の怒りが鎮まるようで。

 だが、何事もやりすぎると飽きる。こいつで一応最後だが、あんまりやる気が起き無い。


 「…どうしてくれようか。」

 「頼む、助けてくれ!頼む!」

 「…やだって言ってんだろ?」


 ザク…


 「ぎゃあぁあああぁあ⁉︎あ、あぁ…」


 今度は足にナイフを突き刺す。こいつ気絶しやがった。


 「チッ…足りねぇ。」


 俺はなんでこんなことをしているのかが、わからなくなっていた。

 初めは復讐のつもりだった。憎かった、腹立たしかった。だが、やっているうちにどうなのかがわからなくなったなってきていた。

 そして…自分が狂っていくのが感じられた。

 初めはゴミにしか見えなかった不良どもも、今では愉快な”おもちゃ”にしか思えなかった。


 「ああ、なんでなんだろうな…」


 俺はこんな時なのに楽しくてたまらなかった。


 だから、俺は理解した。俺は壊れてたんだって。



 昔からそうだった。神野や伊藤も、俺は一般に言う”友達”だと感じていなかった。一緒にいると面白い”物”だと感じていた。

 鈴が連れて行かれた時も、真っ先に思ったのは”気に食わない”だった。

 

 俺は、俺の”おもちゃ”に誰かが勝手に触れるのが許せなかっただけだった。

 

 「ふふふ…ふふ、ふふふ…ひっひっひっ…あはははははははは、あはは、はは。」


 なんだか笑えてきた。あんなに考えてた俺がバカみたいだった。



 俺の中の外れていた歯車が、かちっと音を立ててはまったような気がした。

 俺の世界から色が消えていく…


 「あはははは…愉快だな!」

 「ひぃぃぃいい⁉︎」


 さっきの不良が目を覚ます。ああ、いい気分だ。


 「ふふふふ…お前はしばらく遊んでやるよ。」

 「や、やめてくれ!た、頼む、頼むなんでもするから!」

 「あ、なんでも?」

 「あ、ああ。なんでもする。だから!」

 「じゃあ、俺のおもちゃになるといい!ふははははははは…」


 じゃあ楽しむとするかな。人が怯えているのって、なかなかに滑稽だよな。


 俺は、そいつをさんざんおもちゃにした後、証拠を全部きれいに消して、全員を天井に死なないような縛り方で吊るして帰った…












 「ねぇ、おにぃちゃん。最近いつもどこで何してるの?」


 帰ったら、鈴にそんなことを聞かれた。


 「勉強だよ〜。僕ももう受験生なんだよ〜?」

 「でも!こんな時間に外で勉強なんて!」

 「ははは〜、本当だよ?いいところ見つけたんだ〜。」

 「でも…本当に勉強なの?だっておにぃちゃん…」

 「大丈夫だよ〜。ほら、もう夜も遅いんだから寝なさい〜。」

 「う、うん。でも本当にあんなことはやめてね。」

 「ほら、おやすみ〜。」


 さて、俺もいつものやつを終わらせて、寝よう。


 俺は部屋に戻った。


 「さて、じゃあ今日はこれと、それと…後それだな。」


 俺はいつものように、参考書と教科書を取り出し、勉強を始める。こんな生活を始めて3ヶ月半が経った。高校の範囲も半分近くが終わり、最近では専門書にも手を伸ばしている。







 俺はその後は普通の生活を送った。

 勉強は大学のレベルは自分一人ではできないところが多かったので、そこはネットやいろいろな本を読んでどうにかして、高校までの範囲を完璧に身につけ、いろいろな知識をネットや図書館であさり、最近では面白い専門書や技術教本に手をつけている。

 その他にも、武術と訓練はずっと続けているし、料理や裁縫など家事もやっている。

 大体のことは自分一人でできるようになっていた。


 「なぁ、新ちゃん。」

 「ん?どうかしたの、神野くん。」


 神野は俺のことを…いや、”僕”のことを”新ちゃん”と呼ぶようになった。


 「受験どうするか決めたか?」


 もう、公立の受験まで3ヶ月と少し。みんな受験のことを考えていた。俺は、別に勉強しなくても受かれるので、問題はないが。


 「う〜ん、神野くんはどこに行こうと思ってるの〜?」

 「俺はここにしようと思ってるんだ。」


 そう言って、神野は俺にパンフレットを渡してきた。

 俺は帰り道の途中だが、そのパンフレットを読む。


 その高校は偏差値が60ちょっとで、俺らの家から自転車で30分くらいのところの高校。

 うちはバカばっかの中学だったので、うちの生徒では受かるのは厳しいのが多いだろうってくらいだった。


 「なぁ新ちゃん。一緒にここに行かないか?」

 「え?神野くんここ行くの〜?」

 「ああ、俺の偏差値なら受かれるだろうって、先生に勧められたんだ。結構いいところだったし、新ちゃんも一緒に行かないか?」

 「ふ〜ん…考えておくよ〜。」

 「そっか。じゃあ、いい返事を待ってるわ。」

 「ははは〜、じゃまた明日ね〜。」

 「おう、じゃあな!」


 そう言うと、神野は家に入っていった。


 どうしようか…俺は別にどこの高校でもいいのだ。高校で受ける授業分の勉強は、すでに終わっている。だから、学費が安くて近いところがいいと思っていた。

 ここは公立だし、別にいいんじゃないだろうか?神野もいるから楽しめそうだし。


 「まぁ、帰って母さんにでも聞こ〜。」


 俺は、そのあといつものように夕飯を作り、風呂に入って、鈴と母親が帰ってくるのを待ち、相談を持ちかけた。



 「ねぇ、母さん。」

 「ん?どうしたの新一郎?」

 「僕ここに行きたいんだけど、いい〜?」

 「どこに行きたいの?…ええと、ああ!高校のことね!いいわよ。学費も安いみたいだし。頑張りなさい。」

 「うん、ありがとね〜。」



 何てことなく、許しがもらえた。

 というより、好きにしろっていうふうに聞こえた。




 俺は翌日、そこに行こうと思ったことを神野に伝えた。


 「まじで⁉︎」

 「うん、がんばれ〜。」

 「いや、新ちゃんもな⁉︎」


 いや、頑張るの神野だけだぞ?俺は普通に受かれるからな。


 「ははは〜。」

 「でもよかった。断られたらどうしようかと思ったわ。」

 「あ、今からでも遅くない?」

 「いやいや、そうじゃないからな⁉︎」


 俺は神野と普通に学校に行き、いつもと同じような生活をして受験結果の発表日までを過ごした。

 


 そして、合格発表の日が来た。


 「受かってるかな〜?」

 「大丈夫だろ。ちゃんと勉強してきたからな。」

 「もしかしたら僕は受かって、神野くんだけ…」

 「いや、縁起でもないからやめてくれ…」

 「あ、あったよ。残念だったね〜。」

 

 そんなことをしながら、番号を探していたら見つけた。 


 「そこは残念じゃなくて、よかっただろ⁉︎」

 「受かっちゃったね〜。」

 「受かっちゃいけなかったみたいな、言い方しないでくれよ!」

 「ははは〜。冗談だよ…半分は。」

 「残りの半分はなんなんだよ⁉︎」

 「ははは〜。」

 「…ったく。まぁ、一緒に受かっててよかったな。」

 「そうだね〜。」



 その後は学校に行き、報告をして家に帰った。


 その日の夜。


 「どうだった?」

 「合格〜。」

 「よかったじゃないの。おめでとう。」

 「うん、ありがと〜。」

 「じゃあ、制服とか教科書を買う日はいつなの?その日はお母さん仕事休むから。」

 「ええとね…確か、紙に書いてあったと思うから後で教えるね〜。」

 「わかったわ。できるだけ早くね?」

 「ほ〜い。」


 そんなことをしながら、俺は夕飯を食って、部屋に戻り、いつものようにやることをこなして、眠りについた。


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