45.異常が生まれました
俺が扉から出て、見た魔物の様子は一つの真っ黒い塊で、蠢いていた。そして、苦しんでいるようにも見える。
「これか…」
黒い塊から異様な雰囲気を感じる。
「どうなってんだ?」
とにかく鑑定してみよう。『鑑定』!
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名前:ーーー
種族:ナイトメア・ファントムズ
ランク:S
状態:契約不全
スキル:表示できません
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契約不全ってなんや?契約できてないのだろうか。確かにパスがきちんと繋がってないような感覚があるが…
「眷属化したら治るかな?」
とにかくやってみるかな。
『我、汝を眷属として迎えるもの。汝に名を授ける。汝、名を”プロメテウス”とする。』
パスがきちんと繋がった感覚があった。そして、黒い塊の苦しんでいるようなのも治ったが、異様な雰囲気はまだ消えない。
ちなみにプロメテウスってのは、ゼウスの怒りをかった神。世界に嫌われているこいつにぴったりだろう。
にしても、この異様な雰囲気はどうすればいいんだ?消えないんだが…
「どういうことなんだ?」
「おそらく、私の魂に問題があるのかと。」
「…⁉︎」
黒っぽい靄が喋った⁉︎
「主?」
「ええと、ロメ?」
「はい、プロメテウスでございます。」
「えっと…どういうこと?」
黒っぽい塊が人型になり、見た目が黒髪の18.9歳くらいの、まさに黒騎士とでもいうような姿になる。
「本来、この世界の生物の持つ”魂”は、1つです。ですが、私は多すぎる魂を持ってます。ですので。」
「なるほどね。」
そういうことだったのか。ん?なんでそんなこと知ってんだ?
「でも、なんでそんなこと知ってんの?」
「それは私のスキルによるものです。この身体に宿る魂の記憶を閲覧しました。」
「そんなことができんのか?」
「はい。」
鑑定してみるか。『鑑定』
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名前:プロメテウス
種族:ナイトメア・ファントムズ・ロード
ランク:測定不能
状態:松井 新一郎の眷属
スキル:憑依 記憶知識 記憶技能 魂喰らい 霊体変化
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確かに”記憶〜”ってのがある。
「ねえ、この”記憶〜”って記憶してれば使えるのか?」
「はい、私の魂の記憶にあるものならば。」
「なるほど、ちょっとこっち来てくれる?」
「はい。」
ロメを呼ぶ。
「少し痛いかもしんないけど我慢してね?」
「はい、主の仰せのままに。」
「じゃあいくよ?『記憶転写』起動。」
これは本来、相手の記憶を読むために作った”記憶干渉”を応用して自分の意とする記憶を相手に植え付ける精神魔法だ。しかも結構な痛みが伴う。
「…こんな感じかな。どう?」
「主の、武術と魔法についての記憶がこちらに流れ込んできました。」
「うん、じゃあうまくいったね。これで、俺の魔法とかも使える?」
「はい、完全に。」
よし、これで魔法と武術関連の研究が楽になる。これを使えば、世界に干渉しない魔法も、多少は作るのが楽になる。
「ですが、私が世界から拒絶されているうちは、オービスに出ることはできないと思われますが。」
「あ。」
わすれてたわ。記憶云々ですっかりと。
「それどうすればいいかな?」
「申し訳ありません。私の記憶にも似たような事例はあるのですが、解決法は見つかりません。」
「じゃあ、どんな事例があったんだ?」
「はい、それは4つほどありまして、魔物の魂がまだ魔物になる前の、人であった頃の記憶なのですが。」
「ちょっと待て。魔物になる前ってことは、転生したような記憶があるのか?」
「はい、魂は色々な生物となり、世界を循環しています。その中で生物が死ぬと、記憶を見ることができなくし、次の生物に生まれ変わっています。」
ん?ならなんでロメは見れるんだ。
「じゃあ、なんで見れてるんだ?」
「おそらく、私の記憶の閲覧方法が魂自体に干渉しているからだと思われます。」
「なるほど。で、どうなんだ?」
「まず、一つは魔道士による実験。一つはエルフの長老の記憶。一つはこの世界の植物たちの記憶。最後は魔物たちの死んだ瞬間の記憶です。」
「どんなだ?」
その後も俺らは色々解決策を探した…
「あ、面倒だから”改変”とかで書き換えらんね?」
「おそらく、私を書き換えるのは難しいかと…」
「じゃあ、”実現”は?」
「そちらはなんとも。もともと”実現”は今までに確認されていないスキルですし。」
そうなのか!初耳だわ。確かに王国の図書館の中にスキルの研究書があったのに、その中に載ってなかったが、そういうことだったのか。
「試して見る?」
「主に任せます。」
「じゃあ行くよ?」
「はい。」
『ロメは世界から拒絶されない。』
これでどうだ!
「どう?変わった?」
「今、私を拒絶していた物が押しのけられている感覚があります。」
「しばらく待てばいけそう?」
「おそらく。」
「じゃあ少し待ってみようか。」
「はい。」
俺らは少し時間が経ち、どうなるかを待つことにした…
意見、感想等ありましたらお願いします。
 




