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二人目の主人公:進化の時

 彼は人間だった?





 * * *



 一体どれだけ歩いたことだろうか?10分?はたまた30分?それとも1時間?いやもう1日が過ぎただろうか?

 ただひたすらに続くのは薄暗く狭い道。彼の意識はそろそろ朦朧とし始めていた。



 「なぁ…本当にこの道の先は出口なんだよな?」

 『肯定します』

 「俺どれだけ歩いた?もうそろそろついてもいいと思うんだが」

 『時間にして9時間、距離では46.7kmです』

 「フルマラソンゴールしてんじゃん…どこまで行けば出口なんだよ。もう足が棒どころか小枝になってるって…」


 数回休憩を挟み、出来合いのもので軽い軽食を取り移動を続けてきたが彼の精神疲労は限界だった。

 人は同じような行動を繰り返していると精神的に参ってしまうんだっけな?などと彼は思いつつ道を歩き続ける。 



 「……ぁ?」


 ひたすら歩き続けたせいで幻覚でも見たのかと思って一度頬をつねるが痛みはあるし、今目に見えているものも現実だ。

 彼の眼の前にはSF映画にあるような宙に浮かんでいる画面があった。青い光を放ちながらそれは今までと全く変わらない道のど真ん中に浮いている。異様な景色であることは言わずとも。



 「なんだ…これ?」

 『ああ、それが転移陣な。ちょっと体貸せ』

 「は?いや、どうやってだよ」

 『適当にイメージだ。ふぁ〜あ…やっぱり寝てていいか?』

 「わかったから寝るな!で、どうだ?イメージってなんのイメージをすればいい?」

 『あぁ…そういやこっちもか。まずは【悪魔化】使え。それから…適当に意識落とせ。俺にお前の体の支配権をよせばいい』

 「支配権ってどうやってだよ。で、まずは悪魔化だな。【悪魔化】!」


 彼はスキル名を叫ぶ。

 ああ、今更ながらスキル名を叫ぶ必要性は全くない。彼の単なる気分だ。その方が力が入っていいと彼は言うが実際どうかは別の話である。


 そして、その次の瞬間彼は発狂した。



 「あ゛ぁぁあア゛アァァぁァ゛アァアぁぁ゛!いだぃいイいい⁉︎ああぁ゛アアッァアあ゛あァああぁアア゛ッァアァアアあぁ!騙じヤがッたな゛ぁアああ⁉︎」


 彼は頭を抱えて倒れこむ。

 焦点は定まらず、血の涙を流しながら叫び続ける。

 彼の眼の周辺から赤黒いラインが血管のように伸びていき、こめかみの辺りから捻じ曲がった鋭い角が生え始めた。背中からは霧のような靄が出始め、形を成したかと思うと彼のローブを破り裂いて禍々しい翼が生える。

 

 その姿はもはや”悪魔”だった。



 「ぁ゛ァああ゛アぁぁ゛ぁ……ぁ」


 彼はその場に倒れこむ。

 砂埃が立ち、彼はピクリとも動かなくなった。



 『…ったく。人ってのは脆くてならねぇ。体を一度作り変えるぐらいで気ぃ失いやがって…』


 完全に悪魔としか見えない風体となった彼…もとい、そいつが薄暗い通路に響く黒い声を発し立ち上がる。

 そのまま青い画面に手を伸ばし、幾つかのボタンを押した。

 


 『…⁉︎何だこりゃぁ?妨害?干渉?っく⁉︎なんだなんだ!そっちじゃねぇ!待て待て!…』


 周辺を強い光が包み込み、そして彼の姿は青い光に飲み込まれて消えた。




^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^




 彼が次に目を覚ましたのは暗い岩肌の露出する狭い場所。



 「ぅ…ぅう……イギッ⁉︎」


 ゆっくりと体を起こそうとしてその激痛に再び倒れた。



 「…な、なんなんだよ。確か…そうだ!あのやろぃ゛っ⁉︎」


 自分の身に起きたこと思い出して急に体を起こし、再び激痛で倒れこむ。



 「はぁ…はぁ…俺は馬鹿か。今さっき起きようとして同じ目にあったばっかだっつのに。はぁ…」


 彼は大きくため息をつき、その後自分の状態を確認せんがために視線を下に向ける。



 「腕…ある。足…ある。腹…いつも通りに見える。じゃあなんだ?」


 視線の先には違和感はない。ただただひどい鈍痛があるのみ。



 「おい、悪魔。どういうことだ。説明しろ。さもないと………どうにかできるわけでもないか。はぁ…」


 脅そうとして脅す材料がない事に気付き諦める。

 彼は再び深いため息をついた。



 『お目覚めですか?マスター』

 「あぁ。【天の知識人】は無事なのか。ちょっと今の俺の状況説明してくれね?痛すぎて確認ができない」

 『かしこまりました。ではご説明いたします。マスターの体は”人間種”から”悪魔”のものへと進化しました。今現在マスターの感じておられる痛みはそれにより作り変えられた体が再構築された体を修復し続けているからです。しばらくすれば進化が完全に終了し痛みも治るでしょう』

 「…ちょっと待て。今進化って言った?」

 『肯定します。スキル【悪魔化】は体を悪魔へと作り変える対象変質系スキルです。それによりマスターの種族は悪魔へと変化しています』

 「マジか…で、それによる利点と弊害は?」

 『主な利点は根本的な能力値の上昇。それに加えスキル追加、感覚の強化、老化の消滅、肉体の強化です。それに対しての弊害はほぼないと言っていいでしょう。ただ、人間種へ戻ることは不可能であり、マスターが人間としては当然であったことが当然に行えなくなっている可能性はあります』


 彼は種族が変わったことに対して何も感じていなかった。

 なぜなら彼はすでに覚悟していたからだ。強さを手にするためであれば、自らの願いをかなえるためであれば、利益があるなら人間をやめることをもとより躊躇するつもりがなかった。ただし人型に限るという一定の条件はあったが。



 「戻れないってのはこの際どうでもいい。行えなくなってる可能性ってのはなんだ?」

 『”悪魔”とは人をそそのかし悪へと導く存在です。ゆえに一定以上の善意を伴う行動に制限がかかります』

 「なるほどな。で、その一定っていうのはどの程度なんだ?迷子を交番に連れて行くとかは?」

 『正確には不明ですが、おそらくマスターがその行動を行おうとすれば吐き気を催すような嫌悪感に襲われるはずです』

 「じゃあ大丈夫か。どの辺が無理なんだろうな?」

 『マスターのこれからの行動思考を観察し、条件等を見つけ出します』

 「頼むな。…ぁ〜痛みもほとんど消えてきた。起きるか」


 彼はその身をゆっくりと起こす。

 そして、未だ痛みでふらつく体を【異空間倉庫】から取り出したバスタードソードを杖代わりに立ち上がらせ、彼は今度は自分の体に触れて今の状態を確認する。



 「少し筋肉がついた…か?いや、それは迷宮のせいだよな。あー…なんか、うるさいな。耳がよくなったのか?確か感覚が鋭くなるんだよな。そういえば暗いのに結構普通に見えてる…これは【暗視】か。でも以前よりもよく見えるから目も少し変わったんだろうな。触れてる感覚とかも強くなってるのか?…よくわからない。この辺は後々わかるだろう」


 彼の手が頭に伸びた時初めて気がつく。



 「…角?そういえば背中が痒いようなキツいような気も…羽?」


 自身の変化に初めて気がついた。身体中に走っていたラインはすでに消えていたが、角と羽はそのまま生えている。

 試しにパタパタと羽を動かすが、今までもずっとそこにあったかのように自然に動かせた。



 「あの悪魔と一緒じゃんか。…っていうことは尻尾も?」


 尾てい骨に手を伸ばすが空を掴むばかりだった。


 

 「…ないのかよ。あったら便利だと思ったんだけどな。まぁどっちでもいいか。とりあえずどうにかしないと人前には出られないな。引っ込められないのか?角はまだしも羽は邪魔になるな……そういえばよくあるような設定みたいに翼とか角が性感帯何てことはないよな?」

 『否定します。人間に置ける腕や足と同じように1つの部位である以上のことはありません』

 「ならよかった。あったらなおのこと困るところだったな。で、とりあえずしまう方法とかだな。何か知らないか?」

 『残念ながら否定します。また、先ほどから呼びかけているのですが”怠惰の悪魔”様は返答なさいません』

 「必要な時に限って使えないな。しょうがないから自力で考えるか…」


 彼は思考の海に浮かぶ。

 いや、深く考えないでとりあえずやってみようの精神だったそうな。


 

 「まずは…まぁ無難にしまおうと頑張ってみる……まぁダメだよな。次。今までなかったわけだし、今までと同じようにしてみる……って何も変わるわけがないよな」


 彼はひたすらにトライアンドエラーを繰り返えす。

 結局、数十分後にそいつが目覚めて教えてくれ万事解決となった。



 「で、なんで出てこなかったんだよ?」

 『ちょいとばかし問題があったんだよ。ま、お前の体使った副作用みてぇなもんだから気にすんな〜』

 「じゃあしょうがないか。で、これはどうしてこうなった?」

 『俺がお前の体を使うのに器として人の体じゃ足りねぇんだよ。だから悪魔にな。それとも爆散して死にたかったか?』

 「いや、別に人をやめるのに文句はないからいい。文句があるのはそれを事前に言わなかった事に対してだよ」

 『そいつは悪かった。だが、言ったら言ったで躊躇すんだろ?』

 「まぁそれもそうだけど…もうこの話はいいか。で、悪魔にできるようになる事って何があるか教えろ。俺も【天の知識人】も悪魔についての知識に乏しいんだ」

 『あいよ。まずはステータス開いてみろ。それでまず変わってる事がわかるはずだ』

 「了解。『ステータス』!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー-

 名前:本居 司

 種族:悪魔/怠惰の悪魔

 性別:男

 年齢:17

 称号:異界人 勇者の可能性 天使の加護

 強欲の者 迷宮攻略者 悪魔の咎

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 職業:強欲の王 レベル:81 

              状態:通常/憑依

 筋力:752480(+7800)

 体力:15003520+12300)

 耐性:1127140(+4500)

 敏捷:15000380(+21)

 魔力:15002120(+7800)

 知力:600170(+5670)

 属性:闇 治癒 火 水 風 地 木 空間 契約

    儀式

 種族スキル:【半不老不死】【怠慢の義腕Lv.max】

 【幻夢】【魔の躰】

 スキル:【強奪Lv.max】【天の知識人Lv.max】

 【強欲の咎Lv.12】【偽装Lv.4】【体術Lv.5】

 【剣術Lv.7】【並列思考Lv.5】【魔力操作Lv.7】

 【聴力強化Lv.3】【鞭術Lv.7】【暗視Lv.9】

 【気配探知Lv.5】【異空間倉庫Lv.max】【隠密行動Lv.5】

 【肉体硬化Lv.3】【治癒力強化Lv.5】【魔法罠設置Lv.5】

 【危険察知Lv.4】【魔眼:透視Lv.3】【生物探知Lv.4】

 【空歩Lv.4】【魔力耐性Lv.7】【魔法攻撃耐性Lv.8】

 【攻撃耐性Lv.8】【大地支配Lv.3】【毒耐性Lv.3】

 【魔力探知Lv.3】【超過成長Lv.3】【魔力吸収Lv.17】

 【殴打Lv.8】【過眠Lv.17】【魔力回収Lv.8】

 【自動反撃Lv.12】【帯電Lv.5】【空間把握Lv.15】

 【腕力強化Lv.5】【鋭爪Lv.4】【飛行Lv.1】

 強奪スキル:

 振り分け可能値:1152000p

 憑依:【怠惰の悪魔】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 『ステータスが上がってんのはわかるだろォ?あ?今更すぎてわかんねぇなんざ聞かねえからな。んで羽から【飛行】、一部のスキルLvが上がってんのもわかるはずだ』

 「ああ、それはわかってる。その辺は【天の知識人】に聞いたからし。問題は種族スキルの方と魔法」

 『そいつァ簡単だろォ?試しゃあぁいい。【怠慢の義腕】【幻夢】は元々俺のスキルだから説明してやるが、他のはお前のスキルだ。わかる範囲は教えるが他は自力で確かめろ』

 「なんだよ使えないな」

 『説明すんのやめてやろうかァ〜?』

 「はいはい。わるかったから説明してくれ」

 『ったく。大人しくヘコヘコしてりゃあいいんだよ。俺は寝みぃのを我慢してやってんだからよぉ〜。んでだが、【怠慢の義腕】っつうのは自在に動かせる腕をつくれるスキルだ。ま、Lv.maxだから操作性抜群、さらに能力値も自分より高い状態で使用できる。物は試しだ。結構色々できるからあとで自分で詳しい事は確かめろ。で、【幻夢】は悪魔なら誰でも持ってるスキルだ。名前の通り相手に夢を見せて精神攻撃を仕掛けるっつう地味スキル。まぁ分かりやすく例えんなら言いたかねぇが淫魔の幻覚のようなもんを想像しろ。あとは【魔の躰】だが俺もよく話からねぇ。こいつは個性豊かなんだよ。基本的にそいつの咎を帯びて変化する。六感が全部鋭くなるってのはデフォルトだが、それ以外は様々だ。俺の場合は【怠惰】の咎だったから、食うだとか排便だとか生物として必要なもんをしなくっても生きられるようになってたんだが、お前の場合はどうだかはわかんねぇ。自力で調べろ。以上だ。俺は寝る。あとは【天の知識人】さんと話し合え…だぁ〜疲れた…』

 「あっ…ちょっとお前俺からの質問とかはなしかよ」


 一通りのことを説明し終えるとそいつは返事することなく彼の中で眠った。

 仕方なく彼は【天の知識人】と今得た情報をもとに自信の状況を整理し始めたのだった。

 

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