閑話:神は何処に
この章はこの話で終了です。
4章に入る前におまけを入れて、次の4章が最後になると思います。その前に最初の方を書き直すかもしれません…今見ると文章結構ひどいし誤字とかも色々とあるので。
また、しばらくお時間いただきます。
ふむ。出てすぐに再会できるとは思ってもみなかったね。
「ディラン〜。依頼はまだ終わんないの〜?」
「うるせぇ。今やってんだろぉが」
「早く〜」
受付に話をしているディラン。あらかじめ書いておいたレポートを提出し、書き著せなかった抽象的なことを口頭で説明しているようだ。
ハイド君とエルシーはその様子を僕と同じように椅子に座ってそれを眺めてる。
「いやぁ、それにしてもあのディランがみんなのまとめ役になるなんて、人生何があるのかわからないね〜」
「…そうですか?ディランは元々こういうことには実は向いてたと思いますけど?頭も良かったですし、努力家ですし」
「まぁ、そうね〜。根は真面目な…あ、こっち見てる。地獄耳かな?」
「あはは……ところで、シエン先輩。いつになったら話してくれるんですか?」
「ディランが帰ってきたらかな〜」
「そうですか………俺、正直シエン先輩が今まで出てこなかったとこと結構頭にきてんですよ」
「僕そんなにハイド君に嫌われるようなことしたっけ?」
どうしよう。全く身に覚えが…
学園の時に何かやらかしてたの?そんな記憶はないんだけどなぁ…
「わからないでしょうね。これは俺の問題ですから。俺はディランを超えたい…けど、あいつの目線の先にはいつもシエン先輩、あなたがいるんです。俺は、俺はいつまでたってもあいつと同じ場所に立てないんです。あなたが…ディランの中で強く根を張っていて」
「ふぅ〜ん?ディランにそんなに想われてたんだ〜。やったね」
「俺にとっては迷惑です。確かにシエン先輩には感謝してますし、色々と世話になってもいました。でも、突然消えて、ディランの決意だとかを全部知らないままでいたあなたが…俺は正直腹立たしいです」
「…そか。色々と、僕がいない間に君たちも成長したんだもんね。ごめんよ、僕という邪魔者のせいで道を歪めてしまって」
ならば、僕がいなければ…もっと違う道があったのだろう。
ハイド君の言う通りなら、ディランは僕に固執していつまでも見えない何かと戦ってきたのだろう。
やはり神は世界への干渉を控えるべきだったのだ。過剰な干渉は世界を歪める。世界は人の手で回るべきだし、人は自分の力で生きるべきなんだ。
その運命を僕はいたずらに書き換えた。
「いいんです…済みません、勝手なこと言って。謝って欲しいわけじゃないんです。ただ…ディランの話とか、聞いてやって欲しいんです」
「うん…そうだね。ああ、ちょうどよく終わったみたいだし、ディランが座ったら始めようか〜」
ディランが僕を睨みながらこちらに来ているのが見えた。
そのまま僕を睨みながらどっかりと腰を下ろす。
「…さて、どこから話したものだかな〜。ハイド君、君以外に僕の召喚うんぬん話した?」
「ええ、まぁ…」
「じゃあ話が早いや。僕は1度目に召喚されてからずっと生きてる異世界人なんだ〜。で、ディランみたいに進化して別の種として生き続けてるんだよ」
「…シエン、ふざけてんのか?」
「別にふざけてるわけじゃないよ〜…って、ああ、そっか」
「視えてんだよ…そんなに、そんなにもオレらが信用ならねぇってのか!」
ガタンッ…と音を立てて椅子が倒れる。ぎょっとした顔をして周囲を人がこちらを見た。
そうだった。ディランはそういう種族になってるんだったね。
だったら言わなくてもある程度は通じてるのかな?
「ふむ。信用してないってわけじゃないんだけどさ、これを話したらきっと君らは僕を今までと同じようには見てくれない。だから、僕が何かっていう話は別れる時まで…できれば聞かないで欲しいかな」
「チッ………わかった。今は聞かねぇでやる。だが、なんで今までいなかったのかぐらいは聞かせろ」
「それについては言った通り、寝てたんだよ。さっきの話を聞いてるってことはこっちもハイド君から聞いてると思うけど、僕はあの時邪神の本部と戦いに行ってたんだ。そこで邪神が完全にじゃなかったけど半端に復活しててさ、それを倒すのに体力もってかれて今まで寝てたんだよね〜」
「そっちも詳しくは言えねぇってか」
「直接の理由はそれだよ〜。それがなければ学園卒業ぐらいまでは普通にいられたはずだからね。まぁ、確かに根本的な理由は言えないけどさ」
「シエン先輩…俺の話聞いてたんですか?」
ハイド君を見れば、怒りに満ち満ちた表情を浮かべている。
もちろん、さっきの話は聞いてたよ。でも、僕にも譲れない一線があるからね。そこを除けば、ちゃんと話もするし、いくらでも怒鳴られよう。
そしてきっと…それが終われば僕は神として生きていく。
「この部分を除けば、僕はいくらでも話すし聞くよ。だからここだけは勘弁してね、ハイド君」
「…クソが」
「ハイド、余計なこと話したんじゃねぇだろぉな」
「別に…俺は何も話してない」
「ハイド君はディランの今までの様子を見て、僕にちゃんと話をしろって言っただけだよ。問題はないでしょ〜?」
そう。ディランたちの様子を見て、話をして…僕は世界から離れるんだ。
神のこれ以上の干渉は世界を歪める。
「チッ…で、それだけか」
「何が〜?」
「言い訳はそれだけかってんだよ」
ん?なんか雲行きが怪しい。
ここは再会を喜ぶ場面じゃなかったの?別れた友人と再会して、今までどうだったっていう話とかして、それからこれからの話とかしてさ。
いや、まぁ確かに今まで消えてたのは僕が悪いし、途中でディランのことも放り出すことになっちゃってたわけだけども。でもそれは不可抗力で、邪神とか倒すのに力使って僕が眠りにつかされたせいなわけだし、結局ちゃんと20年程度で……そっか。
「20年も…経ってるんだったね。昔だったら20年を短いなんて感じなかったのになぁ〜」
「あ゛?」
「ディラン、マリー…20年もいきなり消えてごめんね。そうだよね〜。20年だよ。そんなにも、突然消えてほったらかしにして」
そうだ…子供にとっての20年はとても長いはずなんだ。
僕は今、何を思ってたんだろう?
ディランはそんな話が聞きたかったんじゃない。ディランが聞きたかったのは…僕の想いのはずだ。まるで何も話さないで消えた僕の真意を。
捨てられたかのように感じたかもしれない。信用していないように感じたかもしれない。その上二度と会えないのかもしれないと思ったかもしれないだろう。それなのに僕は今、何を考えていた?
「…んだよ。ちくしょう」
「ディランも、マリーも、色々思ったんだよね?マリーは僕の妹だし…ディランだってどこかでは弟のように感じてたのかもしれない。それをいきなり何も言わないで消えて…心配したんだよね?」
「誰が弟だ…ふざけんじゃねぇよ…」
「ははは〜…でも、僕は弟ができたみたいで楽しかったよ。ごめんね、もっと説明ぐらいはしておくべきだった。余計なことを聞かせて心配させないようにとか思ってたけど、それこそ心配するよね」
「当然だ…馬鹿が」
かつての僕だったら、もっとよく考えたはずだ…それこそが僕の主軸をなすものだったはずだ。
僕は自分の思うがままに世界をゆるがしたいわけじゃない。ただ、大切なものたちとずっと一緒にいたかっただけだったんだ。
「…ねぇ、ディランたちの話、聞かせてくれる?僕がいなかった間の話。僕が聞けなかった話を」
僕は話し、聞かなくてはいけない。
その大切なものたちと過ごす許しを得なければならない。
「ああ…わかってる」
最初…僕が欲していたのは力だった。
自分の全てを自分で決めたかった。奪われるのも、嫌われるのももうごめんだったんだ。だから、全てを圧倒する力が欲しいんだと思ってた。
違う。僕が欲していたのは幸福だ。自分の願う世界だ。
やはり僕はどこか変わりかけていたのであろう…今のではっきりした。どこか、僕はずれている。考え方が違っている。昔の僕にはあった何かが抜け落ちていったような感覚。
もうこれは…僕じゃない。
「聞かせてよ。僕のいなかった時の話を…僕の見られなかった”今”を」
だから、戻す。
例え今がどんなに苦しくないようになっていると言われようとも、僕はそれを拒絶する。神様なんて糞食らえってやつだね。何も感じなくなった神など単なるロボットだ。僕はそんなものに成り下がるつもりは毛頭ない。
昔の僕が欲したものはこんなものではなかったと思うから、願ったことはもっと人間らしい何かだったと思うから…取り戻さなければならない。
今日の僕がかつての僕であり続けるために。
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