閑話:石井 和也の友情《中》
「あぁ〜、疲れた疲れた。」
「新ちゃん寝てただけだろ。」
やっと入学式が終わった。しんちゃんは寝てただけだったみたいだが。
「しょうがないじゃん〜。だって、暇なんだもん。」
「しょうがなくねぇよ。そういえば、和也が行くとき、一緒にいた子は誰なんだ?」
「ああ、安井のことか。この間、コンビニに行く途中で会ったんだ。」
別に嘘は言ってない。ただ、先輩のことを言ってないだけだ。
「ふ〜ん。そこで、安井さんを助けたんだ〜。」
はぁっ⁉︎なんでわかったんだ⁉︎
「え?何がだ、新ちゃん?」
「多分、安井さんが誰かに絡まれてたのを、助けたんでしょ〜?」
「そうなのか和也?」
「あ、ああ。なんでわかったんだ?」
「まぁ、新ちゃんだからな。昔からなんだよ。」
昔からって、どういうことだよ…
「いやいやそうじゃなくて。しんちゃん、どうしてそう思ったんだ?」
「あ、知りたい〜?」
「うん、気になる。」
「目だよ。」
「へ?なんでそんなので?」
「一瞬だけ、僕と同じ目をしたから。」
しんちゃんがこちらに笑顔を向けながら言う。
だが、その表情は酷く寂しそうで、こちらを見る目は俺の事を見ていないような気がした…
「まぁ、特に気にしなくていいよ〜。分かるの僕だけだろうし〜。」
「そうか、じゃあいいや。」
なんかあるみたいだけど、聞かないでおこう。
「そろそろ座れ、授業はじめるぞ。」
先生が声をかけ、俺らは席に着いた。
「じゃあ、自己紹介から。」
こんな感じで、俺の高校生活は始まった。
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「ほら〜、早く言って来なよ〜。」
高校が始まって、半年が経った。学園祭や、体育祭などが終わって、秋になった。
そして、俺は未来と付き合い始めた。
「デートに誘うだけなんだから、さっさと行きなさいよ。」
「そうだよ〜。結城さんが、安井さんの予定とか確認してるんだし、大丈夫だよ〜。」
こいつは結城 春菜。未来の友達で、よく未来の相談役になってくれているようだ。そして、俺が未来に告るのにも、しんちゃんと共に協力してくれた。そして結城自身は、拓巳のことが好きらしい。
「いや、だけどさ…」
俺は今まで、誰かと付き合ったことがない。つまり、どうすればいいのかわからないのだ。
「ほら、何気なく誘ってみればいいじゃん〜。早く行かないと、あの時の動画みんなに見せちゃうよ?」
「い、いや。それだけはやめてくれ。」
あの時とは、俺が夏祭りで未来に告白した時の動画だ。こっそりつけてきて、撮られていた。
「というか、なんで今まで、どこにもデートに行ってないのよ!」
「いや、どうすればいいのかわかんなかったんだって、言ったじゃん。」
「その、”どうすればいいのかわからない”ってのが問題なのよ!」
「だから、僕らが協力してあげたんじゃないのさ〜。」
そうなのだ。結城としんちゃんが計画を立てるのとか、場所を選ぶ手伝いをしてくれたのだ。そして後は俺が誘うだけなのである。
「わ、わかった。行ってくる…」
「「いってらっしゃ〜い。頑張ってね〜。」」
俺は、未来の席に歩いていく。
「あ、和くんおはよ〜。春ちゃん達と話してたけど、どうかしたの?」
「ああ、いや特に何もないよ。」
「そう、ならいいや。」
「あ、あのだな。」
「ん?」
「今週の日曜日って暇?」
「うん、暇だけど。どうかしたの?」
「一緒に水族館に行かないか?ほら、前に行きたいって言ってた。」
「うん!行く!」
よかった〜。断られなかった…
「はぁ〜。よかった。」
「ん?どうしたの?」
「断られたらどうしようかと思って。」
「え、なんで?」
「ほら、今まで一緒にどこかに遊びに行ったりしてなかっただろ?」
「えっと、そうだね。」
「つまり、デートみたいなのをしてないじゃん。だから断られたらどうしようって。」
「えっと…その…うん。」
未来が顔を赤くしている。気付いてなかったんだな。
「…でも、どうしてそこにしたの?」
「ああ、しんちゃんがチケットをくれたんだ。」
「貰っちゃっていいの?そんな物。」
「なんでも、「福引で当たったんだけど、僕は誰かと一緒に、行くのやだからあげる〜。」だそうだ。」
「ふーん。そうなんだ。」
「じゃあ、日曜日11時に駅で待ってるな。」
「うん!わかった。」
「じゃあ、また後でな、」
「うん。」
俺は、結城達のところに戻る。
「どうだった〜?」
「行くってさ。」
「よかったじゃないの。」
「ああ。ところでしんちゃん本当にいいのか?貰って。」
「大丈夫だよ〜。5枚あるから、2枚くらいあげても問題ないし〜。」
「そうか、ありがとな。」
「いいえ〜。そろそろチャイム鳴るから座りなよ〜。」
「そうだな。」
その後、何事もなく学校が終わり、日曜日になった。
俺は駅で未来を待つ。
「ごめーん。待った?」
未来がこっちに向かって走ってくる。
「いや、大丈夫だよ。行こうか?」
「うん。」
その後、俺らは電車で水族館の最寄駅まで行き、そこで昼ご飯を食べ、その後水族館に行き…と充実した1日を過ごした。
「じゃあ、また明日ね。今日はありがとう、楽しかった。」
「おう、また今度一緒にどっか行こうな。」
「うん、じゃあ。」
「また明日な。」
俺は未来を家に送り、自分の家に帰る。




