35.窃盗にあいました
俺は、今ギルドにいる。
「さて、何の依頼やろうかな〜。」
只今、絶賛悩み中だ。最近、Aランクに上がって、受けられる依頼が増えた。
だが、なんと言えばいいのだろう。ランクが上がると、依頼は火山だったり、海だったりと王都から少し離れたところが多い。俺はできれば遠出はしたくないのだが、遠くに行かないといい依頼がない。その上、人気のない場所じゃないと、派手な魔法が試せない。
まぁつまりは、面倒なのだ。最近ランクが上がったので張り切って、近場にあった依頼を片っ端から終わらせちゃったせいで、遠くのものしか残ってない。もちろん遠くに行くのだから、時間もかかるし手間も多い。だからもう、残ってるのは面倒なやつばっかりなのである。
「う〜ん。どうしよぉ〜。」
「あのぉ…」
「うぅ〜ん…」
「すみません…」
「んんん〜…」
「あのぉ〜。えっと…」
後ろで11,2歳くらいの男の子が用があるのか、誰かを呼んでるみたいだが、誰も反応しない。かわいそうに。
「シンさんだよね?悪霊の。」
「ん?多分そうだけど。」
あれ?俺かよ。誰だろ、見たことないんだが…
「やっぱり!この間お世話になったアルです!」
「ええと。誰?」
男の子が目に見えて落胆したのがわかった。おもしれぇ。
「孤児院で、お世話になったじゃん!」
「うぅ〜ん…」
あ、思い出したわ。この前は汚い格好してたのに、随分マシな風になってるからわかんなかったが、そういや、今日こいつに訓練つけてやるって言ったんだった。
まぁ、その前にからかって遊んでやるとするかな。
「だから、シェード孤児院の!」
「えぇ〜。」
「今日、戦い方教えてくれるって言ってたじゃん!」
「う〜ん。そんなことあったっけなぁ〜。」
「アルだよ!ア・ル!」
「誰だろ〜?」
「シ・ェ・ー・ド・孤・児・院の!」
「わっかんないなぁ〜。ふふっ」
やべ、こいつがあまりに必死すぎて堪えらんなかった。
「…えっと、もしかして気づいてる?」
「あ、やっと気づいた?」
あーあ、気づかれちゃった。
「わざとやってたのかよ!」
「当然!」
「だぁぁ!もう!」
「ふふふ〜。」
「教えてくれるんでしょ!」
「えぇ〜。」
「えぇ〜じゃないわ!」
やっぱおもしれぇ。やっぱ俺、こいつ結構嫌いじゃないわ〜。
「じゃあ、ギルドに登録しておいで〜。」
「あ、おう。わかった。」
アルが受付に走って行く。そういや、アルって文字書けるのかな?
受付で困ってるのが見える。
まぁ、いっか!
俺は、アルが登録している間に、4日前のことを思い出す。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
俺はいつものように城門から出て、ギルドに向かってる。ニーズが生まれてから今日が初めてのギルドだ。
ちなみに、ニーズが生まれてから今日で4日だ。大きさは大体1mを超えたが、肉体変化を使って小さくなっている…本来は鱗とかを鋭利にしたりするのに、使うスキルなんだがな…
「キュウッ!」
俺の頭の上でニーズが鳴く。人が多いのが珍しいのだろうか?
今はだいたい昼前くらいで、メインストリート以外の道も昼食を食べるために、店に行く人たちでちょっと混んでる。
そんなこんなで、俺が道を歩いてると…
ガスッ
あ、財布盗られた。中身入ってないやつ。
俺は不審に思われないように、金を出すときは財布を使ってるが、実際のところ中に”扉”を開いてるだけなので、中身は何も入ってない。
どうしようか。持ってかれても困らないんだが…まぁ追いかけるかな。どうせやることないから暇だし。
「よっと…」
俺はスキルの”隠密”を使いながら、屋根に登って追跡を始める。
少しすると、孤児院についた。そんなところの奴が盗みとか、残念な国だな、おい。
「中身がない!」
やべぇ、重くなかったのに気付いてなかったのかよ。こいつアホだろ。
「っくくく、はははははははは。」
「なっ!お前さっきの⁉︎」
あべ、うっかりしてた。隠密は声だしたらバレるんだった。魔法使えばよかったわ。
「アホだね〜。重くないんだから気付きなよ〜。ふふふ〜。」
「アホじゃねぇし!別に、「こら!また何かやったの!」…げ。」
孤児院の中から20代後半くらいの女の人が出てくる。
「すみません。うちのアルが何か粗相をしましたでしょうか?」
「大丈夫だよ〜。中身の入ってない財布を、持ってかれただけだから〜。ふふっ。」
こいつアルっていうのか。
「す、すみません!ほらアルも謝りなさい!」
「でも、また貴族にお金持ってかれたんだろ?お金がなくて今月もみんなが…」
ふぅーん。貴族ねぇ…これはテンプレな予感!やらねば。
「それとこれは、関係ありません!きちんと謝りなさい!」
「…ごめんなさい。」
「まだ子供なもんでして、許してやってはくれないでしょうか?」
「まぁいいよ〜。面白かったから。」
「は、はぁ…ありがとうございます。本当にすみません。」
「で、さぁ。貴族って〜?」
聞いてやりましょ、助けてやりましょう。楽しそうだから。
「い、いえ。別に…」
「でもなんかあるんでしょ〜?」
「いえ…」
「その子は嘘ついてなさそうだよ〜。」
「あの…」
「で、貴・族・って?」
「ですから…」
「貴・ぞ「あなたは何者なのですか!」おおう。」
話遮ってきたわ。これはなんかある予感。
「あなたは何者なんですか?関係ないのにうちに何の用ですか?」
「Aランクの冒険者かな〜?」
俺はギルドカードを見せる。
「「へ?」」
「要件はその子に財布持ってかれたから、ここに来てみたんだけど…なんかあるよね〜?」
「え、ええ。まぁ…」
「助けてあげよう〜。これもなんかの縁だし。」
「はぁ…とにかく中へどうぞ。私はアンリです。」
やりぃ!楽しみだなぁ〜。
「僕は新だよ〜。悪霊って呼ばれてるね〜。」
「えぇっ⁉︎お前があの悪霊?」
「みたいだよ〜。」
「マジかよ…」
「ふふふ〜。」
俺は、そいつらに付いて中に入る…
意見、感想等ございましたらお願いします。




