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71.駒を進化させましょう




 「はぁ…全く。誰さ、こんないちいち話をすることなんて思いついちゃった人は。わざわざ式辞なんて面倒くさいこと良くしようと思ったよね」


 片手に持った皿にトングでカップケーキを乗せる。

 あ、もちろんちゃんと野菜とかも食べたよ。第一に前菜、スープ、メイン、デザートっていう順番にとるのがバイキングとかビュッフェでのマナーだからね。あと、お皿とかも毎回変えたり、一度にいっぱい取らないなんかも守っとくべきマナーかな。

 さすがに僕にだってそういうマナーを守る精神はあるんだよ?だって回数がどんなに多くってもそれを守っていれば文句を言わせない正論をぶつけられるからね。



 「まぁそんなに文句を言うなって」

 「はぁ…まぁいいよ。で、神野くん。なんで、えっと…そうそう八尾くんがいるの?」

 「よく名前覚えてたな…いや、今いる宿が一緒なんだ。一緒の部屋だと話す機会が増えて仲良くなった」

 「ふ〜ん。じゃあよろしく八尾くん」

 「ふむ。宜しくお願いしよう」

 「ところでなんだけど、他のみんな…ああ、石井くんとかね。その辺はいつ頃来ることになってるの?もう第二陣はついたんでしょ?」

 「ああ、確か明日か明後日ぐらいには着く予定だったと思うぞ。俺らの移動した時間から逆算しただけだけだけどな」

 「ふ〜ん。じゃ、パーティを楽しんでね〜」

 「おう…って、今度はどこに行くんだ?」

 「ちょっと他の人の様子を見てくるよ。こんな状況になっていろいろ考えちゃう人もいるでしょ?今回の僕の仕事は基本的に戦略とメンタルケアと司令塔だからさ〜」

 「そうか。じゃ、頑張れよ〜」


 僕は皿をおいて新しいものを取り、タルトを乗せる。



 「さてと。じゃあ今日のメインの仕事をしようかな。ロメったらちゃんと全部話しておいてくれればいいのに出し惜しみしちゃってさ」


 今日の僕の仕事はパーティでの式辞がメインじゃない。

 いや、最初はそうだったんだけど、ロメから”怠惰の衣装箱”を受け取った時にちょっと念話でいいことを聞いたんだよ。この王国側の勇者にも”咎ノ王族”シリーズの前段階の状態の職業持ちがいるって。 

 ”咎ノ王族”シリーズの職業には実は選択するのに条件がある。”〜の者”とか”〜の御仁”っていう咎の入った称号を持っていることともう1つ。僕らみたいに魂に呪いがかかっている状態であること。

 実は呪いっていうのは割と蔓延しているもので、貧困、嫌悪、不幸、病弱、不運…だとかちょっとしたものでも呪いである場合が結構あるのだ。ちなみに鼻血くんも持ってたよ、”蛮勇”ってやつ。まぁ、鼻血くんは”咎ノ王族”シリーズの職業を選択しなかったみたいなんだけどね。



 「とりあえず探そうかな。今日は今いる人は全員呼ばれてるみたいだから来てる可能性は高いし『呪いよ、我を呼べ』」


 あ、そうそう。実はもともと”咎の王族”シリーズ何て職業は存在してなかったんだよね。僕が世界を再構築して修復する時に楽しさ半分で作った。だって僕の”嘘つきの王”だって僕の魂の前々からの呪いで奇跡的にできちゃった職業だったし。ちなみに今は”嘘つきの王”じゃなくって”虚言の王”って名前に変えておいた。その方がそれっぽいでしょ?


 僕は皿を変えてシュークリームを乗せた。



 「お、いた。2人…かな?」


 パーティ会場の神野の後ろにいた背の低い男子、入り口付近で数人の女子と談話している女子に目を向ける。

 とりあえず、話しかけてみようか?それとも用があるって言って連れて行って別のところで話そうか?

 


 「うん。連れて行こう。さすがに人前で職業の話をしたらね」


 そんな職業だって人には言いたくないだろう。きっと。

 ということで呼んで連れて行こう。

 まずは…女子の方かな。男子の方が嫌われてるやつとかだったら女子をそいつを連れた状態で呼んでも来てくれない可能性があるし。


 僕はマフィンとカップケーキを新しい皿に乗せてその女子のところへ向かう。

 あ、知ってる?マフィンとカップケーキの違い。マフィンは食事、カップケーキはデザートみたいな感じだよ。マフィンの方はパンの仲間でカップケーキの方はケーキの仲間。材料とかも実は違うんだけど、根本的に目的が違うんだよね。

 なのになんであんなに似た感じになるのかが不思議でならない。



 「ねぇそこの君。ちょっといい?」


 僕は近くまで行き、その女子の集団に十分に近づいてからそう言ったのだが、誰も反応しない。というかキャピキャピした集団で僕嫌いだな。

 ん〜。というか誰が呼ばれたのかわかってないのかな?さっき式辞言ってた人だとか誰に用があるんだろうとか言ってるし。



 「そこの青いドレスの…そう君ね。ちょっといい?」

 「え、あたし?なんであたしなんかが呼ばれてんの?ナンパなら、ほらゆーかの方が可愛いし」

 「いや、誰が君みたいなのをナンパするのさ〜。ちょっとこの戦争についての関係だよ。ということでついてきてくれない?」

 「…はぁ?あんたあたしをバカにしてんの?あたしなんかってどうゆーこと?」

 「そのままだよ。僕は君らみたいな集団苦手なの。なんというか目障りで…まぁそんなことはどうでもいいから来てくれる?」

 「誰が行くかっつうの。なんであんたみたいな言い方するやつについていかないといけないわけ?」


 ああ、そういえば僕は呼びに来たんだからもうちょっと丁寧な言い方をするべきなのか。もう遅いけどちょっと反省しておこう。

 じゃあどうしようか?とりあえず脅迫でもする?

 …よし、そうしよう。それがきっと一番手っ取り早いよね。


 僕は女子の耳元で囁く。 



 「じゃぁ…君の職業のこと国に報告するよ?」

 「…へ?」

 「見た所【隠蔽】でごまかして報告してるでしょ?それがばれたら敵なのかと思われて幽閉されちゃったりするかもね。あ、でもこんな場所だし追い出されるだけで済むかもしれないよ。それなら運がいいね。で、とりあえず付いてきてほしいんだけど?」


 全くの嘘。僕は今”鑑定”系のスキルは持ってないし、ばれてもどうして隠したのかを小一時間程度問いただされるだけで済むよ。でもこういう類ってこうまで言わないと聞いてくれないでしょ?僕の偏見だけど。



 「…わかった」

 「うん。じゃあちょっとついてきてくれる?」

 「ちょ、ちょっと行ってくる。なんか大切な用事みたいだから」

 

 女子が他の奴らにそんなことを言ったのを確認して僕は歩き出す。

 次は男子だね。場所はまだ同じ所にいるかな〜?



 「ああ、いた。ちょっと移動してるけどいっか」

 「ね、ねぇ。用って何なの?戦争の話って言ってたけど」

 「ん?ああ、ちょっとね。もう1人を連れてくるから領主館の入り口にいてくれる?領主館の部屋を借りるつもりだから」

 「りょ、領主か…わ、わかった」


 女子がトボトボと歩いていくのが見えた。

 さて、じゃあもう1人を連れて行こう。



 「ねぇ、君。ちょっといい?」

 「ん?僕?」

 「そうそう。で、いいかな?」

 「ええと、なんか用?」

 「うん。話があるんだ〜。ちょっと付いてきてくれない?」

 「……いいよ。うん、大丈夫」

 「よかった。じゃあ、ついてきて」


 今度はうまくいってよかった。やっぱり見ず知らずの人なんだから多少は気を使わないとだよね。

 僕はその男子を連れて領主館の前に行く。

 領主館入り口の前にはさっきの女子がそわそわしながら立っている。デート前の恋人かって言いたくなる。

 ていうか言ってやろう。



 「デート前の恋人みたいだね〜」

 「はぁ?あんた頭おかしいんじゃないの?今のあたしのどこがそう見えるっていうの?」

 「そのそわそわした感じがどう見ても初デート前の恋人。別にとって食おうわけじゃないんだからもっと普通に身構えたらどうなの?」

 「うるさい…ってかうざい」

 「ははは〜。さ、行こうか。メイドさん、ヒーリガルばぁちゃんにさっきの部屋借りるって言っておいて〜」


 僕がメイドさんにそう言うとメイドさんがうやうやしく頭を下げたので大丈夫だろう。

 領主館の中に入り、階段を上る。そして来賓用の客間の1つにはいった。後ろの2人が少しビクビクしてたけど、まぁいいよね?



 「さ、適当に座って〜」

 「べっ別にあんたの家じゃないんでしょ?な、なんでそんなに偉そうなの」

 「偉いからに決まってるじゃん。僕はここの領主より地位は上だよ」


 何せ国王専属の相談役だからね。

 


 「…で、用って何?僕、どうでもいい話なら帰るよ」

 「ああ、ごめんごめん。文句は聞き分けの悪いこいつに言ってね〜」

 「きっ聞き分けが悪いって…あんたのせいじゃん!」

 「はいはいうるさい。じゃあ話をしようか。まず、君らの職業についての話…というか話の内容は全てそれに収束する」


 僕がそう言うと女子は黙り、男子がハッとしたような表情を浮かべた、



 「この職業…何なの?僕、女神に一番ステータスが高いって言われたから選んだだけなんだけど」

 「ふ〜ん。とりあえずさ、2人のステータス開示してくれない?話はそれから」

 「わかった…これでいい?」

 「え?え?ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃああんたあたしのステータスがどうこうって…」

 「別に嘘じゃないよ?僕は一度も鑑定したなんて言ってないし、ただ見た所って言っただけで」

 「み、見て分かるもん…なの?」

 「僕だけね。さ、出して」

 「…わかった『ステータス』」


 僕の前に2人分のステータスが表示される。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前:遠野(とおの)春樹(はるき)

 種族:人間種

 性別:男

 年齢:17

 称号:異界人 天使の加護 勇者の可能性

 羨望者 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 職業:羨望王の民 レベル:33 

               状態:通常

 筋力:__

 体力:__

 耐性:__

 敏捷:__

 魔力:__

 知力:__

 属性:火 水 風 光 闇 木

 種族スキル:

 スキル:【英雄願望Lv.23】【剣術】【槍術】

【盾術】【短剣術】【聖剣術】【魔力操作】

【魔力探知】【再生】【異空間倉庫】

【聴力強化】【魔眼:魔力視】【隠蔽】

【身体強化】【威圧】【思考強化】【詠唱破棄】

【視野強化】【危険察知】【騎馬術】【調教】

【修理】【裁縫】【料理】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前:富増(とみます)ちひろ

 種族:人間種

 性別:女

 年齢:17

 称号:異界人 天使の加護 勇者の可能性

 欺瞞する者

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 職業:欺瞞王の民 レベル:28 

               状態:混乱

 筋力:50~238

 体力:100~340

 耐性:50~273

 敏捷:50~331

 魔力:170~438

 知力:55~120

 属性:水 風 光

 種族スキル:

 スキル:【変貌Lv.13】【短剣術Lv.4】

【杖術Lv.3】【魔力操作Lv.4】【異空間倉庫Lv.3】

【気配察知Lv.2】【罠探知Lv.2】【脚力強化Lv.1】

【装備強化Lv.4】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんとも独特…っていうか不思議な状態になってるステータスだね。

 でもなるほど、羨望と欺瞞か。王じゃないから本来の力を引き出せてないけど、それでも強くはなってるね。



 「さて。じゃあまず一つ話そうか。君らの職業は別の職業の下位変換なんだ。本来は”〜の王”っていう職業で、その可能性を持つ者がなれる職業が”〜王の民”っていう職業を選べる」

 「それがなんなの?」

 「王に…なりたくない?この世界の職業の一部は一定条件を達した上でレベルが上がると職業が上位変換に変わる。例えば、剣士は剣術レベルをmaxまで上げた状態でレベルを上げると剣聖になる。こんな風に条件を達すると職業が進化するんだ。で、知りたくない?」

 「進化することの利点は何?」

 「あれ?先にそっちを聞くんだ。普通はデメリットじゃないの?まぁいいや。ええと、遠野くんだったね。君の場合は”羨望の王”に職業が進化して今までできなかったことの一部が解禁されたりするよ。確か…経験の相続とかだったっけな?」

 「経験?」

 「そ。その羨望対象の経験…すなわち過去を垣間見ることができるようになる。要するに能力だけが育った頭でっかちにならずにすむようになるっていうとわかりやすいかな?」

 「……理解した」

 「うん。じゃあ富増さんの方だけど…聞きたい?」

 「…え?あ、それは聞きたいけど」

 「職業は”欺瞞の王”に進化して、スキルが一部追加される。まぁ内容は欺く系の幻覚系スキルだけど」

 「何?例えば?」

 「ん〜…対象の精神に干渉して操り人形とかにできるよ」

 「なに、その怖いスキル…」

 

 まぁ、他にもあるけど主なのはそんな感じかな。

 


 「で、他に何か聞きたいこととかは?」


 僕は2人に目を向ける。


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